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コンサルティングに必要な英語力とは?TOEICスコアの目安と勉強法

コンサルティングに必要な英語力とは?、TOEICスコアの目安と勉強法

コンサルティング業界への転職やキャリアアップを考える際、多くの人が「英語力はどの程度必要なのか?」という疑問を抱きます。グローバル化が進む現代ビジネスにおいて、英語力はコンサルタントの市場価値を左右する重要なスキルの一つです。しかし、具体的にどのような場面で、どのレベルの英語力が求められるのか、そしてどうすれば効率的にそのスキルを習得できるのか、明確なイメージを持つのは難しいかもしれません。

この記事では、コンサルタントに英語力が必要とされる背景から、具体的な業務シーン、ファームの種類による必要度の違い、そして目指すべきTOEICスコアの目安と効果的な学習法まで、網羅的に解説します。英語力に自信がない方でも、この記事を読めば、コンサルタントとして活躍するために必要な英語力と、そこに至るまでの道筋を具体的に理解できるでしょう。

そもそもコンサルタントに英語力は必要か?

グローバル案件へアサインされる機会が増える、海外オフィスへ転籍できるチャンスがある、転職市場での市場価値が向上する

コンサルタントという職業に関心を持ったとき、多くの人が直面する最初の壁が「語学力」かもしれません。特にグローバルなイメージが強いこの業界では、「英語ができないと話にならないのではないか」と不安に思う方も少なくないでしょう。この章では、まずその根源的な問いに答えていきます。

結論:必須ではないが、英語力があるとキャリアの選択肢が広がる

まず結論から述べると、コンサルタントになるために英語力は「絶対必須」の条件ではありません。実際に、英語をほとんど使うことなく、国内案件を中心に活躍しているコンサルタントも数多く存在します。特に日系のコンサルティングファームや、クライアントが日本の企業や官公庁に限定されているプロジェクトでは、日本語でのコミュニケーションと分析能力が最も重要視されます。

しかし、これはあくまで「必須ではない」という話です。英語力があれば、コンサルタントとしてのキャリアの可能性が格段に広がることは間違いありません。なぜなら、現代のビジネス環境は国境を越えて密接に結びついており、コンサルティング業界もその例外ではないからです。

例えば、以下のような場面で英語力は強力な武器となります。

  • グローバル案件へのアサイン: 日本企業が海外市場へ進出する際の戦略立案、海外企業の日本法人における組織改革、複数の国をまたぐサプライチェーンの最適化など、高付加価値でダイナミックな「グローバル案件」に携わるチャンスが生まれます。こうしたプロジェクトでは、海外オフィスのメンバーや海外のクライアントと日常的に英語でコミュニケーションを取る必要があります。
  • 海外オフィスへの転籍: 多くのグローバルファームでは、社内のトランスファー制度を利用して海外オフィスで働く機会があります。これは、コンサルタントとしての経験を深めるだけでなく、異文化理解やグローバルな人脈形成といった面で、計り知れない価値をもたらします。このチャンスを掴むためには、言うまでもなく現地で業務を遂行できるレベルの英語力が前提となります。
  • 転職市場における価値向上: コンサルティング業界から事業会社や投資ファンドなどへ転職する際も、英語力は大きなアドバンテージになります。特に、グローバル展開を進める企業の経営企画部門や、海外の投資先を評価するPEファンドなどでは、「コンサルティング経験」と「ビジネスレベルの英語力」を兼ね備えた人材は極めて希少価値が高く、引く手あまたとなります。

このように、英語力は担当できるプロジェクトの幅を広げ、より挑戦的なキャリアパスを描くための「パスポート」のような役割を果たします。必須科目ではないものの、履修しておけば将来の選択肢が劇的に増える、極めて価値の高い選択科目と言えるでしょう。

英語力に自信がなくてもコンサルタントへの転職は可能

「英語力があると有利なのは分かったけれど、現時点で自信がない自分には無理なのだろうか…」と落胆する必要は全くありません。前述の通り、英語力に自信がない状態からでもコンサルタントへの転職は十分に可能です

コンサルティングファームが採用選考で最も重視するのは、論理的思考力、問題解決能力、コミュニケーション能力、そして特定の領域における専門性といったコアスキルです。英語力は、あくまでこれらの上に乗る付加価値(アドオン)スキルと位置づけられている場合が多いのです。

特に、以下のようなケースでは、英語力が選考の決定的なマイナス要因になることは少ないでしょう。

  • 国内案件中心のファームを志望する場合: 日系のコンサルティングファームや、特定のインダストリー(例:金融、公共サービス)に特化し、国内クライアントを主戦場としているファームでは、英語の使用頻度は相対的に低くなります。まずはこうしたファームでコンサルタントとしての基礎体力をつけ、経験を積みながら必要に応じて英語力を高めていくというキャリアプランも非常に現実的です。
  • 特定の専門性が極めて高い場合: 例えば、ある特定の業界における深い知見、先進的なIT技術に関する高度なスキル、会計や法務といった専門資格など、他の候補者にはない強力な武器を持っていれば、英語力の不足を補って余りある評価を得られる可能性があります。ファーム側も、「この専門性はぜひ欲しい。英語は入社後に学んでもらおう」と判断することがあります。

重要なのは、自分の現状を正しく認識し、戦略的にアプローチすることです。英語力に自信がないのであれば、それを補うだけの論理的思考力や専門性を徹底的に磨き上げ、面接でアピールする必要があります。

また、多くのファームでは入社後の研修制度が充実しており、語学学習支援プログラムを用意しているところも少なくありません。入社時点では英語が不得手でも、強い意志を持って学習を続ければ、グローバル案件で活躍できるレベルに到達することは決して不可能ではありません。

結論として、英語力はコンサルタントにとってキャリアを豊かにする重要なスキルですが、それがなければスタートラインにすら立てないというわけではありません。自身の強みを見極め、戦略的にキャリアを考えることが何よりも大切です。

コンサルタントに英語力が求められる3つの理由

グローバル案件の増加で英語を使う機会が増加、海外の最新情報を収集する際に役立つ、英語ができる人材は市場価値が高い

前章で「英語力は必須ではないが、あると有利」と述べましたが、なぜ現代のコンサルタントにとって英語はこれほどまでに重要なスキルとなっているのでしょうか。その背景には、ビジネス環境の構造的な変化が存在します。この章では、コンサルタントに英語力が求められる本質的な3つの理由を深掘りしていきます。

① グローバル案件の増加で英語を使う機会が増えている

コンサルタントに英語力が求められる最も直接的かつ最大の理由は、グローバルに関連するプロジェクト、いわゆる「グローバル案件」が著しく増加していることです。経済のボーダーレス化が進み、企業活動が国境を越えるのが当たり前になった現代において、コンサルティングのテーマも必然的にグローバルな視点を要求されるようになっています。

具体的には、以下のような案件が典型例です。

  • クロスボーダーM&A(国際的な企業買収・合併): 日本企業が海外企業を買収する、あるいは海外企業が日本企業を買収する際に、戦略立案からデューデリジェンス(資産査定)、PMI(買収後の統合プロセス)までを支援します。買収対象企業の経営陣や従業員、現地の専門家(弁護士、会計士など)とのコミュニケーションは、当然ながら英語が基本となります。
  • グローバルサプライチェーンの再構築: 地政学リスクの高まりや環境問題への対応などを受け、多くの企業が世界中に張り巡らされた部品調達・生産・物流のネットワークを見直しています。各国の拠点担当者と連携し、最適なサプライチェーンを設計・導入するプロジェクトでは、英語での緻密な調整が不可欠です。
  • 海外市場への進出支援: 日本の製品やサービスを海外で展開するための市場調査、マーケティング戦略、販売チャネル構築などを支援します。現地の消費者動向や競合状況を正確に把握し、現地のパートナー企業と交渉するためには、現地の言語またはグローバルな共通言語である英語が必須となります。
  • グローバル組織・人事制度の設計: 海外拠点を含むグループ全体の組織構造を最適化したり、国籍を問わず優秀な人材を評価・育成するための人事制度を導入したりするプロジェクトです。各国の法制度や文化を理解した上で、海外オフィスの人事担当者と英語で議論を重ねる必要があります。

これらのプロジェクトに共通するのは、関係者の国籍が多様であり、英語が事実上の「共通言語(リンガフランカ)」として機能するという点です。たとえクライアントが日系企業であっても、その海外支社の担当者や現地の提携先は外国人であることがほとんどです。このような環境で価値を提供するためには、単に単語を知っているというレベルではなく、ビジネスの複雑なニュアンスを正確に伝え、相手の意図を汲み取ることができる高度な英語力が求められます。グローバル案件の増加は、コンサルタントにとって英語が「あれば便利なスキル」から「ハイレベルな仕事をするための前提スキル」へと変化しつつあることを示しています。

② 海外の最新情報を収集する際に役立つ

コンサルタントの仕事の根幹をなす活動の一つに、「リサーチ(情報収集・分析)」があります。クライアントが抱える課題に対して、客観的なデータと事実に基づいた最適な解決策を提示するためには、質の高い情報を迅速に集める能力が不可欠です。そして、最先端の経営理論、テクノロジー動向、業界トレンドに関する質の高い情報の多くは、まず英語で発信されます

例えば、以下のような情報源は、コンサルタントが日常的にアクセスするものです。

  • 学術論文・専門誌: 経営学の権威であるハーバード・ビジネス・スクールやスタンフォード大学などが発行する論文、あるいは特定分野の最先端の研究成果が掲載される学術誌は、新たなフレームワークや理論の源泉です。
  • 業界レポート・調査データ: GartnerやForresterといった調査会社が発表するテクノロジー市場の分析レポート、あるいは各業界団体が発行する市場動向レポートは、客観的なデータに基づく戦略立案の土台となります。
  • 海外のニュースメディア: Financial Times, The Wall Street Journal, The Economistといった経済専門メディアは、世界の政治・経済の動向や企業の最新の動きをいち早く報じます。
  • 専門家のブログやカンファレンスの講演: 特定分野の第一人者が発信するブログ記事や、国際的なカンファレンスでの講演内容は、現場の生きた情報として非常に価値が高いです。

これらの一次情報に直接アクセスできるかどうかは、コンサルタントのアウトプットの質を大きく左右します。日本語に翻訳された二次情報を待っていては、情報の鮮度が落ちるだけでなく、翻訳の過程で本来のニュアンスが失われてしまうリスクもあります。特に、新しい概念や専門用語は、日本語の定訳がないことも多く、原文でその意味を正確に理解する能力が求められます。

英語で情報をインプットできるコンサルタントは、誰よりも早く、そして正確に世界の最先端の知見を吸収し、それをクライアントへの提言に活かすことができます。これは、競合ファームや他のコンサルタントに対する明確な差別化要因となります。リサーチ能力はコンサルタントの生命線であり、その能力を最大限に引き出す上で、英語力は極めて重要な役割を担っているのです。

③ 英語ができる人材は市場価値が高い

コンサルタント個人のキャリアという観点から見ても、英語力は市場価値を大きく高める要因となります。理由はシンプルで、「高度な問題解決能力」と「ビジネスレベルの英語力」という2つの希少なスキルを兼ね備えた人材は、労働市場において圧倒的に需要が供給を上回っているからです。

コンサルティングファーム内でのキャリアを考えてみましょう。同じ職位(アナリスト、コンサルタントなど)の同期が複数人いた場合、英語ができる人材は、前述のグローバル案件にアサインされる可能性が高まります。これらの案件はファームにとって収益性が高く、難易度も高いため、そこで成果を出すことは社内での高い評価に直結します。結果として、昇進のスピードが速まったり、より良い報酬を得られたりする可能性が高まります。ファームとしても、限られた英語話者を重要なプロジェクトに優先的に配置するのは当然の経営判断です。

次に、コンサルティング業界の外へのキャリア(ポストコンサル)を考えてみます。コンサルティング経験者は、その論理的思考力やプロジェクトマネジメント能力を高く評価され、多くの企業から求められます。そこに英語力が加わることで、選択肢はさらに広がります。

  • グローバル企業の経営企画・事業開発: 海外事業の戦略立案やM&Aを担うポジションでは、コンサルティングで培った分析能力と英語での交渉・調整能力の両方が必須スキルとなります。
  • PEファンド(プライベート・エクイティ・ファンド): 投資先の企業価値を向上させるプロフェッショナルとして、コンサルタントは非常に親和性の高いキャリアです。特にクロスボーダー投資を行うファンドでは、英語でのデューデリジェンスや海外の経営陣との対話が日常業務であり、英語力は必須条件です。
  • 外資系企業の要職: 各国のマネジメントと対等に渡り合う必要があるカントリーマネージャーなどのポジションも、英語力のあるコンサルティング経験者にとって魅力的な選択肢です。

このように、英語力はファーム内での評価を高めるだけでなく、その後のキャリアの選択肢を質・量ともに豊かにしてくれます。それは、コンサルタントとしての専門性に「グローバル」という掛け算をするようなものであり、自身の市場価値を飛躍的に高めるための最も確実な投資の一つと言えるでしょう。

コンサルティング業務で英語が必要になる具体的な場面

海外オフィスのメンバーとの会議やメール、外資系企業や日系グローバル企業とのやり取り、海外での情報収集やリサーチ活動、英語での資料作成やプレゼンテーション

「英語力が必要なのは分かったけれど、実際にどのような場面で使うのかイメージが湧かない」という方も多いでしょう。ここでは、コンサルタントが日々の業務の中で英語に触れる具体的なシーンを、より解像度を上げて解説します。これらを理解することで、どのような英語スキルを重点的に鍛えるべきかが見えてきます。

海外オフィスのメンバーとの会議やメール

多くのコンサルティングファーム、特に戦略系や総合系と呼ばれるファームは、世界中にオフィスを持つグローバルネットワークを構築しています。あるプロジェクトに最適な知見を持つ専門家が、ニューヨークやロンドン、シンガポールのオフィスに在籍していることは日常茶飯事です。グローバルで最適なチームを組成してクライアントに価値を提供するため、海外オフィスのメンバーとの連携は欠かせません

その際のコミュニケーションは、当然ながら英語で行われます。具体的なシーンとしては、以下のようなものが挙げられます。

  • テレビ会議・電話会議: プロジェクトのキックオフミーティング、週次の進捗確認、特定の論点に関するディスカッションなど、様々な目的でオンライン会議が設定されます。時差があるため、早朝や深夜に行われることも珍しくありません。ここでは、相手の発言を正確に聞き取るリスニング力と、自分の意見を簡潔かつ論理的に述べるスピーキング力が求められます。特に、多様な国籍のメンバーが参加する会議では、様々なアクセントの英語が飛び交うため、高いリスニング能力が必要とされます。
  • メールやチャットでのやり取り: 日々の細かな情報共有、成果物のレビュー依頼、質疑応答などは、メールやSlack、Microsoft Teamsといったツールを使って行われます。文章でのコミュニケーションでは、誤解を招かない明確でロジカルなライティングスキルが重要です。要点を先に述べ、背景や詳細を後に続けるといった、ビジネスライティングの基本を英語で実践できなければなりません。また、相手への敬意を示すための丁寧な表現(Please, Could you, I would appreciate it if… など)を適切に使い分ける能力も、円滑な人間関係を築く上で不可欠です。

外資系企業や日系グローバル企業とのやり取り

クライアントが外資系企業である場合や、日系企業でも海外事業部門がカウンターパートである場合、コミュニケーションは英語で行われることが多くなります。クライアントとのやり取りは、コンサルタントの評価に直結するため、特に高いレベルの英語力が求められる場面です。

  • 定例会議での報告: プロジェクトの進捗状況や分析結果をクライアントに報告する場面です。事前に作成した英語のプレゼンテーション資料に基づき、口頭で説明を行います。ここでは、専門的な内容を平易な言葉で説明する能力や、クライアントの関心を引くような説得力のある話し方が求められます。
  • 質疑応答: 報告の後には、必ずクライアントからの質疑応答の時間があります。「このデータの根拠は何か?」「なぜこの選択肢が最適だと言えるのか?」といった厳しい質問に対し、即座に意図を理解し、臆することなく論理的に回答するスピーキング力とリスニング力が必要です。ここで的確に答えられるかどうかは、クライアントからの信頼を大きく左右します。
  • ワークショップやディスカッション: クライアントのメンバーを交えて、特定のテーマについて議論し、アイデアを出し合うワークショップをファシリテートすることもあります。参加者の意見を引き出し、議論を整理し、合意形成へと導くためには、高度なファシリテーションスキルと、それを英語で実践できる語学力が不可欠です。

海外での情報収集やリサーチ活動

前章でも触れましたが、コンサルタントの重要な業務であるリサーチ活動においても、英語は頻繁に使用されます。特に、机上の調査だけでは得られない一次情報を収集する際には、英語でのコミュニケーションが必須となります。

  • 海外の専門家へのインタビュー: 特定の業界や技術について深い知見を得るために、海外の大学教授、業界アナリスト、企業の技術者などにインタビューを依頼することがあります。限られた時間の中で的確な質問を投げかけ、相手から本質的な情報を引き出すためには、専門用語を理解した上での高度な対話能力が求められます。
  • 海外のデータベースや文献の調査: 英語で書かれた膨大な量のレポート、論文、特許情報などを読み込み、プロジェクトに必要な情報を抽出します。ここでは、速読能力と、情報の要点を正確に把握する読解力(リーディングスキル)が極めて重要です。すべての文章を精読する時間はないため、必要な情報を効率的に見つけ出すスキルが問われます。
  • 現地調査(フィールドリサーチ): 海外市場への進出案件などでは、実際に現地に赴き、店舗を視察したり、消費者にインタビューしたりすることもあります。現地の文化や商習慣を肌で感じながら情報を収集する活動は、英語力がなければ成り立ちません。

英語での資料作成やプレゼンテーション

コンサルティングプロジェクトの最終的なアウトプットは、多くの場合、報告書やプレゼンテーション資料という形でクライアントに納品されます。グローバル案件や外資系クライアントのプロジェクトでは、これらの成果物もすべて英語で作成する必要があります。

  • 提案書(Proposal)の作成: プロジェクトを受注するために、クライアントの課題をどのように解決するかをまとめた提案書を作成します。クライアントの課題認識を正確に英語で記述し、説得力のある解決アプローチを提示するライティングスキルが求められます。
  • 中間・最終報告書(Report)の作成: プロジェクトを通じて得られた分析結果や提言を、数十〜百ページ以上にわたる詳細な報告書にまとめます。ピラミッド構造などの論理構造を意識し、一貫性のあるストーリーを英語で構築する高度なライティング能力が必要です。図表やグラフのタイトル、注釈などもすべて英語で記述します。
  • プレゼンテーション資料(Presentation Deck)の作成: 報告会のためのプレゼンテーション資料を作成します。1枚のスライドに1つのメッセージを原則とし、視覚的に分かりやすく、かつ論理的な構成を英語で作り上げるスキルが問われます。

これらのアウトプットの品質は、コンサルティングファームの評価そのものです。たとえ分析内容が素晴らしくても、それを伝える英語の資料が稚拙であれば、価値は半減してしまいます。そのため、正確かつプロフェッショナルな英文を作成する能力は、コンサルタントにとって極めて重要なスキルなのです。

コンサルティングファームの種類別にみる英語力の必要度

コンサルティング業界と一括りに言っても、その専門領域や成り立ちによって、いくつかの種類に分類されます。そして、ファームの種類によって、求められる英語力のレベルや使われる場面も大きく異なります。ここでは、主要なコンサルティングファームのカテゴリー別に、英語力の必要度を解説します。自身のキャリアプランと照らし合わせながら、どの程度の英語力を目指すべきかの参考にしてください。

ファームの種類 英語力の必要度 主な業務と英語が使われる場面 求められる英語スキルの特徴
戦略系コンサルティングファーム 非常に高い グローバル企業の経営戦略、クロスボーダーM&A支援など。海外オフィスとの連携、海外クライアントとの折衝が日常的。 ネイティブレベルに近い流暢な会話力、高度なビジネス語彙、論理的なライティング能力。総合的な英語力が求められる。
総合系コンサルティングファーム(BIG4など) 高い 戦略、業務改革、IT導入、M&Aなど多岐にわたる。部門やプロジェクトにより濃淡があるが、グローバル案件は多数。 読み書き(資料作成、メール)の比重が高い傾向。会話力もビジネスレベルが求められるが、国内案件では不要な場合も。
IT系コンサルティングファーム 中〜高い 最新技術の動向調査、グローバルでのシステム導入、海外ITベンダーとの協業など。 IT関連の専門用語に精通していることが重要。ドキュメント読解(リーディング)や仕様書作成(ライティング)能力が特に求められる。
シンクタンク系コンサルティングファーム 中程度 官公庁向けの政策立案・調査研究が中心。海外の政策事例や社会経済に関する文献リサーチが必須。 高度な学術論文や行政文書を正確に読み解くリーディングスキルが最重要。スピーキングの機会は比較的少ない。
日系コンサルティングファーム 低い〜中程度 日本企業向けの経営改善、事業再生などが中心。英語の使用頻度は低いが、クライアントの海外進出支援などで必要になるケースが増加中。 必須ではないが、英語力があれば担当できる案件の幅が広がり、キャリアアップに繋がる。基礎的な読み書きができれば評価される。

戦略系コンサルティングファーム

マッキンゼー・アンド・カンパニーやボストン コンサルティング グループなどに代表される戦略系ファームでは、英語力の必要度は「非常に高い」と言えます。これらのファームは、グローバル企業のCEOや経営層が抱える最重要課題をテーマにすることが多く、必然的にプロジェクトは国境を越えます。

  • 日常的なグローバル連携: 世界中のオフィスから最適な知見を持つコンサルタントを集めてチームを組む「グローバル・スタッフィング」が基本です。そのため、前述した海外オフィスのメンバーとのテレビ会議やメールでのやり取りは日常業務となります。
  • クライアントの多様性: クライアントもグローバルに事業展開する大企業が中心であり、外国人経営層へのプレゼンテーションやディスカッションも頻繁に発生します。
  • 求められるレベル: 単に意思疎通ができるレベルでは不十分です。複雑なビジネス課題について、ネイティブスピーカーと対等に、かつ論理的に議論できる高度なスピーキング・リスニング能力が求められます。また、経営層向けの洗練された報告書を作成するための、極めて高いレベルのライティング能力も不可欠です。選考段階で英語面接が課されることも多く、事実上の必須スキルと考えるべきでしょう。

総合系コンサルティングファーム(BIG4など)

デロイト トーマツ コンサルティング、PwCコンサルティング、KPMGコンサルティング、EYストラテジー・アンド・コンサルティング(通称BIG4)などに代表される総合系ファームでは、英語力の必要度は「高い」ですが、戦略系に比べるとやや濃淡があります。

  • 部門・プロジェクトによる差: 総合系ファームは、戦略から業務、IT、人事、財務まで幅広いサービスラインと、数千人規模の人員を抱えています。そのため、所属する部門やアサインされるプロジェクトによって英語の使用頻度は大きく異なります。グローバル企業のM&Aを支援するチームでは英語が公用語となる一方、国内企業の業務改善プロジェクトでは日本語しか使わないこともあります。
  • グローバルネットワークの活用: BIG4は世界中に広がる強固なネットワークを持っており、それを活かしたグローバル案件を数多く手掛けています。海外のメンバーファームとの連携は頻繁にあり、英語でのコミュニケーションは必須です。
  • 求められるレベル: ビジネスレベルの英語力が標準的に期待されます。特に、海外メンバーが作成した資料を読み解いたり、英語でメールや報告書を作成したりする「読み書き」の能力は、多くの部門で求められるでしょう。英語力があれば、間違いなくアサインされるプロジェクトの選択肢が広がり、キャリア上有利に働きます。

IT系コンサルティングファーム

アクセンチュアやIBMなどに代表されるIT系コンサルティングファームでは、英語力の必要度は「中〜高い」です。テクノロジー領域は、グローバルでの標準化や最新技術の動向が極めて重要になるため、英語力が求められる場面が多くなります。

  • 最新技術のリサーチ: AI、クラウド、サイバーセキュリティといった分野の最新情報は、そのほとんどが英語で発信されます。海外の技術ドキュメントやカンファレンスの情報を迅速にキャッチアップし、クライアントに提供するためには、高いリーディング能力が不可欠です。
  • グローバルな協業: 海外のITベンダー(SAP, Oracle, Salesforceなど)の製品を導入するプロジェクトや、オフショアの開発拠点(インド、ベトナムなど)と連携するプロジェクトでは、英語でのコミュニケーションが必須となります。
  • 求められるレベル: 日常会話レベルの英語力に加えて、IT分野の専門用語や技術的な仕様に関する議論ができる英語力が重要になります。特に、技術文書を正確に読み書きできる能力が評価される傾向にあります。

シンクタンク系コンサルティングファーム

野村総合研究所(NRI)や三菱総合研究所(MRI)などのシンクタンク系ファームでは、英語力の必要度は「中程度」です。

  • リサーチ業務での必要性: 主なクライアントは日本の官公庁や大企業であり、コミュニケーションは日本語が中心です。しかし、政策立案や社会調査においては、海外の先進事例や国際比較が不可欠な要素となります。そのため、海外の政府機関が発行する報告書や、国際機関(世界銀行、OECDなど)の統計データ、学術論文などを読み解く高度なリーディングスキルが求められます。
  • アウトプットは日本語: 収集した英語の情報を基に分析を行いますが、最終的な報告書や提言は日本語で作成されることがほとんどです。そのため、スピーキングやライティングの機会は他のファームに比べて限定的です。英語は主にインプットのツールとして重要視されます。

日系コンサルティングファーム

上記以外の独立系の日系コンサルティングファームでは、英語力の必要度は「低い〜中程度」と、ファームによって大きく異なります。

  • 国内案件が中心: 日本の中堅・中小企業を主なクライアントとし、経営改善や事業再生、組織活性化といったテーマを日本語で手掛けるファームが多く存在します。こうしたファームでは、英語力は必ずしも求められません。
  • 海外進出支援の増加: 一方で、近年はクライアントの海外展開を支援するサービスに力を入れる日系ファームも増えています。そうしたプロジェクトを担当する場合には、当然ながら英語力が必要となります。
  • ポテンシャルとしての評価: 選考段階で高い英語力が必須とされることは稀ですが、TOEICスコアが高い、留学経験があるといった経歴は、将来のポテンシャルとして高く評価されます。入社後のキャリアの幅を広げるという意味で、英語力があって損をすることはありません。

コンサルタントに求められる英語レベルとTOEICスコアの目安

コンサルタントに求められる英語レベルとTOEICスコアの目安

コンサルティング業界を目指す上で、自身の英語力を客観的に示す指標として、TOEIC L&R(Listening & Reading)テストのスコアは非常に重要です。しかし、スコアだけが全てではないのも事実です。この章では、具体的なTOEICスコアの目安と、スコアの裏側で本当に求められている実践的な英語スキルについて解説します。

TOEICスコアは800点以上がひとつの目安

多くのコンサルティングファーム、特に外資系やグローバル案件を扱うファームの採用において、TOEICスコア800点以上が一つの分かりやすい目安、あるいは応募書類の足切りラインとして設定されていることがあります。さらに、より競争の激しい戦略系ファームなどでは、860点以上、あるいは900点以上が暗黙の基準となっているケースも少なくありません。

なぜこのスコアが目安となるのでしょうか。一般的に、TOEICのスコアと英語力のレベルは以下のように解釈されています。

  • TOEIC 730点以上: どんな状況でも適切なコミュニケーションができる素地を備えている。
  • TOEIC 860点以上: Non-Nativeとして十分なコミュニケーションができる(”Able to communicate effectively in any situation.”)。

(参照:IIBC「TOEIC Program DATA & ANALYSIS」)

つまり、TOEIC 800点台後半のスコアは、「英語の資料を読み、メールを書き、会議の内容をある程度理解するといった、ビジネスの基本的なタスクを英語でこなせる能力の証明」と見なされるわけです。コンサルタントには、膨大な英文資料を迅速に処理する能力が求められるため、特にリーディングセクションで高得点を取れることが重要視される傾向にあります。

ただし、これはあくまで一般的な目安です。前述の通り、日系のファームや国内案件中心の部門であれば、このスコアに満たなくても、他の専門性で十分にカバーできる可能性があります。逆に、このスコアをクリアしているからといって、必ずしも安心できるわけではありません。

TOEICのスコアはあくまで参考指標

ここで強調しておきたいのは、TOEICのスコアは、コンサルティング業務で必要とされる英語力を測る上での「必要条件の一つ」ではあっても、「十分条件」ではないということです。採用担当者もその点は十分に理解しており、スコアはあくまで参考指標として捉えています。

TOEIC L&Rテストは、リスニングとリーディングというインプット系のスキルを測るマークシート形式の試験です。ビジネスや日常生活における受動的な英語理解力を測る上では優れた指標ですが、以下のような、コンサルタントに不可欠な実践的スキルを直接測ることはできません。

  • スピーキング能力: 自分の意見を論理的に組み立てて、説得力をもって話す力。
  • ライティング能力: 複雑な事象を構造化し、簡潔かつ明確な文章で報告書を作成する力。
  • ディスカッション能力: 会議で相手の意見を汲み取りながら、議論を発展させていく力。
  • 交渉・調整能力: 利害の異なる相手と粘り強く対話し、合意形成を図る力。

例えば、「TOEICスコアは950点だが、いざ会議になると緊張して全く話せない」という人と、「スコアは800点だが、物怖じせず積極的に発言し、議論を前に進めようとする」という人がいた場合、コンサルタントとして評価されるのは後者である可能性が高いのです。

したがって、TOEICのスコアアップを目指すことは重要ですが、それに固執しすぎるのは危険です。スコアという「看板」だけでなく、その中身である「実践的なコミュニケーション能力」を磨くことが、真にコンサルタントとして成功するための鍵となります。

求められるリーディング・ライティングスキル(読み書き)

コンサルタントの業務において、読み書きのスキルは日常的に、そして大量に要求されます。

【求められるリーディングスキル】
コンサルタントに求められるのは、単に英文を読めることではありません。膨大な量の英文資料(業界レポート、論文、ニュース記事、クライアント提供資料など)を短時間で読みこなし、その中からプロジェクトにとって重要な情報(インサイト)を正確に抽出する能力です。これは「スキャニング」や「スキミング」と呼ばれる技術に近いですが、単にキーワードを探すだけでなく、文章全体の論理構造や著者の主張の核心を掴む必要があります。全ての文章を丁寧に読む時間はないため、重要度を瞬時に判断し、読むべき箇所と読み飛ばす箇所を見極める効率性が問われます。

【求められるライティングスキル】
コンサルタントが作成する英文ドキュメント(メール、議事録、報告書、提案書)には、極めて高いレベルの「明確さ(Clarity)」と「論理性(Logic)」が求められます。特に、以下のような点が重要視されます。

  • 結論ファースト: “Answer First” や “BLUF (Bottom Line Up Front)” とも呼ばれる原則で、まず結論や最も伝えたいメッセージを先に書き、その後に理由や詳細を続ける構成力。
  • 構造化: ピラミッド構造やMECE(ミーシー:Mutually Exclusive, Collectively Exhaustive)といったコンサルティングの基本となる思考法を、英文ライティングにも反映させる能力。
  • 簡潔さ: 冗長な表現を避け、一文を短く、能動態を基本として、誰が読んでも誤解の余地がないように記述する力。
  • プロフェッショナルなトーン: クライアントや上司に対する敬意を示しつつも、自信と信頼性を感じさせる適切な語彙と文体を選ぶ能力。

これらのスキルは、TOEICの文法問題や長文読解とは次元の異なる、より実践的で高度な能力と言えます。

求められるスピーキング・リスニングスキル(会話)

グローバル案件や海外オフィスとの連携において、会話のスキルはプロジェクトの成否を分ける重要な要素です。

【求められるリスニングスキル】
会議やインタビューにおいて、相手の発言を正確に聞き取ることは、コミュニケーションの第一歩です。コンサルティングの現場では、ネイティブスピーカーの速い会話はもちろんのこと、インド、中国、ヨーロッパなど、様々な国の話者が話す多様なアクセント(訛り)の英語を聞き取る必要があります。また、単に言葉を聞き取るだけでなく、その発言の裏にある意図や感情、論理的な繋がりを理解する「アクティブリスニング」の能力が求められます。議事録を取る際にも、誰が何を言ったかを正確に記録するために、高い集中力とリスニング能力が不可欠です。

【求められるスピーキングスキル】
コンサルタントのスピーキングは、単なるおしゃべりではありません。常に「目的」があります。それは、自分の分析や意見を論理的に伝え、相手を説得し、議論をリードして、最終的に意思決定を促すことです。そのためには、流暢さ(Fluency)以上に、論理の一貫性(Coherence)と内容の正確さ(Accuracy)が重要になります。自信がなくても、まずは「私の考えはこうです。なぜなら理由は3つあります。第一に…」といったように、構造的に話すことを意識するだけでも、説得力は格段に増します。また、反論や想定外の質問に対して、冷静かつ的確に切り返す瞬発力も、経験を通じて磨いていく必要があります。

コンサルタントを目指す人におすすめの英語勉強法

コンサルタントに求められる実践的な英語力を身につけるには、戦略的なアプローチが必要です。ここでは、多忙な社会人がコンサルタントを目指す上で、効果的かつ効率的な英語の勉強法をいくつか紹介します。

短期間で集中的に学習する

コンサルタントを目指す方は、現職で忙しく働きながら転職活動の準備を進めるケースがほとんどでしょう。限られた時間の中で成果を出すためには、「だらだらと長期間続ける」のではなく、「期間と目標を明確に定め、短期間で集中的に学習する」ことが極めて重要です。

例えば、「3ヶ月でTOEICスコアを150点アップさせる」「半年後の転職活動開始までに、オンライン英会話でビジネスディスカッションがこなせるレベルになる」といった具体的な目標を設定します。期間を区切ることで、学習への集中力とモチベーションが高まり、日々の学習習慣も定着しやすくなります。

このアプローチは、コンサルタントの働き方そのものにも通じます。コンサルティングプロジェクトは、通常数ヶ月という限られた期間で、クライアントに具体的な成果を出すことが求められます。短期間で集中的にインプットとアウトプットを繰り返し、目標を達成するという経験は、英語学習だけでなく、将来コンサルタントとして働く上での良いトレーニングにもなるでしょう。毎日の通勤時間、昼休み、寝る前の30分など、スキマ時間を最大限に活用し、学習密度を高める工夫が成功の鍵です。

英語のニュースや記事を読み、インプット量を増やす

コンサルタントに必須のリーディング能力と、ビジネスに関する背景知識を同時に鍛える上で、質の高い英語メディアに日常的に触れることは非常に効果的です。これは、単なる英語学習にとどまらず、世界経済の動向や最新のビジネストレンドを掴むための「情報収集トレーニング」にもなります。

以下のメディアは、多くのコンサルタントが日常的にチェックしているものであり、学習教材として最適です。

  • The Economist: 世界の政治・経済を深い洞察で分析。ロジカルで洗練された英文は、ライティングの参考にもなります。
  • Financial Times / The Wall Street Journal: 金融・経済ニュースの権威。企業のM&Aや戦略に関する詳細な記事が豊富です。
  • Harvard Business Review (HBR): 最新の経営理論やフレームワークを学ぶなら必読。コンサルティングの面接で扱われるテーマの宝庫です。

これらの記事を読む際に重要なのは、ただ単語を追いかけるだけでなく、能動的な姿勢で取り組むことです。例えば、「この記事の要点を3行で要約してみる」「筆者の主張に対して、自分ならどう反論するか考える」「知らない単語や表現をリストアップし、実際に使ってみる」といった工夫をすることで、学習効果は飛躍的に高まります。最初は時間がかかっても、毎日続けることで読むスピードと理解の深さが向上していくのを実感できるはずです。

TOEICのスコアアップに特化した対策を行う

実践的な英語力が重要であるとはいえ、転職活動の第一関門である書類選考を突破するためには、TOEICのスコアという客観的な指標も無視できません。特に目標スコア(例:800点)までまだ距離がある場合は、一度割り切ってTOEIC対策に特化した学習を集中的に行うのが効率的です。

TOEICは出題形式や頻出単語にある程度のパターンがあるため、的を絞った対策がスコアアップに直結しやすい試験です。

  • 公式問題集を繰り返し解く: ETSが発行する公式問題集は、本番の試験と全く同じ形式・難易度です。時間を計って解き、間違えた問題はなぜ間違えたのかを徹底的に分析することが最も効果的です。リスニングのスクリプトを音読したり、ディクテーション(書き取り)したりするのも良いトレーニングになります。
  • 時間配分をマスターする: TOEICは時間との戦いです。特にリーディングセクションは、全ての問題を解ききれない人も少なくありません。パートごとにかける時間をあらかじめ決め、それを守る練習を繰り返しましょう。
  • 頻出単語・文法の習得: TOEICに特化した単語帳(例:「金のフレーズ」シリーズなど)や文法書を一冊完璧に仕上げることで、基礎的な語彙力と文法力が安定し、スコアの底上げに繋がります。

TOEIC対策は、あくまでゴールではなく通過点と捉え、短期間で目標スコアをクリアし、次のステップである実践的なスピーキングやライティングの学習に移行するのが理想的な進め方です。

ビジネス英会話を習得する

TOEICのスコアを確保したら、次はいよいよ実践的な会話力、特にビジネスシーンで通用するスピーキングとリスニングの能力を磨くフェーズです。知識として知っている英語を、実際に使えるスキルへと昇華させるためには、アウトプットの練習が不可欠です。

オンライン英会話を活用する(例:Bizmates, NativeCamp)

近年、ビジネスパーソンにとって最も手軽でコストパフォーマンスの高いアウトプットの場が、オンライン英会話です。

  • Bizmates(ビズメイツ): 「ビジネスで成果をあげる」ことを目的にしたビジネス特化型のオンライン英会話サービスです。トレーナーは全員がビジネス経験者であり、単なる日常会話ではなく、会議、プレゼンテーション、交渉といった具体的なビジネスシーンを想定した実践的なレッスンが受けられます。コンサルタントに求められるロジカルな話し方を学びたい人に特におすすめです。(参照:Bizmates公式サイト)
  • NativeCamp(ネイティブキャンプ): 月額料金でレッスンが「受け放題」なのが最大の特徴です。予約なしでいつでも思い立った時にレッスンを受けられるため、多忙な中でも学習時間を確保しやすいのが魅力です。とにかく話す量を増やして、英語を話すことへの抵抗感をなくしたいという段階の方に適しています。(参照:ネイティブキャンプ公式サイト)

オンライン英会話を効果的に活用するコツは、受け身にならず、自分から積極的に話すことです。事前に話したいテーマ(例えば、最近読んだニュース記事の要約と自分の意見など)を準備しておき、レッスンを「練習試合」の場として最大限に活用しましょう。

英語コーチングサービスを利用する(例:PROGRIT, TORAIZ)

「自分一人では学習が続かない」「何から手をつければ良いか分からない」「短期間で絶対に結果を出したい」という方には、英語コーチングサービスが有力な選択肢となります。

  • PROGRIT(プログリット): 第二言語習得論に基づいた科学的なアプローチで、受講生一人ひとりの課題を分析し、最適な学習プランを設計・管理してくれるサービスです。専属のコンサルタントが毎日の学習進捗を徹底的にサポートしてくれるため、学習を習慣化し、最短距離で目標達成を目指せます。(参照:プログリット公式サイト)
  • TORAIZ(トライズ): 1年間で1,000時間の学習を基本とし、ビジネスで本当に使える英語力を身につけることを目指すコーチング・プログラムです。専属コンサルタントによるサポートに加え、ネイティブ講師とのグループレッスンも組み込まれており、総合的な英語力をバランス良く伸ばすことができます。(参照:TORAIZ公式サイト)

これらのコーチングサービスは、オンライン英会話に比べて費用は高額になりますが、その分、学習の質と強制力は格段に高まります。自己投資と割り切り、プロの力を借りて短期間で英語力を飛躍させたいと考える人にとっては、非常に有効な手段と言えるでしょう。

転職活動で英語力を効果的にアピールする方法

せっかく身につけた英語力も、転職活動の場で採用担当者に適切に伝えられなければ意味がありません。ここでは、職務経歴書と面接という2つの重要な場面で、自身の英語力を効果的にアピールするための具体的な方法を解説します。

職務経歴書で具体的なエピソードを交えてアピールする

職務経歴書において、英語力を示す最も基本的な情報はTOEICのスコアです。これは客観的な指標として必ず記載しましょう。しかし、それだけで終わらせては非常にもったいないです。重要なのは、「その英語力を使って、ビジネスの現場で具体的にどのような成果を上げたか」をアピールすることです。

単に「英語力:ビジネスレベル」「TOEIC 900点」と書くだけでなく、職務内容の欄に具体的なエピソードを盛り込みましょう。その際に有効なフレームワークが、STARメソッドです。

  • S (Situation): どのような状況だったか
  • T (Task): どのような課題や目標があったか
  • A (Action): それに対して、あなたが(英語を使って)具体的に何をしたか
  • R (Result): その結果、どのような成果に繋がったか

このフレームワークに沿って記述することで、あなたの英語力が単なるスコアではなく、ビジネスに貢献できる実践的なスキルであることが明確に伝わります。

【アピール例】

  • (悪い例)
    • 海外サプライヤーとのコミュニケーションを担当。
  • (良い例:STARメソッドを活用)
    • (S) 米国サプライヤーとの間で、部品の納期遅延が常態化している状況でした。
    • (T) 安定供給を実現するため、遅延の原因を特定し、改善策を合意することが課題でした。
    • (A) 毎週の英語でのテレビ会議を主導し、現地の担当者と粘り強く原因分析と対策の協議を実施。メールやチャットでも密に連携し、認識の齟齬を解消しました。
    • (R) 結果として、3ヶ月で納期遵守率を60%から95%に改善し、生産ラインの安定稼働に貢献しました。

このように、具体的な行動と、可能であれば数値で示せる成果を記述することで、採用担当者はあなたの英語力と問題解決能力をリアルにイメージできます。他にも、「英語で海外の最新技術動向を調査し、レポートを作成して新製品開発に貢献した」「外国人上司に対し、英語で月次報告を行い、プロジェクトの予算承認を得た」など、自身の経験の中から英語が活きた場面を棚卸ししてみましょう。

面接で英語での自己紹介や質疑応答に備える

特に外資系ファームやグローバル案件の多いファームの面接では、その一部が英語で行われる可能性があります。これは、職務経歴書に書かれた英語力が本物であるかを確認するための「実技試験」と考えるべきです。突然英語での質問が始まって慌てないよう、事前準備を万全にしておきましょう。

【準備しておくべきこと】

  1. 英語での自己紹介(30秒〜1分程度): 自分の経歴、強み、そしてなぜこのファームを志望するのかを簡潔にまとめたものを準備し、スラスラと言えるまで何度も練習します。「Tell me about yourself.」は最も基本的な質問です。
  2. よくある質問への回答: 「あなたの強み・弱みは?(What are your strengths and weaknesses?)」「なぜコンサルタントになりたいのか?(Why do you want to be a consultant?)」「このファームを志望する理由は?(Why are you interested in this firm?)」といった定番の質問には、英語で回答できるように準備しておきましょう。ここでも、具体的なエピソードを交えて話せると説得力が増します。
  3. 逆質問: 面接の最後に「何か質問はありますか?(Do you have any questions for us?)」と聞かれた際に、英語でいくつか質問を準備しておくと、積極的な姿勢を示すことができます。例えば、「グローバル案件に携わるチャンスはどのくらいありますか?」「入社後の語学研修制度について教えてください」といった質問が良いでしょう。
  4. ケース面接のディスカッション: コンサルティングファームの選考では、ケース面接が課されることがよくあります。外資系ファームでは、このディスカッションの一部が英語で行われることも想定されます。完璧な英語でなくても構いません。重要なのは、考えを止めずに、自分の思考プロセスを論理的に説明しようとする姿勢です。分からなければ「Could you clarify what you mean by…?(〜はどういう意味か明確にしていただけますか?)」と聞き返すなど、対話を続けようとするコミュニケーション能力が評価されます。

面接官が見ているのは、あなたの発音の綺麗さや文法の完璧さだけではありません。未知の状況やプレッシャーがかかる場面でも、臆することなく、論理的にコミュニケーションを取ろうとするプロフェッショナルな姿勢です。自信を持って、堂々と話すことを心がけましょう。

英語力を活かせるコンサルタントのキャリアパス

海外オフィスへの転籍、PEファンドへの転職、事業会社の経営企画部門への転職

コンサルタントとして英語力を磨くことは、ファーム内での活躍に留まらず、その後のキャリアにおいても非常に大きな可能性を拓きます。「コンサルティングスキル」と「グローバルなコミュニケーション能力」という強力な武器を手にすることで、多岐にわたる魅力的なキャリアパスが見えてきます。

海外オフィスへの転籍

多くのグローバル・コンサルティングファームには、「トランスファー制度」と呼ばれる社内異動プログラムが存在します。これは、一定期間(通常1〜2年)、希望する海外のオフィスに転籍し、現地のプロジェクトに従事できる制度です。

これは、コンサルタントにとって非常に魅力的なキャリアパスです。

  • グローバルな経験: 現地のクライアントが抱える課題に直接触れ、日本とは異なるビジネス環境や文化の中で働くことで、視野は格段に広がります。
  • スキルアップ: 英語を日常的に使う環境に身を置くことで、語学力は飛躍的に向上します。また、現地のトップコンサルタントたちと働くことで、新たな分析手法や専門知識を吸収できます。
  • 人脈形成: 世界中に広がる強力なプロフェッショナル・ネットワークを築くことができます。この人脈は、将来どのようなキャリアに進むにしても、かけがえのない財産となるでしょう。

このトランスファー制度を利用するための大前提となるのが、現地で業務を遂行できるレベルの英語力です。日頃から英語力を磨き、グローバル案件で実績を積んでおくことが、このチャンスを掴むための鍵となります。

PEファンドへの転職

PE(プライベート・エクイティ)ファンドは、投資家から集めた資金で企業を買収し、その企業の経営に積極的に関与して企業価値を高め、最終的に売却することで利益を得る投資会社です。この「企業価値を高める」というフェーズ(バリューアップ)において、コンサルタントが培った事業分析、戦略立案、実行支援のスキルが非常に高く評価されます。

特に、海外企業への投資(クロスボーダー投資)を行うPEファンドでは、コンサルティング経験と英語力の両方が必須スキルとなります。

  • 投資先のデューデリジェンス: 投資を検討している海外企業の事業や財務状況を精査する際に、英語での情報収集、分析、現地経営陣へのインタビューが不可欠です。
  • バリューアップ活動: 投資先の海外企業の経営陣と英語でディスカッションを重ね、事業戦略の策定やオペレーション改善を主導します。
  • 売却交渉: 最終的に投資先企業を売却する際にも、海外の買い手候補と英語で交渉を行う必要があります。

コンサルタントとしてグローバルなM&A案件などに携わった経験は、PEファンドへの転職において強力なアピールポイントとなります。

事業会社の経営企画部門への転職

コンサルタントのポストキャリアとして最も一般的な選択肢の一つが、事業会社の経営企画や事業開発といった部門への転職です。コンサルティングで培った俯瞰的な視点や戦略的思考を、今度は一つの事業の当事者として活かすことができます。

ここで英語力が加わると、キャリアの選択肢はさらに広がります。

  • グローバル企業の経営企画: 本社機能として、海外拠点を含むグループ全体の経営戦略の策-定や予実管理を担います。各国の拠点長と英語でコミュニケーションを取り、グローバルレベルでの意思決定をサポートする重要な役割です。
  • 海外事業開発・M&A担当: 自社の海外展開をリードするポジションです。新規市場への進出戦略を立案したり、海外企業の買収や提携交渉を行ったりと、コンサルティングスキルと英語力をダイレクトに活かせる、非常にダイナミックな仕事です。
  • 外資系企業の日本法人: 外資系企業の日本法人で、本国のマネジメントと日本の事業をつなぐブリッジ役を担うことも可能です。日本の市場環境を本国に英語で説明し、グローバル戦略を日本市場に合わせて最適化していく役割が求められます。

このように、英語力はコンサルタントとしての市場価値を高めるだけでなく、その後のキャリアにおいても、よりグローバルで、より経営に近いポジションへの扉を開く鍵となるのです。

まとめ

本記事では、コンサルタントに求められる英語力について、その必要性の背景から具体的な業務シーン、ファーム別の違い、学習法、そしてキャリアパスに至るまで、多角的に解説してきました。

最後に、重要なポイントを改めて整理します。

  • 英語力は必須ではないが、キャリアの可能性を飛躍させる強力な武器: 英語力がなくてもコンサルタントになることは可能ですが、グローバル案件への挑戦、海外転籍、有利な転職など、キャリアの選択肢を格段に広げるためには極めて重要なスキルです。
  • TOEICスコアはあくまで入口。実践的なビジネス英語力が本質: TOEIC 800点以上は多くのファームで一つの目安となりますが、それはスタートラインに過ぎません。本当に求められるのは、会議で論理的に議論し、プロフェッショナルな報告書を作成できる、実践的なコミュニケーション能力です。
  • 目指すファームの種類によって必要度は異なる: 戦略系ではネイティブレベル、総合系ではビジネスレベルが求められる一方、シンクタンク系ではリーディングが、日系ファームではポテンシャルが重視されるなど、自身のキャリアプランに合わせて目標設定することが重要です。
  • 学習は「短期間・集中的」に。インプットとアウトプットのバランスが鍵: 多忙な中では、目標を明確にして集中的に取り組むことが効果的です。英語メディアでインプットを増やしつつ、オンライン英会話やコーチングを活用して、実践的なアウトプットの機会を確保しましょう。

コンサルタントという職業は、知的好奇心を満たし、社会に大きなインパクトを与えることができる、非常にやりがいのある仕事です。そして、英語力はその可能性を日本国内から世界へと広げてくれる、まさに「翼」のような存在です。

英語力に自信がない方も、この記事で紹介した学習法を参考に、戦略的にスキルアップに取り組んでみてください。論理的思考力というコンサルタントのコアスキルに、グローバルなコミュニケーション能力が加わったとき、あなたの市場価値は計り知れないものになるでしょう。この記事が、あなたのコンサルタントとしてのキャリアを切り拓く一助となれば幸いです。