企業が持続的に成長するためには、自社の製品やサービス、そして企業自体の価値を社会に正しく伝え、良好な関係を築くことが不可欠です。その中核を担うのが「PR(パブリックリレーションズ)」活動です。しかし、専門的な知識やノウハウ、メディアとのネットワークが必要となるPR活動を、自社リソースだけで効果的に行うのは容易ではありません。
そこで多くの企業が活用するのが「PR会社」です。PR会社は、広報・PR活動のプロフェッショナル集団であり、企業のコミュニケーション課題を解決するための強力なパートナーとなり得ます。
本記事では、PR会社の基本的な役割から広告代理店との違い、具体的な業務内容、費用相場、そして失敗しない選び方のポイントまでを網羅的に解説します。さらに、2024年の最新情報に基づき、強みや特徴別に分類したおすすめのPR会社25選もご紹介します。この記事を読めば、自社の目的や課題に最適なPR会社を見つけ、PR活動を成功に導くための具体的な道筋が見えるはずです。
目次
PR会社とは?広告代理店との違いも解説
PR活動を外部に委託しようと考えたとき、まず頭に浮かぶのが「PR会社」と「広告代理店」かもしれません。両者は企業のコミュニケーション活動を支援するという点では共通していますが、その目的、手法、役割は大きく異なります。この違いを正しく理解することが、効果的なパートナー選びの第一歩です。
PR会社とは
PR会社とは、企業や団体が、そのステークホルダーと良好な関係を築くためのコミュニケーション活動を専門的に支援する会社です。PRとは「Public Relations(パブリックリレーションズ)」の略であり、直訳すると「公衆との関係」を意味します。ここでいうステークホルダーとは、顧客や消費者だけでなく、株主、従業員、取引先、金融機関、地域社会、政府・行政機関、そしてメディアなど、企業活動に関わるあらゆる人々や組織を指します。
PR会社の主な目的は、広告のように直接的な販売促進を行うことではありません。むしろ、メディアやオピニオンリーダーといった第三者を通じて情報を発信してもらうことで、社会的な信頼性や評判(レピュテーション)を高め、企業のブランド価値を中長期的に向上させることにあります。
具体的には、クライアント企業の現状分析からPR戦略を立案し、メディアへの情報提供(メディアリレーションズ)、プレスリリースの作成・配信、記者発表会の企画・運営、SNSやオウンドメディアを活用したデジタルPR、さらには不祥事や事故が発生した際の危機管理広報まで、コミュニケーションに関する幅広い業務を請け負います。
つまりPR会社は、単なる「情報発信代行業者」ではなく、クライアント企業の経営課題や事業目標を深く理解し、コミュニケーションの力でその達成をサポートする「戦略的パートナー」であるといえるでしょう。
PR会社と広告代理店の違い
PR会社と広告代理店は、どちらも企業のメッセージを世の中に届ける役割を担いますが、そのアプローチは根本的に異なります。両者の違いを理解するために、目的、手法、情報の信頼性、コントロール性、費用の観点から比較してみましょう。
比較項目 | PR会社 | 広告代理店 |
---|---|---|
目的 | ステークホルダーとの良好な関係構築、信頼性・評判の向上、合意形成 | 商品・サービスの販売促進、短期的な認知度向上 |
手法 | メディア露出(パブリシティ)の獲得、メディアリレーションズ、コンテンツマーケティング、イベント企画 | テレビCM、新聞・雑誌広告、Web広告などの広告枠を買い付けて情報を発信する |
情報伝達の主体 | メディアやジャーナリストといった「第三者」 | 企業(広告主)自身 |
情報の信頼性 | 第三者の客観的な視点で報じられるため、生活者からの信頼性が高い | 広告として認識されるため、信頼性は相対的に低い |
コントロール性 | 掲載の可否や内容はメディアの編集権に委ねられるため、コントロール性は低い | 費用を支払って広告枠を購入するため、表現や掲載時期のコントロール性が高い |
費用 | 業務に対する対価(リテナーフィー、プロジェクトフィー) | 広告媒体費と、その手数料 |
最大の違いは、情報が「誰の視点」で語られるかという点にあります。
広告代理店が扱う「広告」は、企業が費用を支払って広告枠を買い、自社のメッセージを直接的に消費者へ届けます。テレビCMやWebバナー広告を思い浮かべると分かりやすいでしょう。メッセージの内容や表現、掲載するタイミングなどを企業側が完全にコントロールできる反面、受け手からは「企業の宣伝」として認識されるため、一方的な情報と捉えられがちです。
一方、PR会社が目指す「パブリシティ」は、メディアにニュースとしての価値を認めてもらい、新聞記事やテレビのニュース番組、Webメディアの記事などで「報道」として取り上げてもらうことを指します。情報は記者や編集者といった第三者の客観的な視点を通して発信されるため、広告に比べて生活者からの信頼性が格段に高くなります。しかし、あくまでニュース価値があるかどうかの判断はメディア側に委ねられているため、企業側が内容や掲載タイミングをコントロールすることはできません。
例えば、新しいシャンプーを発売する場合を考えてみましょう。
- 広告代理店のアプローチ: テレビCMや人気女性誌の広告ページ、SNS広告などを活用して、「新発売!驚きのツヤ髪へ」といったキャッチコピーで商品の魅力を大々的にアピールし、ドラッグストアでの購入を促します。
- PR会社のアプローチ: 新開発の成分が持つ社会的な意義(例:環境に配慮したサステナブルな原料)や、開発担当者の苦労話などをストーリーとしてまとめ、美容専門誌やWebメディアに情報提供します。その結果、編集部が「今注目のサステナブル美容アイテム」といった切り口で、記事として商品を紹介してくれることを目指します。
近年では、PRと広告の領域は融合しつつあり、両方の手法を組み合わせた統合的なコミュニケーション戦略が重要になっています。PR会社の中にも広告領域を扱う会社があったり、その逆もあったりしますが、中長期的な信頼関係の構築やブランディングを重視するならPR会社、短期的な売上向上や集中的な認知獲得を目指すなら広告代理店が、それぞれの強みを発揮しやすいといえるでしょう。
PR会社の主な業務内容
PR会社が提供するサービスは多岐にわたります。ここでは、多くのPR会社が共通して手掛ける主要な業務内容を7つに分けて、それぞれ具体的に解説します。自社が抱える課題を解決するために、どの業務を依頼する必要があるのかを考える際の参考にしてください。
PR戦略の立案・設計
PR戦略の立案・設計は、すべてのPR活動の土台となる最も重要な業務です。これなくして、場当たり的な情報発信を繰り返しても、期待する成果を得ることはできません。PR会社は、クライアント企業のビジネスを深く理解することから始めます。
具体的には、以下のようなプロセスで戦略を構築していきます。
- 現状分析・課題抽出: 3C分析(自社・競合・市場)やSWOT分析などを用いて、クライアント企業の置かれている状況を客観的に把握します。「自社の強みは何か」「競合と比べて何が足りないか」「社会のトレンドや市場機会はどこにあるか」といった点を洗い出し、コミュニケーション上の課題を明確にします。
- 目的・目標(KGI/KPI)設定: PR活動を通じて何を達成したいのか、具体的なゴールを設定します。例えば、「新製品の認知度を半年で30%向上させる」「BtoB領域での専門家としてのブランドイメージを確立する」「企業のサステナビリティ活動への共感を高める」といった目的(KGI)を定めます。さらに、その達成度を測るための指標(KPI)として、「主要メディアでの掲載数」「Webサイトへのオーガニック流入数」「ポジティブな口コミの件数」などを設定します。
- ターゲット・キーメッセージ策定: 「誰に、何を伝えたいのか」を定義します。ターゲットとなるオーディエンスの属性やインサイトを分析し、彼らに最も響くであろう中核的なメッセージ(キーメッセージ)を開発します。このメッセージは、あらゆるPR活動において一貫して発信されるべき指針となります。
- アクションプランの策定: 設定した目標を達成するために、どのような手法(メディアリレーションズ、SNS、イベントなど)を、どのタイミングで実施していくのか、具体的な年間の活動計画や施策スケジュールに落とし込みます。
このように、PR会社は専門的なフレームワークと客観的な視点を用いて、感覚的・属人的になりがちな広報活動を、測定可能で再現性のある「戦略」へと昇華させる役割を担います。
メディアリレーションズの構築
メディアリレーションズとは、テレビ、新聞、雑誌、Webメディアといった媒体の記者や編集者と、長期的で良好な信頼関係を築くための活動です。PR会社にとって、このメディアとの強固なネットワークは最も価値のある資産の一つといえます。
単にプレスリリースを送るだけでなく、日常的なコミュニケーションを通じて、各メディアの特性や報道姿勢、担当記者の関心事を深く理解します。そして、そのメディアや記者が「ニュースとして取り上げたい」と思うような切り口で、適切なタイミングで情報を提供します。
具体的な活動としては、以下のようなものが挙げられます。
- メディアリストの構築・管理: クライアントの業界やテーマに合わせて、アプローチすべきメディアと担当記者をリストアップし、常に最新の状態に保ちます。
- 日常的な情報提供・意見交換: 新しいネタがない時でも、業界の動向やトレンドについて情報交換を行うことで、記者が困ったときに「相談できる相手」としてのポジションを確立します。
- メディアプロモート(キャラバン): プレスリリース配信後などに、特に重要なメディアを個別訪問し、情報の背景や意義を直接説明して記事化を働きかけます。
- 記者発表会・懇親会の開催: 新製品や経営戦略など、大きなニュースを発表する際に記者を集めて説明会を実施したり、関係を深めるための懇親会を企画したりします。
- 個別取材のセッティング: メディアからの取材依頼に対応し、経営者や担当者へのインタビューを調整します。
自社でゼロからメディアとの関係を築くには膨大な時間と労力がかかりますが、PR会社に依頼することで、彼らが長年かけて培ってきたリレーションを即座に活用できる点が大きなメリットです。
プレスリリースの作成・配信
プレスリリースは、企業がメディアに向けて公式情報を発表するための基本的なツールです。新商品・新サービスの発表、イベントの告知、業務提携、調査結果の報告、人事異動など、企業活動に関する様々な事柄がプレスリリースの対象となります。
PR会社は、単に情報をまとめるだけでなく、メディアの目に留まり、記事化されやすい「ニュース価値」の高いプレスリリースを作成するノウハウを持っています。
- ニュースバリューの創出: 企業が伝えたい事実の中から、社会性、新規性、意外性、時事性といったニュースの切り口を見つけ出し、ストーリーを構築します。
- 魅力的なタイトルの作成: 記者が一瞬で内容を理解し、興味を引くようなキャッチーなタイトルを考案します。
- 分かりやすい構成: 結論を先に述べ、5W1H(いつ、どこで、誰が、何を、なぜ、どのように)を明確に記述するなど、記者が記事を書きやすい構成で作成します。
- 客観的な表現: 主観的な形容詞や広告的な表現を避け、事実に基づいた客観的な言葉で記述します。
- 補足資料の準備: 高解像度の写真や、より詳細なデータ、関連情報などを添付し、記事化をサポートします。
作成したプレスリリースは、前述のメディアリレーションズで構築したメディアリストに基づき、最も効果的なタイミングで各メディアに配信されます。
Web・SNSを活用したデジタルPR
スマートフォンの普及により、人々の情報収集の手段はテレビや新聞といった従来のマスメディアから、WebサイトやSNSへと大きくシフトしています。この変化に対応するため、デジタル領域でのPR活動は現代において不可欠なものとなっています。
PR会社は、以下のようなデジタルPR施策を企画・実行します。
- オウンドメディアのコンテンツ企画・制作: 企業の公式ブログやウェブマガジンなどで、ターゲットの興味関心を引く質の高いコンテンツ(記事、コラム、導入事例など)を継続的に発信し、専門性や信頼性を高めます。SEO(検索エンジン最適化)を意識したコンテンツ作りも行います。
- ソーシャルメディア(SNS)運用: X(旧Twitter)、Instagram、Facebook、TikTokなどの企業公式アカウントの運用戦略を立案し、コンテンツの企画・投稿、コメントへの対応、キャンペーンの実施などを代行します。各SNSの特性に合わせたコミュニケーションで、ファンとのエンゲージメントを高めます。
- Webメディアリレーションズ: 影響力の高いニュースサイトや専門ブログ、オンラインマガジンなどとの関係を構築し、記事広告(ネイティブアド)の出稿や、純粋なパブリシティの獲得を目指します。
- オンラインイベント: ウェビナー(オンラインセミナー)やインスタライブなどを企画・運営し、場所を問わず多くのターゲットと接点を作ります。
デジタルPRは、情報の拡散スピードが速く、効果測定がしやすいというメリットがあります。マスメディアとデジタルメディアを組み合わせることで、より広範で多角的なコミュニケーションが可能になります。
PRイベントの企画・運営
PRイベントは、メディア関係者やインフルエンサー、一般消費者を実際に招待し、商品やサービスを直接体験してもらったり、企業のメッセージを伝えたりするための重要な機会です。
- 記者発表会・製品発表会: 新商品や新戦略などをメディアに向けて大々的に発表します。多くのメディアに集まってもらい、一斉に情報が報道されることで、大きな話題化を狙います。
- 体験会・タッチ&トライイベント: 実際に製品に触れてもらい、その良さを実感してもらうことで、より具体的で熱量の高い記事や口コミが生まれることを期待します。
- 展示会・セミナー: 業界関係者や潜在顧客に向けて、専門的な情報を提供し、リード獲得や商談の機会を創出します。
PR会社は、イベントのコンセプト設計から、会場選定、招待状の作成・送付、当日の進行管理、メディア対応、そしてイベント後のフォローアップまで、全てのプロセスを一貫してサポートします。話題性を高めるためのタレントや専門家のキャスティングも行います。
インフルエンサーPR
インフルエンサーPRは、特定の分野で大きな影響力を持つインフルエンサー(YouTuber、インスタグラマー、ブロガーなど)に自社の製品やサービスを紹介してもらう手法です。
広告色が薄く、ファンからの信頼が厚いインフルエンサーの言葉を通じて情報を届けることで、ターゲット層にダイレクトかつ効果的にアプローチできます。
PR会社の役割は以下の通りです。
- インフルエンサーの選定: 企業のブランドイメージや商品のターゲット層と親和性の高いインフルエンサーを、フォロワー数だけでなく、エンゲージメント率や過去の投稿内容などを分析してリストアップします。
- 企画・交渉: 商品を提供するだけのギフティング、報酬を支払って投稿を依頼するタイアップ、イベントへの招待など、目的に合わせた施策を企画し、インフルエンサーや所属事務所と交渉します。
- ディレクション・効果測定: 投稿内容について、景品表示法やステルスマーケティング規制に抵触しないよう監修し、投稿後のインプレッション数やエンゲージメント数などの効果を測定・報告します。
危機管理広報(リスク対応)
企業活動には、製品の不具合、情報漏洩、従業員の不祥事、SNSでの炎上など、様々なリスクが伴います。こうしたクライシス(危機)が発生した際に、企業の受けるダメージを最小限に抑え、信頼を回復するためのコミュニケーション活動が危機管理広報です。
有事の際の対応のまずさが、企業の存続を揺るがす事態に発展するケースも少なくありません。PR会社は、冷静かつ専門的な視点で危機対応を支援します。
- 平時の備え: 想定されるリスクシナリオの洗い出し、クライシス発生時の対応マニュアルの作成、メディアトレーニング(模擬記者会見)の実施など、事前に備えを固めます。
- 有事の対応: クライシス発生後、迅速な事実確認をサポートし、謝罪会見のシナリオ作成、想定問答集の準備、メディアからの問い合わせ対応などを一括して行います。SNSでのモニタリングや、沈静化に向けた情報発信も支援します。
危機管理広報は、事が起きてから慌てて対応するのではなく、平時から準備しておくことが極めて重要です。
海外PR
グローバルに事業を展開する企業にとって、海外市場でのPR活動は成功の鍵を握ります。しかし、国や地域によって文化、商習慣、メディア環境、法規制などが大きく異なるため、日本と同じやり方が通用するとは限りません。
海外PRを得意とするPR会社は、以下のようなサービスを提供します。
- 海外市場に合わせたPR戦略の立案: 現地の市場調査を行い、文化やトレンドを理解した上で、ターゲットに響くコミュニケーション戦略を設計します。
- 海外メディアとのリレーションズ: 現地の主要メディアやジャーナリストとのネットワークを活用し、パブリシティ獲得を目指します。
- プレスリリースの翻訳・配信: 日本語のプレスリリースを、単に直訳するのではなく、現地の文化や表現に合わせてローカライズし、適切なメディアに配信します。
- 現地PR代理店との連携: 現地のPR代理店とパートナーシップを結び、より地域に根差した活動を展開します。
PR会社の種類
PR会社と一言でいっても、その規模や得意分野は様々です。自社の目的や規模に合った会社を選ぶために、まずはどのような種類のPR会社が存在するのかを把握しておきましょう。一般的に、PR会社は「総合PR会社」「専門PR会社」「独立・個人系のPR会社」の3つに大別できます。
種類 | 特徴 | メリット | デメリット | こんな企業におすすめ |
---|---|---|---|---|
総合PR会社 | 幅広い業界・業種に対応。PRに関する全業務をワンストップで提供。 | 大規模な組織力、豊富な人材、幅広いメディアネットワーク、実績の多さ。 | 費用が高額になる傾向がある。担当者が細分化されやすい。 | 大手企業、全国規模の大型キャンペーン、複数の課題を抱える企業。 |
専門PR会社 | 特定の業界(IT、医療など)や領域(デジタル、危機管理など)に特化。 | 深い専門知識、業界特有のメディアとの強固なコネクション。 | 対応領域が限られる。専門外の依頼は不得意な場合がある。 | 専門性の高い商材を扱う企業、ターゲットが明確なBtoB企業。 |
独立・個人系のPR会社 | 代表者個人のスキルや経験、ネットワークが強み。小規模で柔軟。 | フットワークが軽い、スピーディーな対応、代表者が直接担当することが多い、比較的安価な場合がある。 | 対応できる業務量や領域に限界がある。代表者の力量に依存する。 | スタートアップ、ベンチャー企業、中小企業、特定の業務をピンポイントで依頼したい企業。 |
総合PR会社
総合PR会社は、特定の業界や手法に偏ることなく、あらゆる業種のクライアントに対して、PRに関する包括的なサービスを提供する大規模なPR会社です。多くの場合、長い歴史と豊富な実績を持ち、国内のPR業界を牽引する存在となっています。
最大の強みは、その組織力とリソースの豊富さです。多数のPRプランナーやコンサルタントが在籍しており、テレビ、新聞、雑誌、Webといったあらゆるメディアとの幅広いリレーションを構築しています。そのため、大規模なプロモーションや全国展開のキャンペーン、あるいは複数の事業領域にまたがる複雑なコミュニケーション課題にも、ワンストップで対応することが可能です。
戦略立案からメディアリレーションズ、イベント運営、デジタルPR、危機管理広報まで、社内の専門チームが連携してプロジェクトを進める体制が整っています。大手企業がコーポレートブランディング全体を任せたり、新製品のローンチに際して大々的なPRキャンペーンを実施したりする際に、その総合力が発揮されます。
ただし、その分、費用は高額になる傾向があります。また、組織が大きいために、プロジェクトの担当者が細分化され、意思疎通に時間がかかるケースも考えられます。
専門PR会社
専門PR会社は、「IT・テクノロジー」「医療・ヘルスケア」「ファッション・ビューティー」「BtoB」「金融・IR」といった特定の業界や、「デジタルPR」「インフルエンサーマーケティング」「危機管理広報」といった特定の領域に特化しているPR会社です。
最大の強みは、その分野における深い専門知識と、特有のネットワークです。例えば、IT専門のPR会社であれば、最新の技術トレンドを深く理解しており、テクノロジー系の専門メディアや業界に影響力を持つジャーナリストと強固な関係を築いています。医療専門のPR会社であれば、薬機法などの関連法規に精通し、医療専門誌や医師コミュニティへのアプローチを得意としています。
このように、専門用語が飛び交う業界や、ターゲットとなるメディアが限定的な場合に、その真価を発揮します。総合PR会社では難しい、ニッチで専門的な文脈での情報発信を的確に行うことができます。
一方で、得意分野以外のPR活動については対応が難しい場合があります。自社が依頼したい領域と、そのPR会社の専門性が完全に一致しているかを見極めることが重要です。
独立・個人系のPR会社
独立・個人系のPR会社は、大手PR会社や事業会社の広報部で経験を積んだ実力者が、独立して立ち上げた比較的小規模な会社やフリーランスのPRプランナーを指します。ブティック型PR会社とも呼ばれます。
最大の強みは、フットワークの軽さと柔軟性です。代表者自身が豊富な経験とスキル、そして個人的なメディアネットワークを持っていることが多く、クライアントの課題に対してスピーディーかつ密なコミュニケーションで対応してくれます。代表者が直接フロントに立って担当してくれるケースも多く、意思決定が速いのが特徴です。
また、大手と比べて固定費が少ないため、比較的リーズナブルな料金で依頼できる場合もあります。リソースが限られているスタートアップや中小企業、あるいは「プレスリリース作成だけ」「特定のメディアへのアプローチだけ」といったように、特定の業務をピンポイントで依頼したい場合に非常に頼りになる存在です。
ただし、対応できる案件の規模や業務量には限りがあります。また、良くも悪くも代表者や担当者個人の力量に依存する部分が大きいため、その人のスキルや実績、そして自社との相性を慎重に見極める必要があります。
PR会社に依頼する4つのメリット
自社で広報担当者を置くのではなく、外部のPR会社に業務を委託することには、多くのメリットが存在します。専門知識の活用から業務負担の軽減まで、企業がPR会社を活用することで得られる主な4つの利点を解説します。
① 専門的な知見とノウハウを活用できる
PR会社に依頼する最大のメリットは、PRに関する専門的な知識と長年培われてきたノウハウをすぐに活用できる点にあります。効果的なPR活動には、社会のトレンドを読み解く力、ニュース価値を創出する企画力、メディアの特性を理解したアプローチ方法、そして効果を測定し次につなげる分析力など、多岐にわたるスキルが求められます。
これらのスキルを社内の人材だけで、特に広報の専任担当者がいない企業で身につけるのは非常に困難です。手探りでPR活動を進めた結果、時間とコストを浪費し、全く成果が出ないというケースも少なくありません。
PR会社には、様々な業界で数多くの成功事例・失敗事例を経験してきたプロフェッショナルが揃っています。
- 「どのような情報がニュースとして取り上げられやすいのか」
- 「このターゲット層には、どのメディアで、どんな切り口のメッセージが響くのか」
- 「SNSで話題を生むためには、どのような企画が必要か」
こうした問いに対して、過去のデータや経験に基づいた、成功確率の高い戦略と具体的な戦術を提案してくれます。 自社では思いもよらなかったようなPRの切り口や、新たなメディア活用のアイデアを得られることも多く、PR活動の質を飛躍的に向上させることが可能です。
② 豊富なメディアとのコネクションを利用できる
PR活動の成果を大きく左右するのが、メディアとの関係性、すなわち「メディアリレーションズ」です。影響力のあるメディアに記事として取り上げてもらうためには、単にプレスリリースを送るだけでは不十分です。日頃から記者や編集者とコミュニケーションを取り、信頼関係を築いておくことが極めて重要になります。
しかし、広報担当者がいない、あるいは経験の浅い企業が、ゼロから多種多様なメディアと良好な関係を構築するには、膨大な時間と労力、そして忍耐が必要です。どのメディアのどの記者にアプローチすれば良いのかさえ、分からない場合がほとんどでしょう。
PR会社は、長年の活動を通じて、テレビ、新聞、雑誌、Webメディアなど、様々な媒体の記者や編集者、ディレクターと強固なネットワークを築いています。 これはPR会社の最も価値のある無形資産の一つです。PR会社に依頼することで、この貴重なコネクションをすぐに活用できます。
彼らは、単に連絡先を知っているだけでなく、「この記者は今、こんなテーマに関心を持っている」「この雑誌の編集方針はこうだから、こういう切り口の情報が喜ばれる」といった、内情にまで踏み込んだ知識を持っています。このため、自社の情報を最も効果的に記事化してくれる可能性の高いメディアへ、的確にアプローチすることができます。
③ 客観的な視点でのPR戦略を立てられる
企業内部の人間は、自社の製品やサービスに対して強い思い入れがある一方で、その魅力や価値を客観的に見ることが難しくなりがちです。社内では「当たり前」とされていることや、専門的すぎると感じている技術的な特徴が、実は社会的に見れば非常にユニークでニュース価値の高い「宝の山」であることも少なくありません。
しかし、内部の視点だけでは、こうしたPRのネタに気づけなかったり、世の中の関心事からずれた「独りよがり」なメッセージを発信してしまったりする危険性があります。
PR会社という外部の専門家が入ることで、第三者の客観的な視点から自社を分析してもらえます。彼らは、社会のトレンドや競合の動向、生活者のインサイトといった広い文脈の中で、自社の立ち位置や強みを冷静に評価し、「世の中に響くストーリー」として再定義してくれます。
例えば、BtoBの部品メーカーが「当社の製品は耐久性が高い」とだけアピールしていても、なかなかニュースにはなりません。しかし、PR会社が「その高い耐久性が、インフラの長寿命化に貢献し、社会全体の維持コスト削減と環境負荷低減につながる」という社会的な文脈を付与することで、経済誌や業界紙が取り上げやすい魅力的なストーリーに昇華させることができるのです。このように、客観的な視点を取り入れることで、PR活動の成功確率を高めることができます。
④ 社内のPR業務の負担を軽減できる
広報・PR活動は、戦略立案からプレスリTリースの作成、メディアへのアプローチ、取材対応、イベントの準備、SNSの投稿、効果測定と多岐にわたり、非常に手間のかかる業務です。特に中小企業やスタートアップでは、専任の広報担当者を置く余裕がなく、社長やマーケティング担当者、時には営業担当者が他の業務と兼任しているケースがほとんどです。
その結果、日々の業務に追われ、PR活動に十分な時間を割くことができず、中途半半端な状態で終わってしまうことが少なくありません。
PR会社に業務を委託することで、こうした煩雑な実務から解放され、社内のリソースを本来注力すべきコア業務(製品開発、営業活動、経営戦略の策定など)に集中させることができます。
メディアリストの作成や電話でのアプローチといった地道な作業、イベント当日の煩雑な運営、SNSへの日々の投稿などをプロに任せることで、社内の担当者はPR会社との戦略的な打ち合わせや、社内情報の提供といった、より本質的な役割に時間を使えるようになります。結果として、会社全体の生産性を向上させることにも繋がります。
PR会社に依頼する3つのデメリット
PR会社への依頼は多くのメリットがある一方で、当然ながらデメリットや注意すべき点も存在します。コストの問題やノウハウの蓄積、コミュニケーションの手間など、契約後に「こんなはずではなかった」と後悔しないために、事前に把握しておくべき3つのデメリットを解説します。
① 外部委託のコストがかかる
最も分かりやすいデメリットは、当然ながら外部委託のための費用が発生することです。PR会社の料金は、契約形態や業務範囲によって大きく異なりますが、継続的に支援を依頼するリテナー契約の場合、月額数十万円から百万円以上かかるのが一般的です。これは、特に予算の限られる中小企業やスタートアップにとっては、決して小さな負担ではありません。
このコストを「投資」と捉えられるかどうかが重要になります。PR活動の成果は、広告のように売上への直接的な貢献がすぐに見えにくい場合が多く、中長期的なブランド価値の向上や信頼性の構築といった、数値化しにくい効果が中心となります。そのため、短期的な費用対効果(ROI)だけで判断すると、「コストがかかるばかりで効果がない」と感じてしまうリスクがあります。
依頼する際には、あらかじめPR活動にかけられる予算を明確にし、その範囲内で最大限の成果を出してくれるパートナーを選ぶ必要があります。「安いから」という理由だけで実績の乏しい会社を選んでしまうと、結局何も成果が出ずに費用だけが無駄になるという最悪のケースも考えられます。コストと、得られるであろう専門性やノウハウの価値を天秤にかけ、慎重に判断することが求められます。
② 社内にPRのノウハウが蓄積されにくい
PR会社に業務を「丸投げ」してしまうと、社内のPR業務負担は軽減されますが、その一方で、自社内にPRに関する知識やスキル、経験が全く蓄積されないという大きな問題が生じます。
PR会社との契約が終了した途端、メディアとの関係も途切れ、プレスリリースの書き方も分からず、再びPR活動がゼロからのスタートになってしまう可能性があります。これでは、継続的な資産となるはずのPR活動が、単発のコストで終わってしまいます。また、PR会社の担当者が交代した際に、引き継ぎがうまくいかず、それまでの関係性がリセットされてしまうリスクも考えられます。
このデメリットを回避するためには、PR会社を単なる「外注先」としてではなく、「PRの先生」や「チームの一員」として捉え、積極的に関与していく姿勢が不可欠です。定例会議には必ず出席し、戦略立案のプロセスやメディアへのアプローチ方法を学び、レポートの内容を鵜呑みにせず、不明点を質問する。そして、PR会社と一緒に行った活動の成果や学びを、社内の資産として記録・共有していく。
こうした能動的な関わり方をすることで、外部の専門知識を自社に吸収し、将来的に広報部門を内製化するための礎を築くことができます。
③ 認識のすり合わせに手間と時間がかかる
PR会社はPRのプロフェッショナルですが、あなたの会社の事業内容や製品、企業文化、業界特有の事情については、最初は素人です。そのため、PR活動を本格的に開始する前に、自社のビジネスを深く理解してもらうためのコミュニケーションに、相応の手間と時間が必要になります。
- 自社の創業ストーリーや経営理念は何か
- 製品やサービスの強み、開発の背景にある想いは何か
- ターゲット顧客は誰で、どのような課題を抱えているのか
- 業界の構造や競合との関係性はどうなっているのか
- 社内で使われる専門用語の意味は何か
こうした情報を、ヒアリングや資料提供を通じて、PR会社の担当者に根気よく伝え、インプットしてもらう必要があります。この初期段階でのすり合わせが不十分だと、企業の意図とは異なる方向性のメッセージが発信されたり、メディアからの質問に担当者が的確に答えられなかったりといった、ミスマッチが生じる原因となります。
また、活動開始後も、定期的なミーティングを通じて、進捗状況の共有や方針の確認を密に行う必要があります。このコミュニケーションコストを面倒に感じてしまうと、両者の間に認識のズレが生まれ、効果的なPR活動は望めません。信頼できるパートナーシップを築くためには、こうした地道なコミュニケーションを厭わない覚悟が必要です。
PR会社の費用相場と料金体系
PR会社への依頼を検討する上で、最も気になるのが費用でしょう。PR会社の料金体系は主に3種類あり、それぞれに費用相場が異なります。自社の目的や予算に合わせて、最適な契約形態を理解することが重要です。
PR会社の料金体系は3種類
PR会社の料金体系は、大きく分けて「リテナー契約」「スポット契約」「成果報酬型契約」の3つに分類されます。
① リテナー契約
リテナー契約は、月額固定料金で、一定期間(通常は6ヶ月〜1年)にわたり継続的にPR業務を委託する契約形態です。中長期的な視点で企業のブランド価値向上やメディアリレーションズの構築を目指す場合に最も一般的に用いられます。
業務範囲は契約時に「戦略コンサルティングのみ」「プレスリリース作成・配信代行まで」「イベント運営やSNS運用も含む」といった形で具体的に取り決めます。毎月定額の費用で、PRに関する相談や実務を継続的にサポートしてもらえるため、社内に広報部門がない企業が「外部の広報部」としてPR会社を活用するのに適しています。 安定したパートナーシップを築きやすいのが特徴です。
② スポット契約
スポット契約は、プロジェクトベース契約とも呼ばれ、特定の目的や期間が限定された業務に対して、個別に料金を支払う契約形態です。
例えば、「新製品発表会の企画・運営」「特定のキャンペーン期間中の集中PR」「プレスリリース1本の作成と配信」といったように、単発の業務を依頼する場合に利用されます。必要な時に必要な分だけ専門家の力を借りられるため、柔軟性が高く、コストを抑えやすいのがメリットです。
ただし、関係性が単発で終わるため、企業の深い理解に基づいた継続的なPR活動には向きません。目的が非常に明確で、期間が限定的な施策を実施したい場合に適した契約形態です。
③ 成果報酬型契約
成果報酬型契約は、「テレビ番組で1回紹介されたらいくら」「Webメディアに1記事掲載されたらいくら」といったように、あらかじめ定めた成果(アウトプット)に応じて費用が発生する契約形態です。
依頼する企業側にとっては、成果が出なければ費用が発生しないため、リスクが低く見えるかもしれません。しかし、この契約形態を導入しているPR会社は非常に少ないのが現状です。なぜなら、前述の通り、メディア掲載はPR会社の努力だけでコントロールできるものではなく、メディア側の判断に委ねられる不確実性の高いものだからです。
また、「掲載されればどこでも良い」ということになりやすく、掲載の質(メディアの影響力や記事の論調など)が担保されにくいというデメリットもあります。特定の成果を強く求める場合に選択肢の一つにはなりますが、トラブルにも繋がりやすいため、契約内容を慎重に確認する必要があります。
契約形態別の費用相場
PR会社に依頼する際の費用は、会社の規模や依頼する業務内容によって大きく変動します。以下に、契約形態別の一般的な費用相場を示しますが、あくまで目安としてお考えください。
契約形態 | 業務内容の例 | 費用相場 |
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リテナー契約 | スタートアップ・中小企業向け ・PR戦略コンサルティング ・プレスリリース作成・配信(月1〜2本) ・基本的なメディアリレーションズ |
月額 30万円 〜 70万円 |
中堅・大手企業向け ・上記に加え、 ・複数領域でのPR活動 ・SNS運用代行 ・危機管理広報コンサルティング |
月額 70万円 〜 150万円以上 | |
スポット契約 | ・プレスリリース1本の作成・配信 ・記者発表会の企画・運営 ・メディアリストの作成 |
・5万円 〜 15万円 (リリース1本) ・50万円 〜 300万円以上 (発表会) ・10万円 〜 30万円 (リスト作成) |
成果報酬型契約 | ・Webメディアへの記事掲載 ・テレビ番組での紹介 |
・5万円 〜 20万円 (Webメディア1件) ・50万円 〜 300万円以上 (テレビ1件) |
【注意点】
- 上記はあくまで業務委託費であり、イベント会場費、タレントのキャスティング費、交通費、通信費などの実費は別途請求されることがほとんどです。
- 会社の規模(大手かブティックか)や担当者のスキルレベルによっても料金は変動します。
- 最終的な費用は、必ず複数の会社から見積もりを取り、業務範囲と照らし合わせて比較検討することが重要です。
失敗しないPR会社の選び方6つのポイント
数多くのPR会社の中から、自社に最適なパートナーを見つけ出すのは簡単なことではありません。ここでは、PR会社選びで失敗しないために、必ずチェックすべき6つの重要なポイントを解説します。
① PRを依頼する目的や課題を明確にする
PR会社に相談する前に、まず自社内で「何のためにPRを行うのか」「PR会社に何を解決してほしいのか」を明確に言語化しておくことが、全てのスタートラインです。目的が曖昧なままでは、PR会社も的確な提案ができず、契約後の活動評価もできません。
以下のように、できるだけ具体的に目的を整理してみましょう。
- 認知度向上: 「半年以内に、主力商品Aのターゲット層における認知度を20%向上させたい」
- ブランディング: 「IT業界における『AI活用のリーディングカンパニー』というイメージを定着させたい」
- 販売促進: 「新サービスBのローンチに合わせてメディア露出を増やし、Webサイトからの問い合わせ件数を月50件にしたい」
- 採用強化: 「企業の魅力や働きがいを発信し、エンジニア職の応募者数を前年比150%にしたい」
- 危機管理: 「SNSでの炎上リスクに備え、対応マニュアルを整備し、社内体制を構築したい」
このように目的を具体化することで、どのような強みを持つPR会社(総合型か専門型か、など)を探すべきか、その方向性が自ずと見えてきます。
② 自社の業界・分野での実績は豊富か
PR活動の成否は、業界知識や専門性に大きく左右されます。特に、医療、金融、IT、不動産といった専門性の高い業界では、その業界特有の商習慣や専門用語、キーとなるメディアやジャーナリストが存在します。
そのため、自社が属する業界や、扱っている商材の分野で、豊富な実績を持つPR会社を選ぶことが非常に重要です。
- 公式サイトの実績ページを確認する: どのようなクライアントと、どのようなプロジェクトを行ってきたかを確認します。同業他社の実績があれば、有力な候補となります。
- 問い合わせ時に直接質問する: Webサイトに掲載されているのは実績の一部です。問い合わせや商談の際に、「弊社の〇〇という業界での実績はありますか?」と具体的に尋ねてみましょう。過去の成功事例だけでなく、どのような課題に直面し、どう乗り越えたかといったプロセスまで聞けると、その会社の力量がより深く理解できます。
業界実績が豊富な会社は、業界内のメディアとのコネクションも強く、より効果的なアプローチが期待できます。
③ 依頼したい業務内容に対応しているか
ひとくちにPR会社といっても、その得意領域は様々です。自社が依頼したいと考えている業務内容と、PR会社の提供するサービスや強みが合致しているかを確認する必要があります。
例えば、
- WebやSNSでの情報拡散を重視したいのに、伝統的なマスメディアとのリレーションズが中心の会社に依頼しても、期待する成果は得られません。この場合は、デジタルPRやSNSマーケティングに強みを持つ会社を選ぶべきです。
- 海外展開を視野に入れているのであれば、海外PRの実績や海外拠点、現地パートナーとのネットワークを持つ会社が必須です。
- BtoB向けの専門的なPRを求めているなら、BtoBマーケティングの知見が豊富な会社が適しています。
PR会社の提案を受ける際には、「どのような手法で我々の目的を達成しようとしているのか」を具体的に確認し、その手法が自社のニーズと合っているか、そしてその会社がその手法を得意としているのかを冷静に見極めましょう。
④ 料金体系は明確で予算に合っているか
費用はパートナー選びの重要な要素です。まずは自社でPR活動に投じられる予算の上限を明確にしておきましょう。その上で、複数のPR会社から見積もりを取ることをお勧めします。
見積もりを比較する際は、単に金額の大小だけでなく、その内訳を精査することが重要です。
- 業務範囲は明確か: 月額料金の中に、どこからどこまでの業務が含まれているのか(例:プレスリリースの作成本数、定例会の頻度、レポートの内容など)を詳細に確認します。
- 追加料金の有無: 契約料金以外に、どのような場合に別途費用が発生するのか(例:交通費や通信費などの実費、イベント実施時の制作費など)を事前に確認しておきましょう。「後から次々と追加料金を請求された」というトラブルを避けるためです。
料金体系が明瞭で、こちらの質問に対して誠実に説明してくれる会社は、信頼できるパートナーである可能性が高いといえます。
⑤ 担当者との相性は良いか
PR活動は、自社の担当者とPR会社の担当者が二人三脚で進めていくプロジェクトです。そのため、担当者との相性は、成果を出す上で極めて重要な要素になります。どんなに会社の実績が素晴らしくても、担当者とのコミュニケーションが円滑でなければ、プロジェクトはうまく進みません。
契約前の商談やプレゼンテーションの際には、以下の点をチェックしましょう。
- 熱意と理解度: 自社のビジネスに本当に興味を持ち、成功させたいという熱意が感じられるか。こちらの話を真摯に聞き、事業内容を深く理解しようと努めてくれるか。
- コミュニケーションのしやすさ: レスポンスは迅速か。専門用語を分かりやすく説明してくれるか。質問しやすい雰囲気か。
- 人柄・価値観: 長期的なパートナーとして、信頼できる人柄か。
可能であれば、契約前に、実際にプロジェクトを担当する予定のメンバーと面談させてもらうことを強くお勧めします。営業担当者と実務担当者が異なるケースは多いため、実際に一緒に仕事をする人のスキルや人柄を確認しておくことが、後のミスマッチを防ぎます。
⑥ 契約形態は適切か
最後に、自社の状況や目的に合った契約形態を提案してくれるかどうかも確認しましょう。
- 中長期的なブランディングや継続的な情報発信が目的なら、安定した関係を築ける「リテナー契約」が適しています。
- 新製品のローンチや単発のイベントなど、目的と期間が明確な場合は「スポット契約」の方がコストを抑えられます。
悪質なケースでは、本来スポット契約で十分な内容であるにもかかわらず、長期のリテナー契約を勧めてくることも考えられます。なぜその契約形態を勧めるのか、その理由を明確に説明してくれる会社を選びましょう。また、契約期間や更新の条件、中途解約時の規定など、契約書の細かい部分もしっかりと確認しておくことが大切です。
【2024年最新】おすすめのPR会社25選
ここでは、2024年最新の情報に基づき、数あるPR会社の中から特におすすめの25社を「総合力」「Web・デジタル領域」「特定業界特化」「スタートアップ・ベンチャー向け」の4つのカテゴリに分けてご紹介します。
※掲載されている情報は、各社の公式サイトなどを基に作成しています。
【総合力】でおすすめのPR会社10選
幅広い業界に対応し、PRに関するあらゆるサービスをワンストップで提供できる、実績豊富な大手PR会社です。
① 株式会社ベクトル
国内最大手のPR会社グループ。「モノを広めるプロフェッショナル」を標榜し、戦略的なPRとアドテクノロジーなどを掛け合わせたコミュニケーション戦略を得意とします。国内外に多数の拠点を持ち、アジアNo.1のPRグループとしても知られています。
(参照:株式会社ベクトル公式サイト)
② サニーサイドアップグループ
「たのしいさわぎをおこす」をモットーに、ユニークで話題性の高いPRを数多く手掛けてきたことで有名。スポーツ選手や文化人のマネジメントも行い、エンターテインメント領域に強い影響力を持ちます。企業のPR戦略からブランドコンサルティングまで幅広く対応します。
(参照:株式会社サニーサイドアップグループ公式サイト)
③ プラップジャパン株式会社
1970年創業の歴史ある独立系PR会社。コミュニケーション・コンサルティングを事業の中核に据え、メディアリレーションズからデジタル、危機管理まで高品質なサービスを提供。特に企業の評判管理(レピュテーション・マネジメント)に定評があります。
(参照:プラップジャパン株式会社公式サイト)
④ 共同ピーアール株式会社
日本で最も歴史のあるPR会社の一つ。報道機関出身者も多く在籍し、伝統的なメディアリレーションズに強みを持ちます。長年の実績に裏打ちされた安定感と、IRや危機管理広報などコーポレートコミュニケーション領域での高い専門性が特徴です。
(参照:共同ピーアール株式会社公式サイト)
⑤ 株式会社オズマピーアール
博報堂DYグループの総合PR会社。グループの強みを活かし、広告やマーケティングと連動した統合コミュニケーションを得意とします。ヘルスケア、コーポレート、生活者向けPRなど、各分野に専門チームを擁しています。
(参照:株式会社オズマピーアール公式サイト)
⑥ 株式会社井之上パブリックリレーションズ
「自己修正モデル」という独自のPR理論を提唱し、日本にパブリックリレーションズの概念を根付かせた草分け的存在。倫理観を重視した正統派のPRを実践し、特に官公庁や大手企業の信頼が厚い会社です。
(参照:株式会社井之上パブリックリレーションズ公式サイト)
⑦ 株式会社電通PRコンサルティング
電通グループのPR会社。グループが持つ膨大なデータやマーケティング知見を活かした、科学的で戦略的なPRプランニングが強みです。「PRのデジタルトランスフォーメーション」を掲げ、データ分析に基づくコミュニケーション設計を得意としています。
(参照:株式会社電通PRコンサルティング公式サイト)
⑧ 株式会社マテリアル
「MAKE NEW PR」を掲げ、ストーリーテリングを軸にしたブランドビルディングを得意とするPR会社。従来のPRの枠にとらわれない、クリエイティブで新しい形のコミュニケーションを創出することに長けています。
(参照:株式会社マテリアル公式サイト)
⑨ ビルコム株式会社
「統合型PR」を提唱し、WebマーケティングとPRを融合させたアプローチが特徴。独自のPR効果測定ツール「PR Analyzer」を開発・提供しており、データに基づいた効果の可視化と改善提案に強みを持ちます。
(参照:ビルコム株式会社公式サイト)
⑩ 株式会社カーツメディアワークス
戦略PRとコンテンツマーケティングを掛け合わせた「コンテンツPR」が強み。ターゲットに「自分ごと化」してもらえるような質の高いコンテンツを企画・制作し、メディア露出とWeb上での拡散を両立させる手法を得意としています。
(参照:株式会社カーツメディアワークス公式サイト)
【Web・デジタル領域に強い】PR会社7選
SNS、インフルエンサー、動画、SEOなど、Webを中心としたデジタルコミュニケーションを得意とするPR会社です。
① 株式会社hypex
デジタルPRとSNSマーケティングを主軸に、戦略立案から実行までをワンストップで提供。特に若年層をターゲットとしたTikTokやInstagramでのプロモーション、インフルエンサーマーケティングに豊富な実績を持ちます。
(参照:株式会社hypex公式サイト)
② 株式会社EnGAWA
日本企業の海外向けデジタルマーケティング・PR支援に特化。海外のインフルエンサーネットワークや、多言語でのコンテンツ制作能力を活かし、日本の魅力を世界に発信するサポートを行っています。
(参照:株式会社EnGAWA公式サイト)
③ 株式会社ネタもと
「メディア」と「企業」を繋ぐ、広報・PR支援のプラットフォームサービス「ネタもと」を運営。メディア関係者が登録するプラットフォームを通じて、企業が直接プレスリリース配信やメディアプロモートを行えるユニークなサービスを展開しています。
(参照:株式会社ネタもと公式サイト)
④ 株式会社フロントステージ
IT・Web業界に特化したPR会社でありながら、特にスタートアップからメガベンチャーまで、企業の成長ステージに合わせたデジタルPR戦略を得意としています。経営者のブランディングや採用広報にも強みを持ちます。
(参照:株式会社フロントステージ公式サイト)
⑤ アウル株式会社
博報堂DYグループの一員で、デジタル領域を起点としたPRを手掛けています。動画やSNSを活用したバズマーケティングや、ファクトデータを基にした情報開発など、世の中の話題を創出するクリエイティブな企画力に定評があります。
(参照:アウル株式会社公式サイト)
⑥ 株式会社シグナル
ベクトルグループに属し、WebPRやSNSマーケティングを中心に事業を展開。SEOやWeb広告の知見も持ち合わせており、PRと連動させた総合的なデジタルマーケティング戦略の立案・実行が可能です。
(参照:株式会社シグナル公式サイト)
⑦ 株式会社PLAN-B
SEO事業で培った知見を活かしたWebマーケティング全般に強みを持つ会社。インフルエンサーマーケティングツール「Cast Me!」の運営も行っており、データドリブンなデジタルPR施策を得意としています。
(参照:株式会社PLAN-B公式サイト)
【特定業界に特化】専門PR会社5選
特定の業界における深い知識と専門的なネットワークを強みとするPR会社です。
① 株式会社アンティル (IT/Web)
プラップジャパンのグループ会社で、IT・テクノロジー分野に特化したPRコンサルティングを提供。複雑な技術やサービスを分かりやすく社会に伝える翻訳力と、IT専門メディアとの強固なリレーションが強みです。
(参照:株式会社アンティル公式サイト)
② 医療ピーアール株式会社 (医療)
医療・ヘルスケア分野に特化して50年以上の歴史を持つ老舗PR会社。薬機法などの専門知識に精通し、医療従事者や患者、一般生活者など、多様なステークホルダーに向けた的確なコミュニケーション戦略を立案します。
(参照:医療ピーアール株式会社公式サイト)
③ 株式会社アネティ (IT/Tech)
IT・ハイテク分野専門のPR会社。BtoBのニッチな技術や製品でも、その価値を的確にメディアに伝え、記事化に繋げる高い専門性を持ちます。外資系IT企業の日本市場向けPR支援にも豊富な実績があります。
(参照:株式会社アネティ公式サイト)
④ フロンティアコンサルティング株式会社 (不動産)
不動産業界に特化したPR・広告会社。デベロッパーから仲介、管理会社まで、不動産に関わるあらゆる企業のブランディングや販売促進をサポート。業界特有の市況やトレンドを捉えたPR戦略が強みです。
(参照:フロンティアコンサルティング株式会社公式サイト)
⑤ 株式会社ファッションヘッドライン (ファッション)
ファッション・ビューティー業界に特化したPRエージェンシー。自社でWebメディア「FASHION HEADLINE」を運営しており、メディア視点を持ったPR戦略が特徴。業界内のネットワークも豊富です。
(参照:株式会社ファッションヘッドライン公式サイト)
【スタートアップ・ベンチャー向け】PR会社3選
リソースの限られるスタートアップやベンチャー企業の特性を理解し、成長フェーズに合わせた柔軟な支援を行うPR会社です。
① 株式会社ベンチャー広報
その名の通り、ベンチャー・スタートアップ企業専門のPR支援会社。資金調達や事業提携、採用強化など、企業の成長ステージに応じた広報戦略を、リーズナブルな料金体系で提供しています。
(参照:株式会社ベンチャー広報公式サイト)
② 株式会社STORYTIME
スタートアップや新しい事業の「0→1」「1→10」フェーズのPRを得意とするブティック型PR会社。代表者をはじめとするメンバーが、クライアントと密に連携し、事業の根幹からストーリーを共創していくスタイルが特徴です。
(参照:株式会社STORYTIME公式サイト)
③ Wantedly株式会社
ビジネスSNS「Wantedly」を運営する同社は、採用広報に特化したソリューションを提供しています。企業のビジョンやカルチャー、働く人の魅力をストーリーとして発信し、共感を軸とした採用(エンゲージメント採用)を支援します。
(参照:Wantedly株式会社公式サイト)
PR会社の活用効果を最大化する3つのコツ
優れたPR会社と契約するだけでは、PR活動は成功しません。依頼する企業側の関わり方が、その成果を大きく左右します。ここでは、PR会社の力を最大限に引き出し、活用効果を最大化するための3つの重要なコツを紹介します。
① 目的・ゴールを具体的に共有する
これはPR会社を選ぶ段階だけでなく、契約後の活動期間中においても常に意識すべき最も重要なポイントです。PR会社は、あなたの会社の事業を成功させるためのパートナーであり、その羅針盤となるのが明確な目的とゴールです。
- 定性的な目的と定量的な目標(KGI/KPI)を共有する: 「ブランドイメージを良くしたい」といった曖昧な目的だけでなく、「主要ビジネス誌での経営者インタビュー掲載」「製品サイトへのオーガニック検索からの月間流入数5,000件」といった具体的な目標を共有し、常に同じゴールを目指している状態を作ります。
- 事業戦略や状況の変化を速やかに共有する: 新しい競合が現れた、主力製品の戦略を変更した、新たな資金調達を目指しているなど、自社のビジネス状況に変化があった場合は、すぐにPR会社に共有しましょう。彼らはその変化を踏まえて、PR戦略を柔軟に軌道修正してくれます。
PR会社を「社外の広報部」として扱い、常に最新の社内情報にアクセスできる状態にしておくことが、的確なPR活動につながります。
② PR会社に丸投げせず協力体制を築く
PR会社に業務を委託したからといって、すべてを「丸投げ」にしてはいけません。これは、社内にノウハウが蓄積されないだけでなく、PR活動の質そのものを低下させる原因になります。最高のPR活動は、クライアント企業とPR会社との「共創」によって生まれます。
- 社内の情報提供に協力する: PRの「ネタ」は社内に眠っています。製品開発の裏話、ユニークな経歴を持つ社員、社会貢献活動、お客様から届いた感動的な声など、PR会社が知らない情報を積極的に提供しましょう。「こんなことはニュースにならないだろう」と自己判断せず、どんな些細な情報でも共有することが、思わぬPRの切り口に繋がることがあります。
- 取材対応に協力する: メディアからの取材依頼が入った際、社内のキーパーソンのスケジュール調整や、取材場所の確保、資料の準備などを迅速に行う必要があります。この社内調整がスムーズに進まないと、せっかくのメディア露出の機会を逃してしまうことになりかねません。
- 承認プロセスを迅速化する: プレスリリースやSNS投稿の原稿など、PR会社が作成したコンテンツの確認・承認作業を迅速に行いましょう。情報の鮮度が重要なPRにおいて、社内の承認プロセスで時間がかかり、発信のタイミングを逃すのは大きな損失です。
PR会社を「便利な外注先」ではなく、「共に戦うチームの一員」として尊重し、主体的に協力する姿勢が成功の鍵を握ります。
③ 定期的な情報共有と連携を密にする
良好なパートナーシップを維持し、PR活動を継続的に改善していくためには、密なコミュニケーションが不可欠です。
- 定例ミーティングを有効活用する: 多くのPR会社は週次や月次での定例ミーティングを設けています。この場を、単なる活動報告を受ける場にしてはいけません。レポートの内容について、「この結果の背景にある要因は何か?」「次はこの数値を改善するために何をすべきか?」といった踏み込んだ議論を行いましょう。活動の成果だけでなく、業界のトレンドや競合の動きについても情報交換し、次の戦略に活かしていくことが重要です。
- 成果を共に評価し、次の一手を考える: 設定したKPIの達成度を定期的に評価し、成功要因と失敗要因を分析します。うまくいった施策はなぜ成功したのかを言語化して再現性を高め、うまくいかなかった施策はなぜ失敗したのかを学びとし、改善策を共に考えます。
- 感謝とフィードバックを伝える: メディア掲載が実現した際など、良い成果が出たときには、担当者に感謝の意を伝えましょう。良好な人間関係は、担当者のモチベーションを高め、より良いパフォーマンスを引き出します。逆に、改善してほしい点があれば、建設的なフィードバックとして率直に伝えることも、長期的な関係構築のためには必要です。
このような地道で密な連携を続けることで、PR会社はあなたの会社のビジネスへの理解を深め、より精度の高いPR活動を展開できるようになります。
まとめ
本記事では、PR会社の基本的な役割から広告代理店との違い、具体的な業務内容、費用相場、そして自社に最適なパートナーを見つけるための選び方まで、幅広く解説しました。
PR会社は、単にメディア露出を獲得するだけの存在ではありません。企業と社会との良好な関係を築き、信頼という無形の資産を育てることで、事業の持続的な成長を支える戦略的パートナーです。広告が短期的な販売促進を得意とするのに対し、PRは第三者の視点を通じた情報発信によって、中長期的なブランド価値やレピュテーションを構築することに強みを持ちます。
数あるPR会社の中から自社に最適な一社を選ぶためには、以下のポイントを意識することが重要です。
- PRを依頼する目的を明確にする
- 自社の業界・分野での実績を確認する
- 依頼したい業務内容と会社の強みが合致しているかを見極める
- 料金体系と予算のバランスを考える
- 担当者との相性を重視する
そして、優れたPR会社と契約した後も、決して「丸投げ」にせず、目的や情報を常に共有し、主体的に協力する姿勢を持つことが、その効果を最大化する鍵となります。
PRは、一朝一夕で成果が出るものではありません。しかし、信頼できるパートナーと共に、戦略的かつ継続的に取り組むことで、広告だけでは得られない大きな価値を企業にもたらしてくれます。この記事が、あなたの会社にとって最高のPRパートナーを見つけるための一助となれば幸いです。まずは自社の課題と目的を整理することから始めてみてはいかがでしょうか。