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The Model(ザ・モデル)とは?4つの部門の役割とKPIを解説

The Model(ザ・モデル)とは?、4つの部門の役割とKPIを解説

現代のビジネス環境、特にBtoB(Business to Business)領域において、営業・マーケティング活動のあり方が大きく変化しています。その中で、多くの企業が注目し、導入を進めているのが「The Model(ザ・モデル)」と呼ばれる営業プロセスモデルです。これは、顧客の購買プロセスを「マーケティング」「インサイドセールス」「フィールドセールス」「カスタマーサクセス」という4つの部門で分業し、連携して収益の最大化を目指すフレームワークです。

この記事では、The Modelの基本的な概念から、注目される背景、各部門の具体的な役割とKPI、導入のメリット・デメリット、そして成功に導くためのポイントまで、網羅的に解説します。The Modelの導入を検討している企業の経営者やマネージャー、営業・マーケティング担当者の方は、ぜひ本記事を参考に、自社の成長戦略を描いてみてください。

The Model(ザ・モデル)とは

The Model(ザ・モデル)とは

The Model(ザ・モデル)とは、顧客獲得から契約後の成功支援までの一連のプロセスを4つの専門部門に分割し、各部門が連携して組織全体の収益向上を目指す営業・マーケティングのフレームワークです。この概念は、CRM/SFAツールで世界的なシェアを誇る株式会社セールスフォース・ジャパン(旧セールスフォース・ドットコム)が提唱し、自社の急成長を支えたことで広く知られるようになりました。

従来の営業活動では、一人の営業担当者が新規顧客のリストアップからアポイント獲得、商談、契約、そして契約後のアフターフォローまで、すべてのプロセスを担うのが一般的でした。この方法は、担当者の能力に依存しやすく、業務が多岐にわたるため非効率が生じやすい、活動内容が属人化しノウハウが共有されにくいといった課題を抱えていました。

それに対し、The Modelはこれらのプロセスを以下の4つの部門に専門特化させます。

  1. マーケティング: 見込み客(リード)を獲得し、興味関心を育成する。
  2. インサイドセールス: リードに電話やメールでアプローチし、商談機会を創出する。
  3. フィールドセールス: 創出された商談で顧客と対話し、契約を締結する。
  4. カスタマーサクセス: 契約後の顧客が製品・サービスを最大限活用できるよう支援し、長期的な関係を築く。

これらの部門は、それぞれが独立して動くのではなく、「顧客情報」というバトンをリレーのように受け渡しながら、一気通貫で顧客に対応します。マーケティング部門が集めた見込み客リストがインサイドセールスに渡り、有望だと判断された案件がフィールドセールスへ、そして契約後はカスタマーサクセスが引き継ぐ、という流れです。

このモデルの根底にあるのは、「顧客の成功(Customer Success)こそが、自社の持続的な成長(LTV:顧客生涯価値の最大化)につながる」という思想です。特に、月額課金制のサブスクリプション型ビジネスでは、一度契約してもらって終わりではなく、顧客に継続して利用してもらい、満足度を高めてもらうことが収益の鍵を握ります。The Modelは、契約後のフォローを専門に行う「カスタマーサクセス」という部門を設けることで、この継続的な関係構築を仕組み化しているのが最大の特徴です。

各部門は、それぞれの専門領域に特化することでスキルを高め、生産性を向上させます。また、各プロセスの移行率(例:リードから商談への転換率)などがデータとして可視化されるため、組織全体の営業活動におけるボトルネック(課題)を発見し、データに基づいた改善活動を行いやすくなります。

例えば、ある架空のクラウド会計ソフトを提供するSaaS企業を考えてみましょう。

  • マーケティング部門は、経理担当者向けに「インボイス制度の対応方法」といったお役立ち情報をブログで発信し、ホワイトペーパーをダウンロードした企業のリスト(リード)を獲得します。
  • インサイドセールス部門は、そのリストを元に電話をかけ、企業の課題をヒアリング。「当社のソフトなら、その課題を解決できるかもしれません」と興味を喚起し、詳しい説明のためのWeb会議(商談)のアポイントを獲得します。
  • フィールドセールス部門は、設定されたWeb会議で製品のデモンストレーションを行い、顧客の課題に合わせた具体的な活用方法を提案し、契約へと導きます。
  • カスタマーサクセス部門は、契約した顧客に対して初期設定をサポートしたり、定期的に活用状況を確認して新たな使い方を提案したりすることで、解約を防ぎ、より上位のプランへのアップグレードを促します。

このように、The Modelは各部門がそれぞれの役割を全うし、スムーズに連携することで、効率的かつ効果的に収益を生み出し続けるエコシステムを構築する考え方なのです。

The Model(ザ・モデル)が注目される背景

The Model(ザ・モデル)が注目される背景

The Modelというフレームワークが、なぜ今、これほどまでに多くの企業から注目を集めているのでしょうか。その背景には、大きく分けて「ビジネスモデルの変化」と「顧客行動の変化」という2つの大きな潮流があります。これらの変化に対応するために、従来の営業スタイルでは限界が見え始め、新たなアプローチとしてThe Modelが求められるようになったのです。

サブスクリプションビジネスの普及

一つ目の背景は、サブスクリプション型ビジネスモデルの急速な普及です。かつてソフトウェアなどは、パッケージを一度購入すれば永続的に利用できる「売り切り型(買い切り型)」が主流でした。しかし、インターネットとクラウド技術の発展により、月額や年額で利用料を支払う「サブスクリプション型」のサービス(SaaS:Software as a Service など)がビジネスのあらゆる領域で一般的になりました。

このビジネスモデルの変化は、企業の収益構造を根本から変えました。
売り切り型ビジネスでは、収益の大部分は「新規契約の獲得」によってもたらされます。一度売ってしまえば、その後の顧客との関係は限定的になりがちでした。

一方で、サブスクリプションビジネスの収益は、以下の要素で構成されます。

  • 新規顧客からの収益 (Initial MRR/ARR): 新しく契約した顧客から得られる月次/年次経常収益。
  • 既存顧客からの拡大収益 (Expansion MRR/ARR): 既存顧客がより上位のプランにアップグレード(アップセル)したり、追加のサービスを契約(クロスセル)したりすることによる収益増。
  • 既存顧客からの解約による損失 (Churn MRR/ARR): 顧客がサービスを解約することによる収益減。

この構造において、事業を安定的に成長させるためには、新規契約を獲得し続けるだけでなく、それ以上に「いかに既存顧客に満足してもらい、長く継続してもらうか(解約率を下げるか)」、そして「いかに利用価値を高めてもらい、追加の支払い(アップセル/クロスセル)を促すか」が極めて重要になります。

この考え方を表す指標が LTV(Life Time Value:顧客生涯価値) です。LTVは、一人の顧客が取引期間を通じて企業にもたらす総利益を指します。サブスクリプションビジネスでは、このLTVを最大化することが経営の最重要課題となります。

The Modelは、まさにこのLTV最大化を実現するために設計されたフレームワークです。従来の営業組織では手薄になりがちだった「契約後の顧客フォロー」を「カスタマーサクセス」という専門部門が担い、顧客がサービスを使いこなして成功体験を得られるように能動的に支援します。顧客が成功すれば、サービスへの満足度が高まり、解約率は低下します。さらに、成功体験を通じてサービスの価値を深く理解した顧客は、アップセルやクロスセルにも応じやすくなります。

このように、The Modelは「売って終わり」ではなく、「契約してからが本当の関係の始まり」と捉えるサブスクリプションビジネスの思想と完全に合致しており、このビジネスモデルを採用する企業にとって、導入が不可欠な経営戦略の一つとなっているのです。

顧客の購買行動の変化

二つ目の背景は、インターネットの普及による顧客の購買行動の劇的な変化です。かつて、顧客が製品やサービスに関する情報を得る手段は、企業の営業担当者からの説明や、展示会、業界紙などに限られていました。企業側が情報の主導権を握っており、営業担当者が顧客に接触して初めて、顧客は製品の詳細を知ることができました。

しかし、現代ではどうでしょうか。顧客は何か課題を感じたとき、まずスマートフォンやPCで検索します。企業のウェブサイト、製品比較サイト、レビューサイト、SNS、ブログ、動画など、インターネット上には無数の情報源が存在します。顧客は、営業担当者に会う前に、自ら能動的に情報を収集し、複数の選択肢を比較検討し、ある程度の意思決定を済ませてしまうのが当たり前になりました。

調査会社の報告によれば、BtoBの購買担当者は、営業担当者に連絡を取る前に、購買プロセスの半分以上を完了させているとも言われています。これは、企業側から見れば、顧客が自社に興味を持って問い合わせてきた時点では、すでに競合他社との比較を終え、購入の意思が固まりつつある段階かもしれない、ということを意味します。

このような顧客の購買行動の変化に対応するためには、企業もアプローチを変えなければなりません。ただ待っているだけでは、顧客の比較検討の土俵にすら上がれない可能性があります。そこで重要になるのが、顧客が情報を探しているまさにそのタイミングで、有益な情報を提供し、自社を見つけてもらい、信頼関係を築いていく「インバウンドマーケティング」や「コンテンツマーケティング」といった考え方です。

The Modelは、この現代的な購買行動に最適化された仕組みを持っています。
プロセスの起点となる「マーケティング」部門が、ブログ記事、ホワイトペーパー、ウェビナーといった有益なコンテンツを作成・発信することで、まだ具体的な製品を探してはいない潜在的な顧客層にアプローチします。そして、情報収集段階の顧客を惹きつけ、見込み客(リード)として獲得します。

次に「インサイドセールス」部門が、そのリードに対して非対面(電話、メール、Web会議など)でコミュニケーションを取り、顧客の課題を深く理解し、関係性を構築していきます。まだ購買意欲が低い顧客を無理に売り込むのではなく、適切な情報提供を通じてじっくりと育成(ナーチャリング)するのです。

そして、顧客の課題が明確になり、購買のタイミングが熟したと判断された段階で、初めて「フィールドセールス」部門が具体的な提案とクロージINGを行います。

このように、The Modelは、顧客が自ら情報を集めるという行動変容を前提とし、顧客の検討フェーズに合わせて、適切な部門が、適切な情報を提供しながら関係を深めていくように設計されています。プッシュ型の強引な営業ではなく、顧客に寄り添い、課題解決のパートナーとして信頼を得ていく。このプル型のアプローチが、現代の賢い顧客に受け入れられ、The Modelが広く支持される大きな理由となっているのです。

The Model(ザ・モデル)を構成する4つのプロセスと各部門の役割

The Modelは、顧客の購買プロセスに沿って、営業・マーケティング活動を4つの主要なプロセスに分割します。それぞれのプロセスは専門の部門が担当し、顧客情報をバトンとして受け渡しながら、連携して最終的なゴールである「LTV(顧客生涯価値)の最大化」を目指します。ここでは、各部門の具体的な役割とミッションについて詳しく解説します。

部門名 主な役割 ゴール(引き渡すバトンの状態)
マーケティング 見込み客(リード)の創出と育成 質の高い見込み客(MQL)を創出し、インサイドセールスに引き渡す
インサイドセールス リードへのアプローチと関係構築、商談化 購買意欲の高い商談案件(SQL)を創出し、フィールドセールスに引き渡す
フィールドセールス 商談、提案、クロージング 案件を受注(契約)し、カスタマーサクセスに引き渡す
カスタマーサクセス 顧客の成功支援、契約更新、LTV最大化 顧客の成功を実現し、解約防止とアップセル・クロスセルを達成する

マーケティング

マーケティング部門は、The Modelのプロセスの出発点であり、見込み客(リード)を獲得し、自社の製品やサービスに興味を持ってもらうための活動全般を担います。現代のマーケティングは、単に広告を打つだけでなく、顧客にとって価値のある情報を提供することで、自社を見つけてもらい、信頼関係を築くことが求められます。

主な役割と活動内容:

  • リードジェネレーション(見込み客創出): Webサイト、オウンドメディア(ブログ)、SNS、Web広告、SEO対策、展示会への出展、ウェビナーの開催など、様々なチャネルを通じて、自社のターゲットとなる顧客の連絡先情報を獲得します。例えば、「業務効率化に関するホワイトペーパー」をWebサイトに掲載し、ダウンロードする際に入力された企業名やメールアドレスがリードとなります。
  • リードナーチャリング(見込み客育成): 獲得したばかりのリードは、まだ購買意欲が低いことがほとんどです。そこで、メルマガ配信やセミナー案内などを通じて、継続的に有益な情報を提供し、顧客の課題意識を醸成しながら、自社製品への関心を高めていきます。このプロセスはMA(マーケティングオートメーション)ツールを活用して効率化されることが多いです。
  • リードクオリフィケーション(見込み客の選別): 育成したリードの中から、特に購買意欲が高い、あるいは自社のターゲット顧客像に合致する「質の高いリード」を選別します。この選別されたリードは「MQL(Marketing Qualified Lead)」と呼ばれ、次のインサイドセールス部門に引き渡す対象となります。

ゴールと重要性:
マーケティング部門のゴールは、単に多くのリードを獲得することではなく、後工程であるインサイドセールスが効率的にアプローチできる「質の高いMQL」を安定的に供給することです。いくらリードの数が多くても、ターゲットから外れていたり、全く興味のないリードばかりでは、インサイドセールスの活動が無駄になり、組織全体の生産性が低下してしまいます。マーケティング部門は、The Modelの成否を左右する「水源」としての重要な役割を担っているのです。

インサイドセールス

インサイドセールス部門は、マーケティング部門とフィールドセールス部門の間に位置し、両者の「橋渡し」役を担う極めて重要なプロセスです。電話、メール、Web会議システムといった非対面のコミュニケーションツールを駆使して、マーケティングから引き継いだMQLにアプローチします。

主な役割と活動内容:

  • 初期アプローチとヒアリング: MQLに対して迅速にコンタクトを取り、顧客が抱えている具体的な課題やニーズ、予算、導入時期などをヒアリングします。顧客の状況を深く理解することが、後の提案の質を決めます。
  • 関係構築と情報提供: すぐに商談に進むわけではない顧客に対しては、電話やメールで定期的にコミュニケーションを取り、課題解決に役立つ情報を提供するなどして、関係性を維持・深化させます。
  • 商談化の判断: ヒアリングを通じて、顧客の課題が自社製品で解決可能であり、かつ顧客の購買意欲や検討度合いが高いと判断した場合に、フィールドセールスが訪問(または詳細なWeb会議)するための商談機会を設定します。この商談化された案件は「SQL(Sales Qualified Lead)」「SAL(Sales Accepted Lead)」と呼ばれます。

ゴールと重要性:
インサイドセールスのゴールは、確度の高い商談案件(SQL)を創出し、フィールドセールスに引き渡すことです。単にアポイントの件数を稼ぐのではなく、顧客の課題や状況を正確に把握し、「この商談は受注につながる可能性が高い」と判断した質の高い案件のみをトスアップすることが求められます。これにより、フィールドセールスは有望な商談に集中でき、受注率を大幅に高めることができます。インサイドセールスは、見込み客の熱量を高め、営業プロセス全体の効率を劇的に改善するエンジンと言えるでしょう。

フィールドセールス

フィールドセールス部門は、一般的に「営業」と聞いて多くの人がイメージする役割を担います。インサイドセールスが創出した質の高い商談(SQL)を引き継ぎ、顧客と直接対話(訪問またはWeb会議)し、最終的に契約を締結(クロージング)することがミッションです。

主な役割と活動内容:

  • 商談・ヒアリング: 顧客先を訪問、または詳細なWeb会議を実施し、インサイドセールスから引き継いだ情報をもとに、より深く課題をヒアリングします。
  • 製品デモンストレーションと提案: 顧客の課題に合わせて、製品やサービスの具体的なデモンストレーションを行い、導入によってどのようなメリットがあるかを分かりやすく説明します。そして、顧客に最適化された提案書を作成し、提示します。
  • クロージング(契約締結): 見積もりの提示、価格交渉、導入スケジュールの調整などを行い、顧客の最終的な意思決定を促し、契約を締結します。

ゴールと重要性:
フィールドセールスのゴールは、言うまでもなく「受注(契約)を獲得すること」です。The Modelにおいては、マーケティングとインサイドセールスが事前準備を十分に行っているため、フィールドセールスは「売れる見込みの高い顧客」との商談に集中できます。これにより、移動時間や無駄な訪問といった非効率な活動が削減され、一件あたりの商談の質を高めることに専念できます。彼らの活動が、企業の直接的な売上を生み出す最終プロセスとなります。契約後は、顧客情報を正確にカスタマーサクセス部門に引き継ぐことも重要な役割です。

カスタマーサクセス

カスタマーサクセス部門は、The Modelの最後のプロセスであり、サブスクリプションビジネスにおいては最も重要とも言える役割を担います。「売って終わり」ではなく、契約後の顧客が製品・サービスを最大限に活用し、ビジネス上の「成功」を実感できるように能動的に支援します。

主な役割と活動内容:

  • オンボーディング: 契約直後の顧客に対して、スムーズに利用を開始できるよう、初期設定のサポートや操作トレーニングを実施します。ここでの体験が、その後の顧客満足度を大きく左右します。
  • 活用支援(アダプション): 定期的に顧客とコミュニケーションを取り、利用状況をモニタリングします。十分に活用できていない顧客には新たな活用法を提案したり、成功事例を共有したりして、サービスの定着を促します。
  • アップセル・クロスセルの提案: 顧客のビジネス成長に合わせて、より上位のプラン(アップセル)や関連サービス(クロスセル)を提案し、顧客単価(LTV)の向上を目指します。
  • 契約更新と解約防止(チャーン対策): 契約更新時期が近づいた顧客に対して、これまでの成功体験を振り返り、継続利用を働きかけます。また、解約の兆候が見られる顧客には、いち早くアプローチして課題を解決し、解約を未然に防ぎます。

ゴールと重要性:
カスタマーサクセスのゴールは、顧客の成功を通じてLTV(顧客生涯価値)を最大化することです。具体的には、解約率(チャーンレート)を最小限に抑え、アップセル・クロスセルによって売上を拡大させることがミッションとなります。彼らの活動が、サブスクリプションビジネスの安定的な収益基盤を築き、持続的な成長を可能にします。カスタマーサクセスは、単なる受け身のサポートではなく、企業の成長を根幹から支えるプロフィットセンター(収益部門)なのです。

各プロセスの主なKPI

The Modelを効果的に運用するためには、各部門の活動成果を客観的に測定し、評価するための指標、すなわちKPI(Key Performance Indicator:重要業績評価指標)の設定が不可欠です。KPIを定めることで、各部門は目標を明確に意識でき、マネジメント層はプロセス全体のどこにボトルネックがあるのかをデータに基づいて把握し、改善策を講じることができます。

ここでは、The Modelを構成する4つの部門ごとに、設定されるべき代表的なKPIを紹介します。重要なのは、これらのKPIが連動していることを理解し、部門最適ではなく全体最適の視点で数値を追うことです。

部門 カテゴリ 主なKPI(例)
マーケティング 量・効率 リード獲得数、Webサイトトラフィック、CPL(Cost Per Lead)
MQL(Marketing Qualified Lead)数、MQL転換率
インサイドセールス 活動量 架電数、メール送信数、有効会話数
SQL(Sales Qualified Lead)数、商談化率、有効商談化率
フィールドセールス 活動量 商談数、提案数
受注数、受注率、平均受注単価(ACV)、受注までの期間
カスタマーサクセス 顧客定着 解約率(チャーンレート)、オンボーディング完了率
収益貢献 アップセル/クロスセル率・金額、LTV、NRR(売上継続率)

マーケティング部門のKPI

マーケティング部門のKPIは、どれだけ多くの見込み客を、どれだけ効率的に、そしてどれだけ質高く集められたかを測る指標が中心となります。

  • リード獲得数: ウェビナー、ホワイトペーパーダウンロード、問い合わせなどを通じて獲得した見込み客の総数です。活動の規模を示す基本的な指標です。
  • CPL(Cost Per Lead): リード1件を獲得するためにかかったコスト(広告費など÷リード数)。マーケティング活動の費用対効果を測る重要な指標です。
  • MQL(Marketing Qualified Lead)数: 獲得したリードの中から、インサイドセールスに引き渡すに値すると判断された「質の高いリード」の数です。マーケティング部門の最終的な成果物として最も重視されるべきKPIの一つです。
  • MQL転換率(%): 全リードのうち、MQLに転換した割合(MQL数 ÷ リード総数)。この率が低い場合、リード獲得のターゲットがずれているか、育成コンテンツが効果的でない可能性があります。
  • Webサイトトラフィック(訪問者数): オウンドメディアやコンテンツマーケティングの効果を測る指標です。

これらのKPIを追うことで、「広告費をかけすぎずにリードを獲得できているか?」「獲得したリードは、本当に商談につながる可能性のある質の高いものか?」といった点を評価できます。MQL数が安定して供給されていなければ、後続のインサイドセールスやフィールドセールスの活動が停滞してしまうため、非常に重要な指標群です。

インサイドセールス部門のKPI

インサイドセールス部門のKPIは、マーケティングから受け取ったMQLに対して、どれだけ効率的にアプローチし、どれだけ質の高い商談を創出できたかを測る指標が設定されます。

  • 活動量に関するKPI(架電数、メール送信数など): 日々のアクションの量を示す指標。ただし、これだけを追うと質の低いアプローチが増えるため、後述の質に関するKPIとセットで見る必要があります。
  • コネクト率(%): 架電したうち、実際に担当者と会話できた割合。リストの質やアプローチする時間帯の適切さを測る指標になります。
  • SQL(Sales Qualified Lead)数 / 商談化数: MQLに対してアプローチした結果、フィールドセールスが対応すべきと判断された商談の数。インサイドセールス部門の成果を最も直接的に示すKPIです。
  • 商談化率(%): アプローチしたMQLのうち、SQL(商談)につながった割合(SQL数 ÷ MQL数)。この率が低い場合、MQLの質に問題があるか、インサイドセールスのヒアリングや提案スキルに課題がある可能性が考えられます。
  • 有効商談化率(%): SQLのうち、実際にフィールドセールスが「これは質の高い商談だ」と受け入れた(Accepted)割合。部門間の連携度合いを示す重要な指標です。

インサイドセールスは、量と質のバランスが非常に重要です。闇雲にアポイントを取るのではなく、顧客の課題をしっかりと引き出し、フィールドセールスが受注しやすい状態の商談を作り出すことが求められます。

フィールドセールス部門のKPI

フィールドセールス部門のKPIは、創出された商談から、いかに多くの売上を、いかに効率的に生み出したかを測る指標が中心です。

  • 商談数: インサイドセールスから引き継いだ、対応すべき商談の総数。
  • 受注数: 実際に契約に至った案件の数。部門の最終的な成果です。
  • 受注率(%): 商談数に対する受注数の割合(受注数 ÷ 商談数)。フィールドセールスの提案力やクロージング力を示す最も重要な指標です。この率が低い場合、インサイドセールスから引き継ぐ商談の質(SQLの定義)に問題がある可能性も疑われます。
  • 平均受注単価(ACV: Annual Contract Valueなど): 1契約あたりの平均金額。受注数だけでなく、単価も意識することで、売上全体の最大化を目指します。
  • 受注までの期間(セールスサイクル): 最初の商談から受注までに要した平均日数。この期間が短いほど、営業プロセスが効率的であると言えます。

フィールドセールスのKPIは、企業の売上に直結するため非常にシンプルですが、その数値は前工程であるマーケティングやインサイドセールスの活動品質に大きく左右されることを忘れてはなりません。

カスタマーサクセス部門のKPI

カスタマーサクセス部門のKPIは、「顧客にいかに満足し、継続してもらうか」「いかに顧客単価を向上させるか」という、サブスクリプションビジネスの根幹を支える指標が設定されます。

  • 解約率(チャーンレート): 顧客がサービスを解約した割合。事業の健全性を示す最も重要な指標の一つです。顧客数ベースの「カスタマーチャーン」と、金額ベースの「レベニューチャーン」があります。
  • LTV(Life Time Value:顧客生涯価値): 一人の顧客が取引期間中にもたらす総利益。カスタマーサクセス活動の最終的なゴールを示す指標です。
  • アップセル/クロスセル率・金額: 既存顧客への追加提案によって、より上位のプランへの移行や関連製品の購入につながった割合や金額。顧客単価向上への貢献度を示します。
  • NRR(Net Revenue Retention:売上継続率): 前年同月の既存顧客からの収益が、当月いくらになったかを示す指標。計算式は「(月初のMRR + Expansion MRR – Downgrade MRR – Churn MRR) ÷ 月初のMRR」。NRRが100%を超えると、新規顧客がいなくても事業が成長している状態を意味し、SaaSビジネスの成功の鍵とされています。
  • オンボーディング完了率: 新規契約顧客のうち、所定の期間内に初期設定や基本操作の習得を完了した顧客の割合。初期のつまずきを防ぐ活動の成果を示します。

これらのKPIを通じて、カスタマーサクセスが単なるコストセンターではなく、企業の持続的成長を牽引するプロフィットセンターであることが明確になります。

The Model(ザ・モデル)を導入する3つのメリット

営業活動の生産性が向上する、データに基づいた課題を発見しやすくなる、各部門の専門性を高められる

The Modelを導入することは、単に営業組織の形を変えるだけではありません。企業の収益構造や成長戦略に大きなプラスの効果をもたらす可能性があります。ここでは、The Modelを導入することで得られる主な3つのメリットについて、具体的に解説します。

営業活動の生産性が向上する

最大のメリットは、組織全体の営業活動における生産性が飛躍的に向上することです。これは、プロセスを分業し、各担当者が専門領域に特化することで生まれる効果です。

従来の「一気通貫型」の営業では、一人の営業担当者が非常に多岐にわたる業務をこなさなければなりませんでした。例えば、以下のような活動です。

  • 見込み客探し: ゼロからアプローチ先リストを作成する。
  • テレアポ: 何十件、何百件と電話をかけてアポイントを試みる。
  • 資料作成: 提案書や見積書を一から作成する。
  • 移動: 確度の低い商談のために遠方まで移動する。
  • アフターフォロー: 契約後の問い合わせ対応や細々としたサポートを行う。

これらの業務の中には、営業担当者が本来最も価値を発揮すべき「顧客との対話」や「課題解決の提案」とは直接関係のない、多くの間接業務が含まれています。

The Modelを導入すると、これらの業務が各専門部門に振り分けられます。

  • マーケティング部門が効率的に見込み客を獲得し、育成します。
  • インサイドセールス部門が確度の高い商談だけを創出します。
  • これにより、フィールドセールス部門は、有望な顧客との質の高い商談にのみ集中できるようになります。無駄な訪問や準備時間が大幅に削減され、一人当たりの受注件数や受注率の向上が期待できます。
  • カスタマーサクセス部門が契約後のフォローを一手に引き受けるため、フィールドセールスはすぐに次の新規契約獲得に注力できます。

このように、各担当者が自身の得意分野・専門分野に集中し、スキルを磨くことで、個々のパフォーマンスが向上します。その結果、組織全体のプロセスがスムーズに流れ、営業活動全体の生産性が大きく向上するのです。これは、限られたリソースで最大限の成果を出すことが求められる現代のビジネス環境において、非常に大きなアドバンテージとなります。

データに基づいた課題を発見しやすくなる

二つ目のメリットは、営業プロセス全体が可視化され、データに基づいた客観的な課題分析と改善が可能になることです。

一人の営業担当者が全プロセスを担うモデルでは、成果が出ない原因がどこにあるのかを特定するのが困難でした。「Aさんは優秀だから売れる」「Bさんは最近スランプだ」といったように、問題が個人のスキルやコンディションに帰属させられがちで、組織的な改善策を講じにくいという課題がありました。

一方、The Modelでは、プロセスが「マーケティング → インサイドセールス → フィールドセールス → カスタマーサクセス」と明確に分かれています。そのため、各プロセスの移行地点における数値を計測することが容易になります。

例えば、以下のような指標を定点観測できます。

  • リードからMQLへの転換率
  • MQLからSQL(商談)への転換率
  • 商談から受注への転換率(受注率)
  • 受注からオンボーディング完了への移行率
  • 顧客の解約率

これらの数値を分析することで、「どこにボトルネック(滞留点)があるのか」が一目瞭然になります。

  • ケース1: リード数は多いが、MQLへの転換率が低い
    • 仮説: 獲得しているリードの質が低いのではないか? 広告のターゲティングがずれている、コンテンツの内容がターゲットに響いていない、といった可能性が考えられます。
    • 対策: 広告の出稿先やキーワードを見直す、ターゲット顧客のペルソナを再定義し、コンテンツを修正する。
  • ケース2: MQL数は十分だが、SQL(商談)への転換率が低い
    • 仮説: MQLの定義が甘い(マーケティング部門とインサイドセールス部門の認識がずれている)か、インサイドセールスのアプローチ手法やトークスキルに課題がある可能性が考えられます。
    • 対策: 両部門でMQLの定義をすり合わせる、インサイドセールスのトークスクリプトを見直す、成功事例を共有する研修を行う。
  • ケース3: 商談数は多いが、受注率が低い
    • 仮説: インサイドセールスが創出する商談の質が低い(とりあえずアポを取っているだけ)か、フィールドセールスの提案力・クロージング力に課題がある可能性が考えられます。
    • 対策: SQLの定義をより厳格にする、フィールドセールスの商談にインサイドセールスが同席して顧客の温度感を学ぶ、提案書のテンプレートを改善する。

このように、The Modelは営業活動を科学的な分析の対象とすることを可能にします。感覚や経験則に頼るのではなく、客観的なデータに基づいて課題を特定し、的確な打ち手を実行していく。このPDCAサイクルを回し続けることで、組織は継続的に進化し、成長していくことができるのです。

各部門の専門性を高められる

三つ目のメリットは、分業体制によって各担当者がそれぞれの分野のスペシャリストとして成長しやすくなることです。これにより、組織全体の能力が底上げされ、市場における競争優位性を築くことができます。

従来の営業職は、コミュニケーション能力、交渉力、資料作成能力、マーケティング知識など、幅広いスキルが求められるジェネラリスト的な側面が強い職種でした。もちろん、それ自体に価値はありますが、すべての領域で高い専門性を維持するのは非常に困難です。

The Modelを導入すると、各担当者は限定されたミッションに集中することになります。

  • マーケティング担当者は、最新のデジタルマーケティング手法、SEO、データ分析、コンテンツ作成のプロフェッショナルを目指します。
  • インサイドセールス担当者は、リモート環境でのコミュニケーション能力、顧客の課題を深く引き出すヒアリング力、簡潔に価値を伝える説明能力といった、非対面営業のスペシャリストとしてのスキルを磨きます。
  • フィールドセールス担当者は、大型案件をまとめる交渉力、複雑な課題に対するソリューション提案力、経営層に響くプレゼンテーション能力など、対面でのクロージングのプロとして専門性を高めます。
  • カスタマーサクセス担当者は、製品知識はもちろんのこと、顧客の業務を理解し、成功に導くコンサルティング能力、長期的な関係を築くリレーションシップマネジメント能力を深めていきます。

このように、キャリアパスが明確になり、各個人が目標を持ってスキルアップに取り組むことができます。企業としても、それぞれの分野で専門性の高い人材を育成しやすくなり、採用活動においても求める人物像を具体化しやすくなります。

専門性の高い人材が集まった組織は、顧客に対してより質の高い価値提供ができます。結果として顧客満足度が向上し、それが企業のブランドイメージや収益向上に直結します。個々の専門性の向上が、組織全体の競争力を強化する好循環を生み出すのです。

The Model(ザ・モデル)導入の3つのデメリット・注意点

部門間の連携不足や対立が起こりやすい、特定の部門に業務負担が偏る可能性がある、顧客体験が分断されるリスクがある

The Modelは多くのメリットをもたらす強力なフレームワークですが、万能薬ではありません。導入や運用を誤ると、かえって組織のパフォーマンスを低下させてしまうリスクもはらんでいます。ここでは、The Modelを導入する際に直面しがちな3つのデメリットや注意点について解説します。これらの課題を事前に理解し、対策を講じることが成功の鍵となります。

部門間の連携不足や対立が起こりやすい

The Modelが抱える最大のリスクは、分業体制の弊害として「部門間のサイロ化」が進行し、連携不足や対立が発生しやすくなることです。本来はスムーズなリレーで繋がるべき各部門が、壁で隔てられた孤島(サイロ)のようになってしまう現象です。

この問題は、各部門が自部門のKPI達成のみを追求し始めると顕著になります。

  • マーケティング部門は「MQLの数」を達成するために、質の低いリードを大量にインサイドセールスに流してしまうかもしれません。
  • インサイドセールス部門は、質の低いリードに疲弊し、「マーケティングが送ってくるリードは使えない」と不満を募らせます。一方で、「商談化数」というKPIを達成するために、顧客の状況を十分にヒアリングせず、無理やりアポイントを設定してフィールドセールスに渡してしまうかもしれません。
  • フィールドセールス部門は、確度の低い商談ばかりで疲弊し、「インサイドセールスのアポは質が悪い。自分でアポを取った方が早い」と考え始めます。
  • カスタマーサクセス部門は、フィールドセールスが契約を取るために過大な約束をしてしまい、契約後の「話が違う」というクレーム対応に追われるかもしれません。

このように、各部門が部分最適に走ると、部門間で責任のなすりつけ合いが始まり、組織全体の雰囲気は悪化します。そして何より、このプロセスのしわ寄せは、最終的に顧客が受けることになります。担当者が変わるたびに同じ説明を求められたり、部門間で言っていることが違ったりと、顧客体験は著しく損なわれ、企業の信頼を失うことにもなりかねません。

このサイロ化を防ぐためには、後述する「成功のポイント」で詳しく触れますが、全社共通の目標(KGI)の設定、部門横断での定期的な情報共有ミーティングの開催、CRM/SFAツールによる情報の一元化といった対策が不可欠です。

特定の部門に業務負担が偏る可能性がある

二つ目の注意点は、プロセス全体のバランス設計が不適切だと、特定の部門に業務が集中し、ボトルネックとなってしまう可能性があることです。The Modelは水の流れに例えられますが、パイプの太さが途中で極端に細くなっていると、水はそこで滞留し、うまく流れません。

例えば、以下のようなケースが考えられます。

  • マーケティングが強すぎるケース: マーケティング部門が非常に優秀で、毎月大量のMQLを生み出せるとします。しかし、インサイドセールス部門の人員が2名しかいない場合、到底すべてのMQLに対応することはできません。結果として、多くの有望なリードが誰にもアプローチされないまま放置され、大きな機会損失となります。
  • インサイドセールスが強すぎるケース: 逆に、インサイドセールス部門が次々と質の高い商談(SQL)を創出しても、フィールドセールス部門の人員が不足していれば、商談のスケジュールが数週間先になってしまったり、対応が追いつかなくなったりします。顧客の購買意欲が最も高いタイミングを逃してしまうかもしれません。
  • フィールドセールスが強すぎるケース: フィールドセールス部門が驚異的な受注率で契約を獲得し続けても、カスタマーサクセス部門のリソースが不足していれば、契約後のオンボーディングが滞り、顧客は「契約したはいいものの、どう使えばいいか分からない」と不満を抱え、早期解約につながるリスクが高まります。

このように、一部門だけが突出していても、全体の成果には結びつきません。The Modelを導入・運用する際には、自社のビジネスモデルや平均的な案件数を考慮し、各部門の人員配置やリソース配分を慎重に計画する必要があります。また、事業の成長に合わせて、ボトルネックになっている部門を特定し、柔軟にリソースを再配分していくマネジメントが求められます。

顧客体験が分断されるリスクがある

三つ目の注意点は、顧客視点に立ったとき、担当者が次々と変わることによる「体験の分断」を感じさせてしまうリスクがあることです。

企業側の論理では、各部門が専門性を発揮して効率的に対応しているつもりでも、顧客にとっては一貫性のない、煩わしい体験に感じられる可能性があります。

  • 「ホワイトペーパーをダウンロードしたら、マーケティング部門からメルマガが届くようになった」
  • 「しばらくしたら、インサイドセールス担当者から電話がかかってきて、課題をヒアリングされた」
  • 「商談が決まると、今度はフィールドセールス担当者が現れて、また同じようなことを聞かれた」
  • 「ようやく契約したら、次はカスタマーサクセス担当者です、と別の人から連絡が来た」

この引き継ぎの過程で、情報連携がスムーズに行われていないと、顧客は同じ話を何度も繰り返さなければならず、大きなストレスを感じます。「社内でちゃんと情報共有されていないのか?」と企業に対する不信感にもつながりかねません。

このリスクを回避するためには、CRM(顧客関係管理)システムなどを活用して、顧客に関するあらゆる情報(これまでのやり取り、ヒアリング内容、課題、担当者の所感など)を一元的に管理し、次の担当者がいつでも参照できる状態にしておくことが絶対条件です。

顧客は、企業を「マーケティング部」や「営業部」として見ているわけではなく、「〇〇社」という一つの人格として見ています。したがって、どの部門の誰が対応しても、まるで一人の担当者がずっと伴走してくれているかのような、シームレスで一貫性のある顧客体験を提供することを常に意識する必要があります。The Modelの分業制は、あくまで企業側の都合であり、その都合を顧客に感じさせてはならないのです。

The Model(ザ・モデル)を成功に導く5つのポイント

全社で共通の目標を持つ、部門間の情報共有と連携を徹底する、顧客中心の考え方を貫く、ツールを活用して情報を一元管理する、自社の状況に合わせてカスタマイズする

The Modelは、正しく導入・運用すれば企業の成長を加速させる強力なエンジンとなりますが、前述のようなデメリットも存在します。では、どうすればこれらの課題を乗り越え、The Modelを成功に導くことができるのでしょうか。ここでは、不可欠となる5つの重要なポイントを解説します。

全社で共通の目標を持つ

The Modelを成功させるための最も根本的なポイントは、各部門の個別KPIだけでなく、全社共通の最終目標(KGI: Key Goal Indicator)を共有し、全員がそこに向かって協力する意識を持つことです。

各部門が「MQL数」「商談化数」「受注数」「解約率」といった個別のKPIだけを追いかけると、部分最適に陥り、部門間の対立を生む原因になります。そこで、これらのKPIの上位にある、ビジネス全体のゴールを常に意識することが重要です。

共通の目標となり得るのは、「売上高」「利益」「LTV(顧客生涯価値)」といった、事業の成功そのものを表す指標です。

  • マーケティング部門は、「ただMQLを増やすのではなく、最終的な売上につながる質の高いMQLを増やす」という意識を持つようになります。
  • インサイドセールス部門は、「ただアポを取るのではなく、受注率が高く、LTVが高くなりそうな顧客の商談を創出する」という視点を持つようになります。
  • フィールドセールス部門は、「無理な値引きで契約を取るのではなく、適正な価格で、かつ顧客が成功できるような期待値調整を行った上で契約する」ことを目指します。
  • カスタマーサクセス部門は、「解約を防ぐだけでなく、顧客の成功を支援することでアップセルを促し、LTV向上に貢献する」という役割を自覚します。

このように、全部門が「自分たちの仕事が、最終的な会社の売上やLTVにどう貢献しているのか」を理解することで、自然と協力体制が生まれ、サイロ化を防ぐことができます。経営層は、この全社共通の目標を繰り返し伝え、組織全体に浸透させる役割を担う必要があります。

部門間の情報共有と連携を徹底する

部門間のサイロ化を防ぎ、スムーズな連携を実現するためには、意識の共有だけでなく、仕組みとして情報共有を徹底することが不可欠です。

  • 定期的な部門横断ミーティングの開催: 週に一度、あるいは月に一度、各部門の代表者が集まり、KPIの進捗、成功事例、失敗事例、課題などを共有する場を設けましょう。特に、各プロセスの「引き継ぎ」に関するフィードバックが重要です。インサイドセールスから「今週のMQLは質が高かった」、フィールドセールスから「先日の商談は顧客の課題が的確に捉えられていて提案しやすかった」といったポジティブなフィードバックは、担当者のモチベーションを高め、良い連携を促進します。逆に課題があれば、その場で原因を分析し、改善策を協議できます。
  • 相互の業務理解: 他の部門がどのような仕事をしているのかを知ることも重要です。例えば、フィールドセールスがインサイドセールスの架電に同席したり、マーケティング担当者がフィールドセールスの商談に同行したりすることで、お互いの苦労や工夫が理解でき、リスペクトが生まれます。
  • KPIの連動性を意識した評価制度: 個人の評価が自部門のKPIだけで決まるのではなく、関連する他部門の成果や、全社目標への貢献度も加味するような評価制度を設計することも有効です。

こうした地道な取り組みを通じて、部門間の壁を取り払い、「One Team」としての意識を醸成していくことが、The Model運用の鍵となります。

顧客中心の考え方を貫く

The Modelは、あくまで企業の営業・マーケティング活動を効率化するための「手段」です。その目的は「顧客の成功」であり、それを通じた「LTVの最大化」であることを、決して忘れてはなりません。

業務効率やKPI達成を優先するあまり、顧客不在の議論に陥ってしまうことがあります。「このリードはMQLの定義に合わないから対応しない」「この商談は確度が低いから後回しにする」といった判断が、企業の都合だけで行われていないか、常に自問自答する必要があります。

組織のあらゆる意思決定の場面で、「この判断は、顧客にとって最高の体験を提供することにつながるか?」という問いを投げかけることが重要です。

  • Webサイトのコンテンツは、本当に顧客の課題解決に役立っているか?
  • インサイドセールスのアプローチは、顧客にとって有益な情報提供になっているか?
  • フィールドセールスの提案は、顧客の成功を第一に考えたものか?
  • カスタマーサクセスの支援は、顧客を真の成功に導けているか?

また、顧客からのフィードバックを積極的に収集し、それを各プロセスの改善に活かす仕組みを構築することも不可欠です。NPS®(ネットプロモータースコア)などの顧客満足度調査を定期的に実施し、その結果を全部門で共有し、改善のアクションプランに繋げていきましょう。顧客の声こそが、The Modelを改善していく上で最も信頼できる羅針盤となります。

ツールを活用して情報を一元管理する

部門間の連携を円滑にし、顧客体験の分断を防ぐためには、MA、SFA、CRMといったツールを導入し、顧客に関するあらゆる情報を一元的に管理することが、もはや必須条件と言えます。

これらのツールが連携したプラットフォームがあれば、以下のようなことが可能になります。

  • ある顧客が「どの広告を見て」「どのページを閲覧し」「どのホワイトペーパーをダウンロードしたか」(MAの情報)
  • 「インサイドセールスといつ、どのような会話をしたか」(SFA/CRMの情報)
  • 「現在どのような課題を持っていて、商談がどのフェーズにあるか」(SFAの情報)
  • 「契約後、どのような問い合わせをして、どう活用しているか」(CRM/カスタマーサポートツールの情報)

これらの情報がすべて一つのシステムに時系列で記録されていれば、担当者が変わっても、顧客のこれまでの経緯を瞬時に把握できます。 これにより、顧客に同じ説明を繰り返させるような事態を防ぎ、スムーズで質の高いコミュニケーションを実現できます。

また、データが一元化されることで、各プロセスの転換率などのKPI分析も正確かつ容易に行えるようになり、データに基づいた改善活動を加速させることができます。ツールの導入にはコストがかかりますが、The Modelを本格的に運用する上では、必要不可欠な投資と考えるべきです。

自社の状況に合わせてカスタマイズする

最後に、The Modelはセールスフォース社の成功事例から生まれたモデルですが、それをそのまま自社にコピー&ペーストしてもうまく機能するとは限りません。自社の事業内容、商材の価格帯、ターゲット顧客、企業規模、組織文化といった状況に合わせて、柔軟にカスタマイズすることが重要です。

  • 商材による違い: 数千円の低価格なSaaSであれば、フィールドセールスを置かず、インサイドセールスがクロージングまで行う「インサイドセールス完結型」のモデルが効率的な場合があります。一方、数千万円の大型システムであれば、フィールドセールスの役割がより重要になり、アカウントエグゼクティブと呼ばれる特定の大口顧客専任の担当者を置くことも考えられます。
  • 組織規模による違い: 少人数のスタートアップでは、一人の担当者がマーケティングとインサイドセールスを兼任するなど、役割を柔軟に組み合わせる必要があるかもしれません。最初から完璧な4部門体制を目指すのではなく、まずはマーケティングとセールスを分けるところから始め、事業の成長に合わせて徐々に分業体制を進化させていく「スモールスタート」のアプローチが現実的です。

The Modelは完成された設計図ではなく、あくまで思考のフレームワークです。自社にとって最適な形は何かを常に問い続け、試行錯誤を繰り返しながら、独自の「The Model」を創り上げていく姿勢が、成功のためには不可欠なのです。

The Model(ザ・モデル)の運用に役立つツール3種

The Modelを円滑に運用し、その効果を最大化するためには、テクノロジーの活用が欠かせません。特に「MA」「SFA」「CRM」と呼ばれる3種類のツールは、The Modelの各プロセスを支える基盤となります。ここでは、それぞれのツールの役割と、代表的な製品をいくつか紹介します。
(※ここに記載する情報は、各公式サイトを参照した一般的な特徴であり、機能や料金プランの詳細は変更される可能性があるため、導入検討時には必ず公式サイトで最新情報をご確認ください。)

MA(マーケティングオートメーション)

MA(Marketing Automation)ツールは、その名の通り、マーケティング活動を自動化・効率化するためのツールです。The Modelの起点となる「マーケティング」部門において、見込み客(リード)の獲得から育成、選別までの一連のプロセスを支援します。

主な機能:

  • リード管理: 獲得したリードの情報を一元管理。
  • Webサイト行動追跡: 誰がどのページを閲覧したかをトラッキング。
  • メールマーケティング: シナリオに基づいたメールの自動配信。
  • スコアリング: リードの行動に応じて点数を付け、見込み度合いを可視化。
  • フォーム・LP作成: 資料請求などのための入力フォームやランディングページを作成。

HubSpot Marketing Hub

インバウンドマーケティングの思想を提唱したHubSpot, Inc.が提供するMAツールです。CRMプラットフォームを基盤とし、ブログ作成、SEO、SNS連携など、コンテンツマーケティングに必要な機能がオールインワンで揃っているのが特徴です。無料のCRMツールから始められるため、スモールスタートしやすい点も魅力です。(参照:HubSpot Japan株式会社 公式サイト)

Adobe Marketo Engage

アドビ株式会社が提供するMAツールで、特にBtoBマーケティングにおいて世界的に高い評価を得ています。精緻なターゲティングやパーソナライゼーション、顧客の行動履歴に基づいた複雑なシナリオ設計、ABM(アカウントベースドマーケティング)機能などが充実しており、エンタープライズ(大企業)レベルでの高度なマーケティング活動に向いています。(参照:アドビ株式会社 公式サイト)

SATORI

SATORI株式会社が提供する国産のMAツールです。最大の特徴は、まだ個人情報が特定できていない匿名のWebサイト訪問者(アンノウンリード)に対しても、ポップアップ表示などでアプローチできる機能を持つ点です。日本のビジネス環境に合わせたUI/UXで、導入後のサポートも手厚いと評価されています。(参照:SATORI株式会社 公式サイト)

SFA(営業支援システム)

SFA(Sales Force Automation)は、営業部門の活動を支援し、生産性を向上させるためのシステムです。The Modelにおいては、特に「インサイドセールス」と「フィールドセールス」の活動管理に大きく貢献します。

主な機能:

  • 顧客情報管理: 企業や担当者の情報を管理。
  • 商談・案件管理: 商談の進捗状況、フェーズ、受注確度などを可視化。
  • 活動管理: 営業担当者の訪問履歴や電話、メールのやり取りを記録。
  • 予実管理: 売上目標に対する実績をリアルタイムで把握。
  • レポート・分析機能: 営業活動のデータを分析し、レポートを自動作成。

Salesforce Sales Cloud

株式会社セールスフォース・ジャパンが提供する、SFA/CRM市場のリーディング製品です。The Modelの提唱元でもあり、その思想が製品設計に深く根付いています。豊富な機能、高いカスタマイズ性、外部アプリケーションとの連携性(AppExchange)に優れ、あらゆる業種・規模の企業で導入されています。(参照:株式会社セールスフォース・ジャパン 公式サイト)

Senses

株式会社マツリカが提供するSFAツールです。AIが営業活動のデータを分析し、「次の最適なアクション」をサジェストしてくれる点が大きな特徴です。また、メールやカレンダーと連携して活動記録を自動で入力するなど、営業担当者の入力負担を軽減する工夫がされており、現場での定着しやすさが追求されています。(参照:株式会社マツリカ 公式サイト)

e-セールスマネージャー

ソフトブレーン株式会社が提供する純国産のSFAです。1999年から提供されている老舗で、日本の営業スタイルや商習慣を熟知した製品設計が特徴です。導入後の定着率の高さを強みとしており、専任のサポートチームによる手厚い支援体制が評価されています。(参照:ソフトブレーン株式会社 公式サイト)

CRM(顧客関係管理システム)

CRM(Customer Relationship Management)は、顧客との関係を管理し、良好な関係を長期的に維持・向上させるためのシステムです。SFAが「商談」にフォーカスするのに対し、CRMは契約後の顧客フォローも含めた「顧客」とのあらゆる接点を管理します。The Modelにおいては、全部門の情報を一元化するハブとなり、特に「カスタマーサクセス」部門の活動基盤となります。

主な機能:

  • 顧客情報の一元管理: 属性、購買履歴、問い合わせ履歴などを統合。
  • 問い合わせ管理: 電話やメールでの問い合わせ内容を一元管理し、対応状況を追跡。
  • ナレッジベース構築: よくある質問とその回答をデータベース化し、共有。
  • アンケート機能: 顧客満足度調査などを実施。

Salesforce Service Cloud

株式会社セールスフォース・ジャパンが提供する、カスタマーサービスとカスタマーサクセスに特化したCRM製品です。電話、メール、チャット、SNSなど、多様なチャネルからの問い合わせを一元管理する「オムニチャネル」対応に強みを持ちます。AIによる自動応答や、適切な担当者への振り分け機能も充実しています。(参照:株式会社セールスフォース・ジャパン 公式サイト)

kintone

サイボウズ株式会社が提供する、プログラミングの知識がなくても自社の業務に合わせたシステム(アプリ)を簡単に作成できるクラウドサービスです。顧客管理リストや案件管理、問い合わせ管理、日報など、The Modelの運用に必要な様々なデータベースを、自社に合わせて柔軟に構築できる点が魅力です。(参照:サイボウズ株式会社 公式サイト)

Zoho CRM

Zoho Corporationが提供するCRM製品です。中小企業でも導入しやすい手頃な価格帯でありながら、非常に豊富な機能を提供している点が特徴です。CRM機能だけでなく、SFAやMAの機能も統合されており、オールインワンのプラットフォームとして活用できます。40種類以上のアプリケーション群「Zoho One」との連携も強力です。(参照:ゾーホージャパン株式会社 公式サイト)

The Model(ザ・モデル)に関するよくある質問

The Modelについて学ぶ中で、多くの人が抱く疑問があります。ここでは、特に頻繁に寄せられる2つの質問について、分かりやすく回答します。

The Modelとカスタマージャーニーの違いは何ですか?

「The Model」と「カスタマージャーニー」は、どちらも顧客の購買プロセスに関連する概念であるため混同されがちですが、両者は「視点」と「目的」が根本的に異なります。

The Model(ザ・モデル) カスタマージャーニー
視点 企業視点 顧客視点
目的 企業がどのように顧客にアプローチし、収益を最大化するかの「業務プロセス・分業体制」 顧客がどのように製品を認知し、購買に至るかの「思考・感情・行動のプロセス」
表現 組織図やプロセスフロー図 マップ形式(ジャーニーマップ)
役割 顧客に伴走するための「企業の仕組み」 顧客の行動や心理を理解するための「地図」

カスタマージャーニーとは、顧客視点の「地図」です。
一人のペルソナ(典型的な顧客像)が、自社の製品やサービスを「認知」し、「興味・関心」を持ち、「情報収集・比較検討」を行い、「購買」し、その後の「利用」や「推奨」に至るまでの一連の道のりを旅(ジャーニー)に例えたものです。この旅の各段階で、顧客が何を考え、何を感じ、どのような行動をとるのかを時系列で可視化したものが「カスタマージャーニーマップ」です。これは、顧客のインサイトを深く理解するために用いられます。

The Modelとは、企業視点の「伴走の仕組み」です。
カスタマージャーニーという地図の上を旅している顧客に対して、企業側がどのタイミングで、どの部門が、どのようにアプローチし、関係を構築していくかを設計したフレームワークです。

  • 顧客が「情報収集」の段階にいれば、マーケティング部門が有益なコンテンツを提供します。
  • 顧客の関心が高まった段階で、インサイドセールス部門が対話を開始します。
  • 顧客が「比較検討」の最終段階に入れば、フィールドセールス部門が具体的な提案を行います。
  • 顧客が「利用」の段階に入れば、カスタマーサクセス部門が成功を支援します。

つまり、両者は対立する概念ではなく、密接に連携する補完関係にあります。優れたカスタマージャーニーマップを描き、顧客の行動や心理を深く理解することができて初めて、効果的なThe Model(企業の伴走体制)を設計することができるのです。先に顧客の「地図」を理解し、その上で自社の「仕組み」を最適化していく、という順序が重要です。

The Modelはどのような企業に向いていますか?

The Modelは非常に強力なフレームワークですが、すべての企業に等しく適しているわけではありません。その特性から、特に導入効果が高い企業と、そうでない企業、あるいは導入に工夫が必要な企業が存在します。

The Modelの導入に特に向いている企業の特徴:

  • BtoBビジネス、特にSaaSなどのサブスクリプション型ビジネスモデルの企業: The Modelは、LTV(顧客生涯価値)の最大化を重視する思想に基づいており、契約後の継続利用やアップセルが収益の柱となるサブスクリプションビジネスとは非常に相性が良いです。
  • 高関与商材を扱う企業: 製品の価格が高額であったり、導入の意思決定が複雑であったり、顧客が購入前に十分な情報収集と比較検討を行うような商材(例:基幹システム、産業機械、コンサルティングサービスなど)は、The Modelの各プロセスが効果的に機能します。
  • 営業プロセスをデータに基づいて改善したい企業: 感覚や経験則に頼った営業から脱却し、各プロセスのKPIを可視化・分析して、科学的に営業組織を強化していきたいという志向を持つ企業に向いています。
  • 営業プロセスの標準化と属人化の解消を目指す企業: 特定のスタープレイヤーに依存するのではなく、誰が担当しても一定の成果が出せるような、再現性の高い仕組みを構築したい企業にとって、The Modelは有効な解決策となります。

The Modelの導入が難しい、あるいは工夫が必要な企業の特徴:

  • 店舗での対面販売が中心のBtoCビジネス: スーパーマーケットやアパレル店舗のように、顧客がその場で短時間で購買を決定するような業態では、The Modelのような多段階の分業プロセスは適合しにくいです。
  • 非常に単価が低く、検討期間が短い商材: 顧客がほとんど検討せずに購入するような低価格・低関与商材の場合、マーケティングからカスタマーサクセスまでの重厚なプロセスを構築すると、コストに見合わない可能性があります。
  • 創業期で人員が極端に少ないスタートアップ: 全員で数名しかいないような組織では、物理的に4部門に分けることは困難です。このフェーズでは、一人が何役もこなす方が効率的です。ただし、将来的な組織拡大を見据えて、The Modelの思想(プロセスの分離や情報管理)を意識しながら業務を行うことは非常に有益です。

結論として、The Modelは「顧客との長期的な関係構築を通じてLTVを向上させることが事業成長の鍵となるビジネスモデル」に最も適したフレームワークであると言えるでしょう。自社のビジネスの特性をよく理解した上で、導入の是非やカスタマイズの方向性を検討することが重要です。