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【2024年最新】マーケティングオートメーション(MA)ツールおすすめ25選を徹底比較

マーケティングオートメーション(MA)ツール、おすすめ25選を徹底比較

現代のマーケティング活動において、顧客との関係構築はますます複雑化・多様化しています。インターネットの普及により、顧客は自ら情報を収集し、購買決定プロセスの大部分を営業担当者と接触する前に終えるようになりました。このような状況で、企業が顧客一人ひとりと最適なコミュニケーションを取り、長期的な関係を築くためには、テクノロジーの活用が不可欠です。

その中核を担うのが、マーケティングオートメーション(MA)ツールです。MAツールは、これまで手作業で行っていた煩雑なマーケティング業務を自動化し、見込み顧客(リード)の獲得から育成、選別までを一気通貫で支援します。これにより、マーケティング担当者はより戦略的な業務に集中でき、営業部門との連携を強化することで、最終的な売上向上に貢献できます。

この記事では、MAツールの基本的な役割から、導入のメリット・デメリット、失敗しない選び方、そして2024年最新のおすすめツール25選まで、網羅的に解説します。MAツールの導入を検討している企業の担当者様はもちろん、すでに導入しているものの活用しきれていないと感じている方にも、有益な情報を提供します。この記事を通じて、自社の課題を解決し、ビジネスを成長させるための最適なMAツールを見つける一助となれば幸いです。

マーケティングオートメーション(MA)とは

マーケティングオートメーション(MA)とは

マーケティングオートメーション(Marketing Automation、以下MA)とは、見込み顧客(リード)の獲得、育成、選別といった一連のマーケティング活動を自動化・効率化するための仕組み、またはそれを実現するソフトウェア(ツール)のことを指します。

デジタル技術の進化に伴い、顧客の購買行動は大きく変化しました。企業は、顧客一人ひとりの興味関心や行動フェーズに合わせた、きめ細やかなアプローチ(One to Oneマーケティング)を求められています。MAは、この複雑で多岐にわたるコミュニケーションを、テクノロジーの力で支援し、マーケティング効果の最大化を目指すための重要なソリューションです。

MAの基本的な役割

MAツールの基本的な役割は、大きく分けて「見込み顧客の情報を一元管理」し、「その情報を基にコミュニケーションを自動化」することにあります。具体的には、Webサイトの閲覧履歴、メールの開封・クリック、資料のダウンロードといった顧客のオンライン上での行動データを蓄積・分析し、それぞれの顧客の興味関心度合いを可視化します。

そして、そのデータに基づいて、「この製品に興味がある顧客にはこのメールを送る」「セミナーに参加した顧客には、後日関連資料を送る」といったシナリオをあらかじめ設定しておくことで、適切なタイミングで、適切な情報を、適切な相手に届けるコミュニケーションを自動で実行します。

これにより、マーケティング担当者は、膨大な数の見込み顧客に対して、まるで一対一で対話しているかのような、パーソナライズされたアプローチを効率的に展開できるようになります。最終的には、購買意欲の高い「ホットリード」を創出し、営業部門へと引き渡すことで、商談化率や受注率の向上に貢献することが、MAの最も重要な役割と言えるでしょう。

MAツールが必要とされる背景

なぜ今、多くの企業でMAツールが必要とされているのでしょうか。その背景には、主に「顧客の購買行動の変化」と「One to Oneマーケティングの重要性の高まり」という2つの大きな要因があります。

顧客の購買行動の変化

かつて、顧客が製品やサービスの情報を得る手段は、テレビCMや新聞広告、営業担当者からの説明など、企業側から発信される情報が中心でした。しかし、インターネットとスマートフォンの普及により、この状況は一変しました。

現代の顧客は、購入を検討する際、まず自らWebサイトやSNS、比較サイト、口コミサイトなどを用いて徹底的に情報収集を行います。調査会社の報告によれば、BtoBの購買担当者は、営業担当者に接触するまでに、購買プロセスの57%をすでに終えていると言われています。(参照:CEB(現Gartner)調査)

これは、企業が顧客と直接的な接点を持つ前に、すでに顧客の中である程度の評価や判断が下されていることを意味します。したがって、企業はオンライン上で顧客が情報収集を行う段階から、いかに有益な情報を提供し、自社への興味・関心を高めてもらうかが極めて重要になります。MAツールは、このようなオンライン上の顧客行動を捉え、早期の段階からアプローチするための強力な武器となります。

One to Oneマーケティングの重要性

顧客の情報収集手段が多様化したことに伴い、顧客のニーズも細分化・多様化しています。かつてのような、すべての顧客に同じメッセージを送る画一的なマスマーケティングは、もはや効果的ではありません。自分に関係のない情報だと判断されれば、即座に無視されてしまう時代です。

そこで重要になるのが、顧客一人ひとりの属性や行動、興味関心に合わせて、個別に最適化された情報を提供する「One to Oneマーケティング」です。例えば、「Aという製品の価格ページを何度も見ている顧客」と「Bという製品の導入事例をダウンロードした顧客」では、求めている情報が全く異なります。前者には価格に関するフォローアップメールを、後者にはB製品に関連する別の事例や技術資料を送るべきでしょう。

このような個別のアプローチを手作業で行うのは、顧客数が多くなればなるほど非現実的です。MAツールを導入することで、顧客データに基づいたセグメンテーションや、特定の行動をトリガーとしたコミュニケーションの自動化が可能となり、大規模な顧客基盤に対しても効率的にOne to Oneマーケティングを実践できるようになります。

MAツールとCRM・SFAとの違い

MAツールを検討する際、しばしば混同されがちなのが「CRM」と「SFA」です。これらは、いずれも企業の売上向上を目的としたツールですが、その役割と対象とする顧客フェーズが異なります。これらの違いを正しく理解することは、自社に最適なツールを選ぶ上で非常に重要です。

MA(マーケティングオートメーション) SFA(営業支援システム) CRM(顧客関係管理)
主な目的 見込み顧客の獲得・育成と有望な商談機会の創出 営業活動の効率化と案件管理の精度向上 既存顧客との関係維持・向上とLTVの最大化
主な利用者 マーケティング部門 営業部門 営業部門、カスタマーサポート部門など
対象 見込み顧客(リード) 商談中の見込み顧客(案件) 既存顧客
管理する情報 Webアクセス履歴、メール開封、セミナー参加履歴などの行動データ 商談の進捗状況、活動履歴、予実管理データ 購買履歴、問い合わせ履歴、顧客満足度データ
代表的な機能 リード管理、スコアリング、メール配信、LP作成 案件管理、行動管理、予実管理、日報作成 顧客情報管理、問い合わせ管理、メール配信

CRM(顧客関係管理)との違い

CRM(Customer Relationship Management)は、日本語で「顧客関係管理」と訳されます。その名の通り、主に既存顧客との関係を管理し、良好な関係を維持・向上させることを目的としたツールです。顧客の基本情報に加え、購買履歴、問い合わせ履歴、対応履歴などを一元管理し、アップセルやクロスセル、解約防止といった施策に活用されます。

MAが「まだ顧客になっていない見込み客」を対象とし、いかにして顧客へと転換させるかに焦点を当てるのに対し、CRMは「すでに顧客である人々」を対象とし、その顧客生涯価値(LTV)をいかに最大化するかに焦点を当てます。つまり、MAは見込み客から顧客への「橋渡し役」、CRMは顧客になった後の「長期的な関係構築役」と考えると分かりやすいでしょう。

SFA(営業支援システム)との違い

SFA(Sales Force Automation)は、日本語で「営業支援システム」と訳されます。こちらは、営業部門の活動を効率化し、生産性を高めることを目的としたツールです。個々の営業担当者が抱える案件の進捗状況、商談内容、訪問履歴などを可視化・共有し、組織全体での営業力強化を目指します。

MAがマーケティング部門主体で活用され、多くの見込み客の中から購買意欲の高い「ホットリード」を選別する役割を担うのに対し、SFAはそのホットリードを引き継いだ営業担当者が、具体的な商談から受注に至るまでのプロセスを管理するために使われます。つまり、MAが「商談の種(ホットリード)を育てる畑」、SFAはその種を「収穫(受注)するための農具」のような関係です。

理想的なのは、MA・SFA・CRMがシームレスに連携し、見込み客の獲得から育成、商談化、受注、そして既存顧客としての関係維持まで、顧客に関する情報が途切れることなく一元管理されている状態です。

MAツールの主な機能

見込み顧客の創出(リードジェネレーション)、見込み顧客情報の一元管理、見込み顧客の育成(リードナーチャリング)、見込み顧客の選別(リードクオリフィケーション・スコアリング)、マーケティング施策の自動化、営業活動の支援、分析・レポート

MAツールは、マーケティング活動の様々なフェーズを支援するための多岐にわたる機能を備えています。ここでは、多くのMAツールに共通して搭載されている主要な機能を7つに分けて、それぞれ具体的に解説します。これらの機能を理解することで、MAツールがどのようにしてマーケティング業務を効率化し、成果向上に貢献するのかを具体的にイメージできるようになります。

見込み顧客の創出(リードジェネレーション)

リードジェネレーションとは、自社の製品やサービスに興味を持つ可能性のある見込み顧客(リード)を獲得する活動のことです。MAツールは、この最初のステップを効率化するための機能を提供します。

代表的なのが、ランディングページ(LP)や入力フォームの作成機能です。専門的なWeb制作の知識がなくても、テンプレートを使って直感的な操作で、資料請求やセミナー申し込み、ホワイトペーパーのダウンロードといったコンバージョンポイントとなるページを簡単に作成できます。作成したフォームから登録された顧客情報は、自動的にMAツール内のデータベースに蓄積されるため、手作業でのリスト入力や転記ミスといった手間とリスクを排除できます。

また、一部のツールでは、Webサイトに訪れた匿名の訪問者(まだ個人情報を登録していないユーザー)のIPアドレスから企業名を特定する機能もあり、有望な潜在顧客を発見する手がかりとなります。

見込み顧客情報の一元管理

獲得した見込み顧客の情報は、MAツールの中核となるデータベースで一元管理されます。管理される情報は、フォームから入力された会社名、氏名、役職といった「属性情報」だけではありません。

MAツールの真価は、「行動履歴」を自動で蓄積・管理できる点にあります。 例えば、以下のような情報が顧客一人ひとりに紐づけて記録されていきます。

  • どのWebページを、いつ、何回閲覧したか
  • どのメールを開封し、どのリンクをクリックしたか
  • どの資料をダウンロードしたか
  • どのセミナーに参加したか
  • 料金ページを閲覧したか

これらの属性情報と行動履歴を組み合わせることで、顧客一人ひとりの興味関心や検討の度合いを、より深く、立体的に把握することが可能になります。この一元化されたデータベースが、後述するナーチャリングやスコアリングの基盤となります。

見込み顧客の育成(リードナーチャリング)

リードナーチャリングとは、獲得したものの、まだ購買意欲が十分に高まっていない見込み顧客(コールドリード)に対して、継続的に有益な情報を提供し、関係を構築しながら、徐々に購買意欲を高めていくプロセスのことです。

MAツールはこのナーチャリングを自動化・効率化する上で中心的な役割を果たします。最も代表的な機能がメールマーケティングです。顧客の属性や行動履歴に基づいてセグメント(グループ)を作成し、それぞれのセグメントに最適化された内容のメールを、適切なタイミングで自動配信できます。

例えば、「製品Aの事例ページを見た人には、製品Aのより詳細な機能紹介資料を送る」「3ヶ月間Webサイトへのアクセスがない人には、最新の業界トレンドに関するコラムを送る」といったシナリオをあらかじめ設定しておくことで、手動では不可能な、きめ細やかで継続的なコミュニケーションが実現します。これにより、顧客の検討フェーズに合わせて関係性を深め、自社を第一想起してもらう状況を作り出します。

見込み顧客の選別(リードクオリフィケーション・スコアリング)

リードクオリフィケーションとは、育成した多くの見込み顧客の中から、特に購買意欲が高く、商談に繋がりやすい有望なリード(ホットリード)を選別するプロセスです。この選別を客観的かつ効率的に行うための機能がスコアリングです。

スコアリング機能では、顧客の属性や行動に対して、あらかじめ点数を設定しておきます。

  • 属性スコアの例:
    • 役職が「部長以上」なら+20点
    • 従業員数が「100名以上」なら+10点
  • 行動スコアの例:
    • 料金ページの閲覧で+15点
    • 事例資料のダウンロードで+10点
    • メールのクリックで+3点

MAツールは、これらのスコアを顧客ごとに自動で集計します。そして、合計スコアが一定のしきい値(例:100点)を超えたリードを「ホットリード」として自動的に抽出し、営業担当者に通知します。

これにより、営業担当者は勘や経験に頼ることなく、データに基づいて確度の高いリードに集中してアプローチできるようになります。結果として、営業活動の効率が大幅に向上し、マーケティング部門から営業部門へのリードの引き渡し(MQLからSQLへの転換)がスムーズになります。

マーケティング施策の自動化

MAツールの名前の通り、その核心は「自動化」にあります。これまで解説してきたメール配信やスコアリングだけでなく、様々なマーケティング施策を自動化する機能が備わっています。

これを実現するのがシナリオ(キャンペーン、ワークフローなどツールによって呼称は異なる)設定機能です。これは、「もし〇〇という条件を満たしたら、△△というアクションを実行する」という一連の命令を、視覚的なフローチャートなどを使って設計する機能です。

具体的なシナリオの例:

  1. トリガー: ユーザーが「導入事例A」をダウンロードする
  2. アクション1(即時): ダウンロードのお礼メールを自動送信する
  3. アクション2(3日後): 「導入事例A」に関連する「機能紹介資料B」の案内メールを自動送信する
  4. 分岐: メールBを開封したか?
    • Yesの場合: そのユーザーのスコアに+10点し、営業担当者に「関心が高い可能性あり」と通知する
    • Noの場合: 7日後に、別の切り口で同じ資料を案内するリマインドメールを送信する

このように複雑な分岐を含むコミュニケーションの連鎖を一度設定しておけば、あとはMAツールが24時間365日、自動で実行してくれます。これにより、マーケティング担当者は煩雑な手作業から解放され、より戦略的なシナリオの設計や改善に時間を使えるようになります。

営業活動の支援

MAツールはマーケティング部門だけのツールではありません。営業部門の活動を強力に支援する機能も備えています。

最も重要なのが、SFA/CRMとの連携です。MAで獲得・育成したリード情報やスコア、詳細な行動履歴を、営業が普段使っているSFA/CRMに自動で同期させることができます。これにより、営業担当者は商談前に「この顧客はどの製品ページをよく見ていて、どんな資料に興味を持っているのか」を正確に把握した上で、顧客の関心事に寄り添った質の高い提案が可能になります。

また、ホットリードが発生した際の通知(アラート)機能も重要です。スコアが急上昇したり、「料金」「見積もり」といった特定のキーワードを含むページを閲覧したりといった、購買意欲の高まりを示す重要なアクションがあった際に、担当の営業にリアルタイムでメールやチャットで通知します。これにより、最も熱量の高いタイミングを逃さずにアプローチでき、商談化率の向上に直結します。

分析・レポート

実行したマーケティング施策が、どれだけの成果を生んだのかを測定し、改善に繋げることは極めて重要です。MAツールには、そのための詳細な分析・レポーティング機能が搭載されています。

  • メールマーケティング分析: 配信数、到達率、開封率、クリック率、コンバージョン率など
  • Webサイトアクセス分析: ページビュー数、ユニークユーザー数、滞在時間、直帰率など
  • フォーム・LP分析: 表示回数、コンバージョン数、コンバージョン率など
  • ROI(投資対効果)分析: 施策にかかったコストと、それによって生まれた商談金額や受注金額を比較し、費用対効果を測定

これらのデータをダッシュボードで視覚的に確認できるため、どの施策が効果的で、どこに改善の余地があるのかをデータに基づいて判断できます。「開封率が低いメールは件名を見直す」「コンバージョン率が低いLPはフォームの項目を減らす」といった、具体的な改善アクション(PDCAサイクル)を高速で回していくことが、MA運用の成果を最大化する鍵となります。

MAツールを導入する3つのメリット

マーケティング業務の効率化、顧客一人ひとりに合わせた最適なアプローチ、営業部門との連携強化による商談化率の向上

MAツールの導入は、企業に多くの恩恵をもたらします。ここでは、数あるメリットの中から特に重要性の高い3つのポイントに絞って、それぞれを深く掘り下げて解説します。これらのメリットを理解することで、なぜMAツールへの投資が企業の成長に繋がるのかが明確になります。

① マーケティング業務の効率化

MAツール導入の最も直接的で分かりやすいメリットは、マーケティング業務の大幅な効率化です。従来、マーケティング担当者が多くの時間と労力を費やしてきた定型業務や反復作業の多くを、MAツールが自動で代行してくれます。

例えば、セミナーやイベントを開催する場合を考えてみましょう。MAツールがない場合、以下のような手作業が発生します。

  1. 告知ページの作成をWeb制作会社に依頼する。
  2. 申し込みフォームから応募があるたびに、Excelなどのリストに手動で転記する。
  3. 参加者リストを作成し、一人ひとりにリマインダーメールを手動で送信する。
  4. イベント終了後、参加者全員に同じ内容のお礼メールを一斉送信する。
  5. アンケートを実施し、回答を手作業で集計・分析する。
  6. アンケート結果から有望そうな参加者を見つけ出し、営業担当者に口頭やメールで共有する。

これらの作業は、非常に時間がかかり、人的ミスも発生しがちです。

一方、MAツールを導入すると、これらのプロセスは劇的に変わります。

  1. テンプレートを使って、担当者自身が告知LPと申し込みフォームを短時間で作成できます。
  2. 申し込みがあった時点で、顧客情報は自動的にMAのデータベースに登録されます。
  3. あらかじめ設定した日時に、リマインダーメールが自動で配信されます。
  4. イベント終了後、参加者・欠席者で内容を変えたお礼メールを自動で送り分けできます。(例:参加者には資料ダウンロードURLを、欠席者には次回の案内を送るなど)
  5. Webアンケートの作成・配信・集計が自動化され、リアルタイムで結果を可視化できます。
  6. アンケートの回答内容やイベント後のWebサイト行動に応じて自動でスコアリングし、一定スコアを超えた有望なリードを自動で営業担当者に通知できます。

このように、MAツールは煩雑なオペレーション業務からマーケティング担当者を解放します。その結果、創出された時間を、より創造的で戦略的な業務、例えば「どのようなコンテンツが顧客に響くのか」「どのようなコミュニケーションシナリオが受注に繋がりやすいのか」といった、本来マーケターが集中すべき本質的な仕事に投下できるようになります。 これが、マーケティング部門全体の生産性を飛躍的に高める第一歩となるのです。

② 顧客一人ひとりに合わせた最適なアプローチ

第二のメリットは、「One to Oneマーケティング」の実践による顧客エンゲージメントの向上です。前述の通り、現代の顧客は自分に関係のない一方的な情報提供を嫌います。MAツールは、顧客の行動や属性に関する膨大なデータを活用し、一人ひとりの顧客に対して「まるで自分のために用意されたかのような」特別な体験を提供することを可能にします。

例えば、あるECサイトで考えてみましょう。

  • Aさん: 最近、Webサイトで特定のブランドのスニーカーを何度も閲覧している。
  • Bさん: 1ヶ月前にランニングウェアを購入したが、それ以降アクセスがない。
  • Cさん: カートに商品を投入したが、購入せずにサイトを離脱してしまった(カゴ落ち)。

MAツールがない場合、これらの顧客全員に「今週の新商品案内」といった同じ内容のメルマガを送ることしかできないかもしれません。しかし、MAツールを使えば、以下のような個別のアプローチが自動で可能になります。

  • Aさんへ: 閲覧していたスニーカーの在庫情報や、そのスニーカーを使ったコーディネート特集記事をメールで送る。
  • Bさんへ: 購入したウェアに合うシューズや、近隣で開催されるマラソンイベントの情報を案内する。
  • Cさんへ: カート内の商品をリマインドするメールを離脱から数時間後に送信し、もし購入に至らなければ、後日「送料無料クーポン」を送る。

このように、顧客の状況や興味関心に寄り添ったタイムリーな情報提供は、顧客に「自分のことを理解してくれている」というポジティブな印象を与え、企業やブランドへの信頼感や愛着(ロイヤルティ)を育みます。 その結果、メールの開封率やクリック率は向上し、サイトへの再訪や購買へと繋がる可能性が格段に高まります。

これはBtoBビジネスにおいても同様です。「価格ページを見た顧客」には導入コストに関するFAQを、「技術資料をダウンロードした顧客」にはより専門的なウェビナーを案内するなど、検討フェーズに応じた情報を提供することで、見込み顧客をスムーズに次のステップへと導くことができます。

③ 営業部門との連携強化による商談化率の向上

三つ目の大きなメリットは、マーケティング部門と営業部門の間に存在する溝を埋め、組織全体の売上向上に貢献できる点です。多くの企業で、「マーケティング部門が獲得したリードの質が低いと営業部門が不満を言う」「営業部門がリードをしっかりフォローしてくれないとマーケティング部門が嘆く」といった対立が見られます。MAツールは、この問題を解決するための強力な架け橋となります。

その鍵となるのが、客観的なデータに基づいたリードの評価(スコアリング)と情報共有です。

MAツールによって、マーケティング部門は「Webサイトを○回訪問し、料金ページを見て、事例をダウンロードした、スコア120点のホットリード」といった、具体的な根拠に基づいた質の高いリードを営業部門に引き渡せるようになります。これは、ただ名刺情報を渡すのとは全く意味が異なります。

受け取った営業部門も、SFA/CRMとの連携を通じて、そのリードが商談に至るまでの詳細な行動履歴をすべて把握できます。「このお客様は、Aという課題に関するブログを熱心に読んでいたから、その解決策を中心に提案しよう」といったように、顧客の関心事を事前に理解した上で、的を射たアプローチが可能になります。これにより、初動の質が高まり、無駄なヒアリング時間を削減できるだけでなく、顧客からの信頼も得やすくなります。

さらに、営業がフォローした結果どうなったか(商談化したか、失注したか、その理由は何か)という情報をSFA/CRM経由でMAツールにフィードバックすることで、マーケティング部門は「どのようなリードが受注に繋がりやすいか」を学習できます。このフィードバックループを回すことで、スコアリングの精度を継続的に改善し、より質の高いリードを創出できるようになり、組織全体の商談化率・受注率が向上していくという好循環が生まれるのです。

MAツール導入の3つのデメリット・注意点

導入・運用にコストがかかる、専門的な知識やスキルを持つ人材が必要、コンテンツの作成に手間と時間がかかる

MAツールは非常に強力なソリューションですが、導入すれば自動的に成果が出る「魔法の杖」ではありません。その効果を最大限に引き出すためには、いくつかの課題や注意点を事前に理解し、対策を講じておくことが不可欠です。ここでは、MAツール導入に伴う代表的な3つのデメリット・注意点を解説します。

① 導入・運用にコストがかかる

まず考慮すべきは、金銭的なコストです。MAツールの導入には、主に以下の費用が発生します。

  • 初期導入費用: ツールによっては、導入時の設定やコンサルティングのために初期費用が必要な場合があります。数万円から数十万円、高機能なツールでは100万円以上かかることもあります。
  • 月額利用料: MAツールの中心となるコストです。料金体系はツールによって様々ですが、一般的には「データベースに登録する見込み顧客(リード)数」や「月間のメール配信数」に応じた従量課金制が多く採用されています。安価なツールで月額数万円から、多機能なものでは月額15万円〜数十万円以上が相場となります。事業の成長に伴いリード数が増えれば、月額費用も上昇していくことを念頭に置く必要があります。
  • 運用に関わる人件費: ツール費用だけでなく、MAを運用する担当者の人件費も重要なコストです。後述するように、MAの運用には専門的なスキルが求められるため、担当者の育成や、場合によっては外部の専門家(コンサルタントや運用代行会社)に委託する費用も発生します。

これらのコストを正しく見積もらずに導入を進めると、ランニングコストが想定を上回り、費用対効果(ROI)が見合わなくなる可能性があります。導入前に、MAツールによってどれくらいの売上向上やコスト削減が見込めるのかを試算し、投資計画を明確に立てることが重要です。

② 専門的な知識やスキルを持つ人材が必要

MAツールは高機能である反面、そのポテンシャルを最大限に引き出すためには、ツールを使いこなすための専門的な知識やスキルが求められます。単にメールを一斉配信するだけでは、MAツールを導入した意味がありません。

具体的には、以下のような多岐にわたるスキルが必要とされます。

  • マーケティング戦略立案スキル: 誰に(ターゲット)、何を(コンテンツ)、どのように(チャネル・タイミング)届けるかという、マーケティング全体の戦略を設計する能力。
  • シナリオ設計スキル: 顧客の行動を予測し、分岐条件などを考慮した効果的なコミュニケーションの自動化フロー(シナリオ)を構築する能力。
  • コンテンツ制作スキル: 顧客の興味を引き、育成に繋がるような有益なコンテンツ(ブログ記事、ホワイトペーパー、動画など)を企画・制作する能力。
  • データ分析スキル: MAツールから得られる各種データを読み解き、施策の効果を測定し、改善点を見つけ出す能力。
  • ツールの操作スキル: 導入したMAツールの各機能を理解し、実際に設定・操作できる技術的なスキル。

これらのスキルをすべて一人の担当者が完璧にこなすのは容易ではありません。そのため、MAツールを導入する際には、誰が中心となって運用するのか、その担当者のスキルレベルは十分か、不足しているスキルをどのように補うのか(研修、採用、外部委託など)といった、運用体制を事前にしっかりと計画しておくことが、導入失敗を避けるための鍵となります。人材の準備が整わないままツールだけを導入してしまうと、「高価なメルマガ配信ツール」としてしか活用されず、宝の持ち腐れになってしまうケースが少なくありません。

③ コンテンツの作成に手間と時間がかかる

MAツールのリードナーチャリング機能は、見込み顧客に有益な情報を提供し続けることで初めて効果を発揮します。つまり、MAという「器」を活かすためには、その中に入れる「中身」、すなわち質の高いコンテンツが不可欠です。

見込み顧客の検討フェーズは様々です。

  • 認知段階: まだ自身の課題に気づいていない層。業界のトレンドや課題提起型のコラムなどが有効です。
  • 興味・関心段階: 課題を認識し、情報収集を始めた層。課題解決のヒントとなるノウハウ記事や、ホワイトペーパーなどが求められます。
  • 比較・検討段階: 具体的な解決策を探している層。製品の機能紹介、他社との比較資料、導入事例、料金表などが効果的です。

これらの各フェーズに合わせた多様なコンテンツを、継続的に企画・制作し、提供し続けなければ、リードナーチャリングのシナリオは機能しません。

しかし、質の高いコンテンツをコンスタントに生み出し続けるには、多大な手間と時間がかかります。 記事の執筆、資料のデザイン、動画の撮影・編集など、専門的なスキルやリソースが必要です。社内にコンテンツ制作の専門部署がない場合、マーケティング担当者が通常業務と並行してこれらの作業を行うことになり、大きな負担となります。

MAツール導入の検討と同時に、「誰が、どのような体制で、どれくらいの頻度でコンテンツを作成するのか」というコンテンツ制作のワークフローを確立しておくことが極めて重要です。リソースが不足する場合は、コンテンツ制作会社に外注することも有効な選択肢となります。コンテンツ供給が滞ると、MAの自動化エンジンは燃料切れを起こし、止まってしまうことを肝に銘じておきましょう。

MAツールの料金体系と費用相場

MAツールの導入を検討する上で、最も気になる点の一つが料金でしょう。MAツールの料金体系は提供する企業やプランによって様々ですが、多くは「初期費用+月額費用」という構成になっています。月額費用は、主に「登録するリード(連絡先)数」や「機能の豊富さ」によって変動します。ここでは、価格帯の目安を大きく2つのカテゴリーに分けて解説します。

料金帯 月額費用の目安 主なターゲット 特徴
低価格帯 数万円〜15万円未満 中小企業、MA初心者、スモールスタートしたい企業 基本機能に特化、操作が比較的シンプル、サポートはメールやチャットが中心
高価格帯 15万円以上 中堅〜大企業、本格的なMA運用を目指す企業 多機能・高機能、高度な分析・連携、手厚いコンサルティングサポート

月額数万円から利用できるツール

この価格帯のMAツールは、主に中小企業や、初めてMAツールを導入する企業、あるいは特定の部門でスモールスタートを切りたい企業をターゲットとしています。月額費用は数万円から15万円未満が目安となります。

特徴:

  • 機能の絞り込み: リード管理、メール配信、フォーム作成、スコアリングといった、MAの基本的な機能に絞られていることが多いです。高度な分析機能や複雑なシナリオ設定、外部ツールとの連携機能などが制限されている場合があります。
  • シンプルな操作性: 専門知識がなくても直感的に操作できるような、分かりやすいユーザーインターフェース(UI)を重視しているツールが多い傾向にあります。
  • サポート体制: サポートはメールやチャットでの対応が中心で、電話サポートや専任コンサルタントによる支援はオプション料金となることが一般的です。
  • 料金体系: 登録リード数や月間メール配信数に応じて料金が変動する従量課金制が主流です。例えば、「リード数5,000件まで月額5万円」といったプランが用意されています。

この価格帯のツールを選ぶ際の注意点:
安価であることは魅力的ですが、自社の目的達成に必要な機能が備わっているかを慎重に見極める必要があります。「リード獲得を強化したい」という目的ならば、LP作成機能やフォーム機能が充実しているかが重要です。将来的に事業が拡大し、より高度な機能や多くのリード数が必要になった場合に、上位プランへのアップグレードがスムーズに行えるかどうかも確認しておきましょう。

月額15万円以上が目安の多機能なツール

この価格帯のMAツールは、中堅企業から大企業、あるいはすでにマーケティング活動が成熟しており、より高度で本格的なMA運用を目指す企業に適しています。月額費用は15万円以上となり、機能やリード数によっては100万円を超えることもあります。

特徴:

  • 豊富な機能: 基本機能はもちろんのこと、ABM(アカウントベースドマーケティング)支援機能、AIによる予測分析、動的コンテンツのパーソナライズ、オフラインイベント管理、SNS連携など、高度で多岐にわたる機能を搭載しています。
  • 高度な連携性: SFA/CRMをはじめ、BIツール、広告配信プラットフォーム、CDP(カスタマーデータプラットフォーム)など、様々な外部システムとの柔軟な連携が可能です。これにより、社内に散在するデータを統合し、顧客を360度から理解する基盤を構築できます。
  • 手厚いサポート体制: 導入時の設計支援から、運用開始後の定例会、戦略的なアドバイスを行う専任のコンサルタント(カスタマーサクセス)が付くなど、手厚いサポートが提供されることが多く、ツールの活用を強力に後押ししてくれます。
  • グローバル対応: 多言語対応や海外拠点での利用を想定した機能を備えているツールも多くあります。

この価格帯のツールを選ぶ際の注意点:
非常に高機能ですが、その分、使いこなすための学習コストや運用体制の構築がより重要になります。機能が多すぎて持て余してしまい、結果的にコストパフォーマンスが悪くなるという事態は避けなければなりません。自社の戦略やリソースと照らし合わせ、本当にそれらの高度な機能が必要なのかを冷静に判断することが求められます。 導入前に、ベンダーの担当者と綿密なヒアリングを行い、自社の課題解決に最適なプランや機能構成を提案してもらうことが成功の鍵です。

失敗しないMAツールの選び方・比較ポイント7選

市場には数多くのMAツールが存在し、それぞれに特徴があります。自社のビジネスに合わないツールを選んでしまうと、コストが無駄になるばかりか、期待した成果を得ることもできません。ここでは、MAツール選びで失敗しないための重要な比較ポイントを7つ紹介します。

① 導入の目的や自社の課題を明確にする

ツール選びを始める前に、まず立ち止まって考えるべき最も重要なことがあります。それは、「何のためにMAツールを導入するのか?」という目的を明確にすることです。目的が曖昧なままでは、どの機能が重要なのか判断できず、ツールのスペック比較に終始してしまいます。

以下のように、自社のマーケティング課題を具体的に洗い出してみましょう。

  • リード獲得の課題: 「Webサイトからの問い合わせや資料請求が少なく、見込み客の母数を増やしたい」
  • リード育成の課題: 「獲得した名刺やリストが放置されており、商談に繋がっていない。継続的な関係構築ができていない」
  • 営業連携の課題: 「マーケティングから渡されるリードの質がバラバラで、営業が効率的にアプローチできていない」
  • 業務効率の課題: 「メール配信やレポート作成に時間がかかりすぎて、戦略的な業務に集中できない」

目的が明確になれば、おのずと重視すべき機能や選定基準が見えてきます。 例えば、リード獲得が最優先課題であれば、LP・フォーム作成機能やSEO支援機能が充実しているツールが候補になります。営業連携の課題を解決したいのであれば、SFA/CRMとの連携のスムーズさが最重要項目となるでしょう。

② BtoB向けかBtoC向けかを確認する

MAツールは、その設計思想からBtoB(企業向けビジネス)に強いツールと、BtoC(消費者向けビジネス)に強いツールに大別されます。自社のビジネスモデルに合わせて、適切なタイプのツールを選ぶことが不可欠です。

BtoB向けMAツールの特徴 BtoC向けMAツールの特徴
顧客単価 高い 低い
検討期間 長い(数ヶ月〜数年) 短い(即時〜数日)
顧客数 比較的少ない 非常に多い(数万〜数百万)
重視する情報 企業名、役職、部署、決裁権 年齢、性別、居住地、購買履歴
重要な機能 スコアリング、SFA/CRM連携、企業単位でのアプローチ(ABM)、名刺管理連携 大量メール配信、ECサイト連携、LINE/アプリ連携、購買データ分析、クーポン配信

BtoBでは、一人の担当者が情報を集め、複数部署の承認を経て、最終的に組織として購入を決定します。そのため、個人だけでなく「企業」という単位でアプローチを管理したり、役職や部署といった属性情報でスコアリングしたりする機能が重要です。

一方、BtoCでは、個人の感情やタイミングで購入が決定されます。顧客数が膨大になるため、大量のデータを高速に処理する能力や、ECサイトの購買履歴やアプリの利用状況といった多様なチャネルのデータを統合し、個人の嗜好に合わせたレコメンドを自動で行う機能が求められます。

自社のビジネスがどちらのモデルに近いかを判断し、それに特化した、あるいは両方に対応できるツールを選びましょう。

③ 必要な機能が過不足なく備わっているか

導入目的を明確にしたら、次はその目的を達成するために具体的にどのような機能が必要かをリストアップします。そして、検討しているツールがその機能を「過不足なく」備えているかを確認します。

「多機能なツールほど良い」と考えがちですが、それは間違いです。使わない機能がたくさんあっても、月額費用が高くなるだけで意味がありません。逆に、コストを重視するあまり、必須と考えていた機能が搭載されていないツールを選んでしまっては、目的を達成できません。

「Must(必須)機能」と「Want(あると嬉しい)機能」に分けてリスト化すると、比較検討がしやすくなります。例えば、「SFA連携は必須だが、SNS投稿機能は当面なくても良い」といった具合です。各ツールの機能一覧表を作成し、自社の要件をどれだけ満たしているかを客観的に評価しましょう。

④ 誰でも直感的に使える操作性か

MAツールを日常的に操作するのは、現場のマーケティング担当者です。どんなに高機能なツールでも、操作が複雑で使いこなすのが難しければ、次第に使われなくなり、導入は失敗に終わります。

特に、専任のMA運用者がいない、あるいはITツールに不慣れな担当者が使う場合は、操作性のチェックが極めて重要です。

  • 管理画面のデザインは分かりやすいか?
  • シナリオ設定は、ドラッグ&ドロップのような直感的な操作でできるか?
  • メールやLPの作成は、専門知識がなくても簡単に行えるか?

これらの点は、カタログやWebサイトの情報だけでは判断が難しい部分です。多くのツールが提供している無料トライアルや、ベンダーによるデモンストレーションを積極的に活用し、実際にツールに触れて、自社の担当者がストレスなく使えるかどうかを必ず確認しましょう。

⑤ 外部ツール(SFA/CRMなど)と連携できるか

MAツールは単体で完結するものではなく、他のツールと連携させることで、その真価を最大限に発揮します。 特に、営業部門が利用するSFA/CRMとの連携は、多くの企業にとって必須項目と言えるでしょう。

比較検討の際には、以下の点を確認します。

  • 現在利用しているSFA/CRMと標準で連携できるか?
    • 標準連携(API連携がデフォルトで用意されている)の場合、比較的簡単かつ安定したデータ同期が可能です。
  • 標準連携できない場合、他の連携方法は用意されているか?
    • CSVファイルを手動でインポート/エクスポートする方法や、APIを個別に開発して連携する方法などがありますが、手間やコストがかかります。
  • どのようなデータが、どのくらいの頻度で同期できるか?
    • リアルタイムで双方向に同期できるのが理想ですが、ツールによっては一方向のみ、あるいは1日に1回など、同期のタイミングに制限がある場合があります。

SFA/CRM以外にも、名刺管理ツール、Web会議システム、BIツール、広告プラットフォームなど、自社で利用している、あるいは将来的に導入したいツールとの連携可否も確認しておくと、より戦略的なデータ活用が可能になります。

⑥ 料金体系は予算に見合っているか

料金の比較は、単に月額費用の安さだけで判断してはいけません。自社の事業計画や予算と照らし合わせ、長期的な視点でコストパフォーマンスを評価する必要があります。

確認すべきポイントは以下の通りです。

  • 初期費用はかかるか?
  • 月額費用の算出基準は何か?(リード数、メール配信数、機能など)
  • 将来、リード数や利用機能が増えた場合、料金はどのように変動するか?
    • 急激に料金が上がらないか、料金プランの全体像を把握しておくことが重要です。
  • 最低契約期間は設定されているか?
  • サポートやオプション機能に追加費用はかかるか?

複数のツールから見積もりを取り、それぞれの料金体系を詳細に比較検討しましょう。その上で、自社の成長予測も加味し、「3年後にはこのくらいのコストになるだろう」といったシミュレーションを行うことで、より現実的な判断ができます。

⑦ サポート体制は充実しているか

MAツールは導入して終わりではなく、運用しながら成果を出していくものです。その過程では、操作方法が分からない、設定がうまくいかない、もっと効果的な使い方を知りたい、といった様々な疑問や壁にぶつかります。そんな時に、迅速で的確なサポートを受けられるかどうかは、MA運用の成否を大きく左右します。

サポート体制を比較する際は、以下の点を確認しましょう。

  • サポートのチャネル: 電話、メール、チャットなど、どのような問い合わせ方法があるか。
  • サポートの対応時間: 平日の日中のみか、24時間対応かなど。
  • サポートの範囲: ツールの操作方法に関する質問だけでなく、マーケティング戦略に関する相談にも乗ってくれるか。
  • 専任担当者の有無: 自社の状況を深く理解してくれる専任のカスタマーサクセス担当者が付くか。
  • 学習コンテンツの充実度: オンラインヘルプ、FAQ、チュートリアル動画、活用セミナーなどが豊富に用意されているか。

特に、社内にMAの専門知識を持つ人材がいない場合は、手厚いサポート体制が整っているツールを選ぶと安心です。多少コストが高くなったとしても、結果的にツールの活用が進み、早期に成果を出せる可能性が高まります。

【2024年】おすすめのMAツール25選を徹底比較

ここでは、2024年現在、国内外で提供されている主要なMAツール25選をピックアップし、それぞれの特徴や料金、どのような企業におすすめかを紹介します。各ツールの公式サイトを参照し、最新の情報を基に作成しています。


(ご注意) 料金プランは頻繁に改定される可能性があるため、記載されている情報はあくまで目安です。正確な料金については、必ず各ツールの公式サイトにて直接ご確認ください。

ツール名 主な特徴 BtoB/BtoC 料金目安(月額)
HubSpot Marketing Hub インバウンドマーケティングの思想に基づいたオールインワンツール。CRMが無料で利用可能。 両対応 ¥2,400〜(Freeプランあり)
SATORI 国産MAツール。匿名の見込み客へのアプローチに強く、操作性がシンプル。 BtoB寄り ¥148,000〜
Adobe Marketo Engage 世界的に高いシェアを誇る高機能MA。柔軟なカスタマイズ性と拡張性が特徴。 両対応 要問い合わせ
Salesforce Account Engagement Salesforce(SFA/CRM)とのシームレスな連携が強み。BtoBマーケティングに特化。 BtoB ¥150,000〜
b→dash MA/CDP/BI/Web接客などを統合したデータマーケティングプラットフォーム。 両対応 要問い合わせ
List Finder BtoB特化の低価格MA。必要な機能を厳選し、月額3万円台から利用可能。 BtoB ¥39,800〜
BowNow 無料から始められる国産MA。シンプルな機能と操作性で、MA初心者でも使いやすい。 BtoB寄り ¥0〜
Kairos3 直感的な操作性と手厚いサポートが特徴の国産MA。SFA一体型プランも提供。 BtoB寄り ¥15,000〜
SHANON MARKETING PLATFORM イベント・セミナー管理に強みを持つ国産MA。オンライン・オフラインのデータを統合。 BtoB寄り 要問い合わせ
Oracle Eloqua Marketing Automation 大企業向けの高度なBtoBマーケティングプラットフォーム。ABMや高度な分析に強い。 BtoB 要問い合わせ
Probance BtoC特化のMAツール。AIによる顧客分析とレコメンデーション機能が強力。 BtoC 要問い合わせ
ActiveCampaign 中小企業向けに人気の海外製MA。手頃な価格で高度な自動化機能を実現。 両対応 $29〜
Act-On 成長企業向けのMAプラットフォーム。マーケティングとセールスの連携を重視。 BtoB寄り 要問い合わせ
Synergy! 国産CRM/MAツール。顧客管理を起点としたマーケティング活動を支援。 両対応 ¥15,000〜
Sales Manago ポーランド発のMAツール。EC・BtoC領域に強く、AIを活用した機能が豊富。 BtoC寄り 要問い合わせ
HotProfile SFA/CRM/MA/名刺管理が一体化した国産ツール。営業DXをワンストップで実現。 BtoB ¥30,000〜
Autopilot 視覚的で美しいジャーニービルダーが特徴。直感的なシナリオ作成が可能。 両対応 $35〜
Oracle Responsys Campaign Management 大規模BtoC向けのクロスチャネルキャンペーン管理ツール。パーソナライズに強い。 BtoC 要問い合わせ
anppii 中小企業向けに特化した国産MAツール。低価格でシンプルな機能を提供。 BtoB寄り ¥10,000〜
Liny LINE公式アカウントに特化したMAツール。LINEでの顧客管理・セグメント配信・自動化を実現。 両対応 ¥5,000〜
Aimstar CDPとMAが一体化した国産ツール。複数チャネルの顧客データを統合・分析・施策実行。 両対応 要問い合わせ
MOTENASU 顧客のチャネル横断的な行動を捉え、最適な手段(メール/LINE/SMS等)でアプローチ。 BtoC寄り ¥49,800〜
Marketing Cloud Salesforceが提供するBtoC向けMA。AI「Einstein」を活用した高度なパーソナライズが特徴。 BtoC 要問い合わせ
カスタマーリングス BtoC/ECに強い国産MA/CDP。分析機能が豊富で、顧客インサイトの発見を支援。 BtoC 要問い合わせ
GENIEE MA 国産MAツール。シンプルな操作性と手頃な価格で、中小企業のMA導入を支援。 BtoB寄り ¥100,000〜

以下、各ツールの詳細を解説します。

① HubSpot Marketing Hub

インバウンドマーケティングの提唱企業であるHubSpotが提供するMAツール。CRM(顧客管理)プラットフォームを基盤としており、マーケティング、セールス、カスタマーサービスの各ツールがシームレスに連携するのが最大の特徴です。無料のCRM機能だけでも高機能で、まずは無料プランからスモールスタートできる手軽さが人気です。(参照:HubSpot Japan株式会社 公式サイト)

② SATORI

株式会社SATORIが提供する国産MAツール。「匿名の見込み客」へのアプローチに強みを持ち、Webサイトに訪問しただけの個人情報が不明なユーザーに対しても、ポップアップなどでアプローチが可能です。管理画面がシンプルで直感的に操作できるため、MA初心者でも扱いやすいと評判です。(参照:SATORI株式会社 公式サイト)

③ Adobe Marketo Engage

アドビ株式会社が提供する、世界的に非常に高いシェアを持つ高機能MAツール。BtoB、BtoC問わず、あらゆる業種・規模の企業に対応できる柔軟性と拡張性が魅力です。SalesforceやMicrosoft Dynamics 365など主要なSFA/CRMとの連携も強力で、企業のマーケティング活動の中核を担うプラットフォームとして活用されています。(参照:アドビ株式会社 公式サイト)

④ Salesforce Account Engagement (旧 Pardot)

セールスフォース・ジャパンが提供するBtoBマーケティング向けのMAツール。世界No.1のSFA/CRMであるSalesforceとのネイティブな連携が最大の強みです。Salesforce内の顧客・商談データとMAの行動データをシームレスに統合し、マーケティングと営業が一体となった活動を強力に支援します。(参照:株式会社セールスフォース・ジャパン 公式サイト)

⑤ b→dash

株式会社データXが提供するデータマーケティングプラットフォーム。MAだけでなく、CDP(カスタマーデータプラットフォーム)、BI、Web接客、広告連携など、データマーケティングに必要な機能をオールインワンで提供します。業界別にテンプレートが用意されており、プログラミング知識なしでデータ統合・活用が可能です。(参照:株式会社データX 公式サイト)

⑥ List Finder

株式会社Innovation X Solutionsが提供する、BtoBに特化した低価格帯のMAツールです。月額3万円台からという手頃な価格で、リード管理、メール配信、スコアリングといったBtoBマーケティングに必要な基本機能を網羅しています。MA導入の初期投資を抑えたい中小企業におすすめです。(参照:株式会社Innovation X Solutions 公式サイト)

⑦ BowNow

クラウドサーカス株式会社が提供する国産MAツール。無料プランから始められる手軽さが最大の特徴で、MA導入のハードルを大きく下げています。シンプルな機能構成と分かりやすい管理画面で、MAが初めての企業でも安心して利用を開始できます。(参照:クラウドサーカス株式会社 公式サイト)

⑧ Kairos3

カイロスマーケティング株式会社が提供する国産MAツール。「誰でもサクッと使いこなせる」をコンセプトに、直感的な操作性を追求しています。手厚いサポート体制にも定評があり、導入から運用まで安心して相談できます。SFA(営業支援)機能が一体となったプランも用意されています。(参照:カイロスマーケティング株式会社 公式サイト)

⑨ SHANON MARKETING PLATFORM

株式会社シャノンが提供する国産MAツール。特に、セミナーや展示会といったオフラインイベントの管理機能に強みを持っています。オンラインの行動履歴とオフラインの参加履歴を一元管理し、顧客の全体像を把握した上でのマーケティング施策が可能です。(参照:株式会社シャノン 公式サイト)

⑩ Oracle Eloqua Marketing Automation

日本オラクル株式会社が提供する、主にグローバルな大企業向けのBtoBマーケティングプラットフォーム。高度なセグメンテーション、パーソナライゼーション、ABM(アカウントベースドマーケティング)機能が充実しており、複雑で大規模なマーケティングキャンペーンの実行を支援します。(参照:日本オラクル株式会社 公式サイト)

⑪ Probance

Probance社が提供するBtoC特化型のMAツール。AIを活用した顧客分析と、1to1レコメンデーション機能が強力です。顧客一人ひとりの購買確率や離反確率を予測し、最適なチャネル・タイミングでアプローチを自動化することで、LTVの最大化を目指します。(参照:ブレインパッド株式会社 公式サイト)

⑫ ActiveCampaign

米国シカゴに本社を置くActiveCampaign, LLCが提供するMAツール。中小企業向けに非常に人気が高く、手頃な価格ながら、高度なマーケティングオートメーションやCRM機能を備えています。Eメールマーケティング、CRM、セールスオートメーションを1つのプラットフォームで実現できます。(参照:ActiveCampaign, LLC 公式サイト)

⑬ Act-On

米国オレゴン州に本社を置くAct-On Software, Inc.が提供するMAプラットフォーム。特に成長段階にある企業をターゲットとしており、マーケティングとセールスの連携を重視した機能設計が特徴です。ブランド認知からリードジェネレーション、ナーチャリング、顧客ロイヤルティ向上までを支援します。(参照:Act-On Software, Inc. 公式サイト)

⑭ Synergy!

シナジーマーケティング株式会社が提供する国産のクラウド型CRM/MAツール。顧客情報の一元管理を基盤として、メール配信、LINE連携、Webアンケート、フォーム作成など、顧客との多様なコミュニケーションを実現します。日本の商習慣に合わせた使いやすさに定評があります。(参照:シナジーマーケティング株式会社 公式サイト)

⑮ Sales Manago

ポーランドに本社を置くSales Manago社が開発したMAプラットフォーム。特にECサイトやBtoCビジネスに強みを持ち、AIを活用した動的なコンテンツ表示やレコメンデーション、ライブチャット連携など、顧客エンゲージメントを高める機能が豊富です。(参照:株式会社Sales Manago Japan 公式サイト)

⑯ HotProfile

株式会社ハンモックが提供する、営業DXを推進するための統合ツール。「SFA」「CRM」「MA」「名刺管理」の4つの機能が一体となっているのが最大の特徴です。マーケティングから営業まで、顧客に関する情報を一元化し、組織全体の生産性向上を支援します。(参照:株式会社ハンモック 公式サイト)

⑰ Autopilot

AutopilotHQ Inc.が提供するMAツール。ドラッグ&ドロップでシナリオを組み立てられる、視覚的で美しい「ジャーニービルダー」が特徴です。直感的で楽しくカスタマージャーニーを設計できるため、非エンジニアのマーケターにも人気があります。(参照:AutopilotHQ Inc. 公式サイト)

⑱ Oracle Responsys Campaign Management

日本オラクル株式会社が提供する、大規模なBtoC企業向けのクロスチャネルキャンペーン管理ツール。メール、モバイル(プッシュ通知、SMS)、SNS、Webといった多様なチャネルを横断した、一貫性のあるパーソナライズされたコミュニケーションを実現します。(参照:日本オラクル株式会社 公式サイト)

⑲ anppii

株式会社マーケティングエンジンが提供する、中小企業に特化した国産MAツール。月額1万円という低価格から利用でき、必要最低限の機能に絞ることでシンプルな操作性を実現しています。「まずはMAを試してみたい」という企業に最適なツールです。(参照:株式会社マーケティングエンジン 公式サイト)

⑳ Liny

Liny株式会社が提供する、LINE公式アカウントの運用を支援するMAツール。LINEの友だちを属性や行動でセグメント分けし、ステップ配信やチャットボット対応、顧客管理などを自動化できます。LINEを主要なコミュニケーションチャネルとするBtoCビジネスで広く活用されています。(参照:Liny株式会社 公式サイト)

㉑ Aimstar

スプリームシステム株式会社が提供する、CDP(カスタマーデータプラットフォーム)とMAが一体となったツール。社内外に散在する顧客データを統合・分析し、そのインサイトを基にメールやLINE、アプリなど様々なチャネルでの施策実行までをワンストップで行えます。(参照:スプリームシステム株式会社 公式サイト)

㉒ MOTENASU

株式会社RITが提供するMAツール。メール、SMS、LINE、DM(郵送)など、オンライン・オフラインを問わない多様なチャネルを統合管理し、顧客ごとに最適なアプローチを自動で選択・実行できる「ハイブリッド配信」が特徴です。(参照:株式会社RIT 公式サイト)

㉓ Marketing Cloud

株式会社セールスフォース・ジャパンが提供するBtoC向けのMAプラットフォーム。同社のAI「Einstein」を活用し、顧客一人ひとりの行動を予測して、最適なコンテンツや商品を最適なタイミングで提案します。Journey Builderを使って、複雑なカスタマージャーニーも設計可能です。(参照:株式会社セールスフォース・ジャパン 公式サイト)

㉔ カスタマーリングス

株式会社プラスアルファ・コンサルティングが提供する、BtoC/ECに強い国産MA/CDPツール。高度な分析機能に定評があり、RFM分析やLTV分析、バスケット分析など、顧客のインサイトを深く掘り下げるための機能が豊富に揃っています。(参照:株式会社プラスアルファ・コンサルティング 公式サイト)

㉕ GENIEE MA

株式会社ジーニーが提供する国産MAツール。シンプルなUIと手頃な価格帯で、中小企業のマーケティングDXを支援します。同社が提供するSFA/CRM「GENIEE SFA/CRM」やWeb接客ツール「GENIEE CHAT」との連携もスムーズです。(参照:株式会社ジーニー 公式サイト)

MAツール導入を成功させるための3ステップ

現状の課題を整理し、導入目的を明確にする、KPIを設定し、顧客の購買プロセスを可視化する、運用体制を整え、スモールスタートを意識する

優れたMAツールを選定するだけでは、成功は約束されません。導入後の運用こそが成果を左右します。ここでは、MAツールの導入を成功に導くための実践的な3つのステップを紹介します。

① 現状の課題を整理し、導入目的を明確にする

これはツール選定時にも重要ですが、導入が決定した後に、より具体的に、関係者全員で共有するために改めて実施すべき最も重要なステップです。「何となく業務が効率化されそうだから」「競合が導入したから」といった曖昧な理由で導入を進めると、必ず失敗します。

まずは、マーケティング部門、営業部門、場合によってはカスタマーサポート部門など、関連する部署のメンバーを集めてワークショップなどを開催し、現状の業務プロセスと課題を徹底的に洗い出しましょう。

  • 「見込み客の情報が各営業担当者のPCに散在していて、全体像が把握できない」
  • 「月に一度のメルマガ配信だけで、継続的なフォローができていない」
  • 「営業は『リードの質が悪い』と言い、マーケは『フォローしてくれない』と言う」

これらの具体的な課題をリストアップし、それらを解決するために「MAツールを使って何を実現したいのか」という導入目的を、全員が納得できる言葉で定義します。例えば、「放置リードをナーチャリングし、月間10件のホットリードを創出して営業にパスする」「SFAと連携し、マーケから営業へのリード受け渡しプロセスを可視化・効率化する」といった具体的な目標です。この共通認識が、導入後の全ての活動の羅針盤となります。

② KPIを設定し、顧客の購買プロセスを可視化する

目的が明確になったら、その達成度を測るための具体的な数値目標(KPI:重要業績評価指標)を設定します。KPIを設定することで、施策の成否を客観的に判断し、データに基づいた改善活動が可能になります。

KPIの例:

  • リード獲得段階: 月間新規リード獲得数、コンバージョン率(CVR)
  • リード育成段階: メール開封率・クリック率、ホットリード(MQL)創出数
  • 商談化段階: 商談化率(MQL→SQL転換率)、受注率、受注単価

次に、自社の顧客が製品やサービスを認知し、興味を持ち、比較検討を経て、購入に至るまでの典型的なプロセス(カスタマージャーニー)を可視化します。このジャーニーの各段階で、顧客はどのような情報を求めているのか、どのような疑問や不安を抱えているのかを想定します。

そして、そのジャーニーマップに沿って、「どの段階の顧客に、どのタイミングで、どのようなコンテンツを、どのチャネル(メール、Webサイトなど)で届けるか」というコミュニケーションシナリオを設計します。このカスタマージャーニーとシナリオが、MAツールを動かすための設計図となります。

③ 運用体制を整え、スモールスタートを意識する

MAツールを実際に動かしていくための運用体制を構築します。誰がプロジェクト全体の責任者で、誰が日々のツール操作やシナリオ設定、コンテンツ作成、データ分析を行うのか、役割分担を明確にします。特に中心となるMA運用担当者には、ツールの使い方だけでなく、マーケティング全般の知識を習得するための学習機会を提供することが重要です。

そして、最も大切な心構えが「スモールスタート」です。最初からMAツールの全ての機能を使いこなし、複雑なシナリオをいくつも動かそうとすると、担当者が疲弊し、計画が頓挫してしまいます。

まずは、最も課題が大きく、かつ成果が出やすいと思われる領域に絞って、シンプルな施策から始めてみましょう。

  • 例1: 「放置されている過去の名刺リストに対して、お役立ち情報を月2回メールで配信する」
  • 例2: 「資料請求があったリードに対して、3日後にお礼と関連情報を送る、という簡単なステップメールを自動化する」

このように、小さな成功体験を積み重ねることで、担当者は自信をつけ、ツールの操作にも習熟していきます。また、小さな施策であれば、効果測定や改善も容易です。そこで得られた知見を基に、徐々にシナリオを高度化させたり、対象範囲を広げたりしていくことが、MA導入を失敗させず、着実に成果を積み上げていくための確実な方法です。

MAツールに関するよくある質問

MAツールは無料で利用できますか?、MAツールを導入すれば必ず成果は上がりますか?、MAツール導入で失敗しないための注意点はありますか?

最後に、MAツールの導入を検討する際によく寄せられる質問とその回答をまとめました。

MAツールは無料で利用できますか?

回答:一部のツールでは、機能や登録リード数に制限のある無料プランが提供されています。また、多くのツールで、期間限定の無料トライアルが用意されています。

例えば、「HubSpot」や「BowNow」などは、永続的に利用できる無料プランを提供しており、MAツールがどのようなものかを実際に試してみるのに最適です。

ただし、無料プランは一般的に、登録できるリード数が1,000件まで、メール配信数が月間2,000通までといった制限や、スコアリング機能や自動化シナリオの作成数に上限が設けられていることが多いです。そのため、本格的なマーケティング活動を行うためには、有料プランへの移行が必要になると考えるのが一般的です。

無料トライアルは、14日間や30日間といった期間中、有料プランの全機能(または一部機能)を試すことができる制度です。ツールの操作性や自社との相性を確認するために、積極的に活用することをおすすめします。

MAツールを導入すれば必ず成果は上がりますか?

回答:いいえ、必ず上がるとは限りません。MAツールは、あくまでマーケティング活動を効率化・高度化するための「道具」です。

ツールを導入しただけでは成果は出ません。その道具をいかに使いこなすかが重要です。MA導入で成果を上げるためには、以下の要素が不可欠です。

  • 明確な戦略と目的: 何を達成するためにMAを使うのかが明確であること。
  • 質の高いコンテンツ: 見込み客を育成するための、有益で魅力的なコンテンツが継続的に供給されること。
  • 適切な運用体制: ツールを運用し、データを分析・改善していくための人材やリソースが確保されていること。
  • 継続的なPDCA: 施策を実行(Do)し、結果を測定(Check)し、改善(Action)するというサイクルを回し続けること。

これらの準備と努力が伴って初めて、MAツールはその真価を発揮し、マーケティング成果の向上に繋がります。「導入すれば誰かが何とかしてくれる」という考えは禁物です。

MAツール導入で失敗しないための注意点はありますか?

回答:主な失敗要因は「目的の不明確化」「人材・リソース不足」「コンテンツ不足」の3つです。これらに対する事前の計画が最も重要です。

これまでの内容のまとめにもなりますが、失敗を避けるための注意点は以下の通りです。

  1. 目的を具体的に設定する: 「リードを増やしたい」「商談化率を上げたい」など、具体的な課題を基に、測定可能な目標を設定しましょう。関係者間でその目的を共有することが、導入後の迷走を防ぎます。
  2. 運用体制を現実的に計画する: 「誰が」「いつ」「何をするのか」を明確にしましょう。担当者のスキルが不足している場合は、研修や外部サポートの活用も視野に入れます。担当者が通常業務と兼任する場合は、MA運用に割ける時間を現実的に見積もることが大切です。
  3. コンテンツ制作計画を立てる: MAはコンテンツがなければ動きません。「どのようなコンテンツを」「誰が」「どれくらいの頻度で」作成するのか、事前に計画を立て、実行可能な体制を構築しましょう。
  4. スモールスタートを心がける: 最初から完璧を目指さず、まずは一つの課題を解決するシンプルな施策から始め、小さな成功を積み重ねていくことが、継続の秘訣です。

これらの注意点を踏まえ、地に足の着いた計画を立てることが、MAツール導入を成功へと導く鍵となります。