ビジネス環境が複雑化し、変化のスピードが加速する現代において、企業が持続的に成長を遂げるためには、経営上のあらゆる課題に迅速かつ的確に対応する必要があります。しかし、社内のリソースや知見だけでは解決が難しい問題に直面することも少なくありません。そのような場面で、企業の強力なパートナーとなるのが「コンサルティング会社」です。
本記事では、コンサルティング会社の基本的な役割から、多岐にわたる専門領域別の種類、そして具体的な企業の選び方までを網羅的に解説します。大手ファームから特定の分野に強みを持つブティックファームまで、その特徴を比較しながら、自社の課題解決に最適なパートナーを見つけるための羅針盤となる情報を提供します。コンサルティング会社の活用を検討している経営者や担当者の方は、ぜひ最後までご覧ください。
目次
コンサルティング会社とは?
コンサルティング会社とは、企業や公的機関などのクライアントが抱える経営上の課題を明らかにし、その解決に向けた戦略の策定や実行支援を行う専門家集団です。その役割は、単にアドバイスを提供するだけでなく、クライアントと伴走しながら具体的な成果を創出することにあります。
ビジネスの世界では、日々新たな課題が生まれます。例えば、「新規事業を立ち上げたいが、市場の将来性が読めない」「DX(デジタルトランスフォーメーション)を進めたいが、何から手をつければいいか分からない」「M&Aによって事業規模を拡大したいが、リスクの評価が難しい」「従業員のエンゲージメントが低下し、離職率の高さが問題になっている」など、その内容は多岐にわたります。
これらの課題は、専門的な知識や分析スキル、そして豊富な経験がなければ、適切な解決策を見出すことが困難です。コンサルティング会社は、様々な業界・テーマのプロジェクトを通じて蓄積した高度な専門知識、論理的思考力、問題解決のフレームワーク、そして客観的な視点を武器に、これらの難題に立ち向かいます。
コンサルティング会社が提供する価値は、主に以下の4つに集約されます。
- 専門性の提供:
自社だけでは獲得が難しい、特定の業界知識、最新技術の動向、法規制に関する知見、高度な分析手法などを提供します。これにより、企業は迅速に専門的なインプットを得て、的確な意思決定を下せます。 - 客観性の担保:
企業内部の人間では、どうしても既存の慣習や人間関係、部門間の利害対立といった「しがらみ」にとらわれがちです。第三者であるコンサルタントが関与することで、データに基づいた客観的かつ中立的な分析が可能となり、組織全体にとって最適な、時には痛みを伴う改革案も提示できます。 - 実行力の補完:
戦略を立てるだけでなく、その実行段階までを支援する「ハンズオン」型のアプローチも増えています。プロジェクトマネジメント、業務プロセスの再設計、関係各所との調整など、戦略を絵に描いた餅で終わらせないための実行力を提供し、具体的な成果創出をサポートします。 - 時間とリソースの創出:
課題解決には、情報収集、データ分析、資料作成など、膨大な時間と労力が必要です。これらのタスクをコンサルティング会社に委託することで、自社の社員は本来注力すべきコア業務に集中できます。結果として、企業全体の生産性向上に繋がります。
コンサルティング会社の活用が検討されるのは、主に企業経営における重要な「変革期」です。全社的な経営戦略の見直し、海外市場への進出、大規模な組織再編、基幹システムの刷新、M&Aによる事業統合など、企業の未来を左右するような重要な局面で、その知見と実行力が求められます。
コンサルティング業界の歴史は、20世紀初頭の科学的管理法の登場に遡りますが、特に第二次世界大戦後、経済のグローバル化や技術革新の進展とともに大きく発展しました。現代では、AIやIoT、サステナビリティ(ESG経営)といった新たなテーマが次々と登場し、コンサルティング会社が扱う領域もますます広がりと深みを見せています。
この記事を通じて、まずはコンサルティング会社がどのような存在であり、どのような価値を提供してくれるのかという全体像を掴み、次のセクションで解説する具体的な「種類」への理解を深めていきましょう。
コンサルティング会社の主な種類
コンサルティング会社は、その得意とする領域や提供するサービス内容によって、いくつかの種類に分類されます。自社が抱える課題の性質に応じて、最適なタイプのファームを選ぶことが、プロジェクト成功の第一歩です。ここでは、代表的なコンサルティング会社の種類とその特徴を解説します。
戦略系コンサルティングファーム
戦略系コンサルティングファームは、企業の経営トップが抱える最重要課題(CEOアジェンダ)の解決に特化しています。全社戦略、事業ポートフォリオの見直し、新規事業戦略、M&A戦略、グローバル戦略など、企業全体の方向性を決定づけるテーマを扱います。
特徴:
- 少数精鋭: プロジェクトは比較的少人数のチームで構成され、個々のコンサルタントには極めて高い論理的思考力、仮説構築・検証能力、コミュニケーション能力が求められます。
- トップアプローチ: 主なカウンターパートはCEOや役員クラスであり、経営層との密なディスカッションを通じて意思決定を支援します。
- 高付加価値: 扱うテーマの重要性が高いため、コンサルティングフィーも高額になる傾向があります。
- アウトプット重視: 短期間で質の高い分析と戦略提言を行うことが求められます。
向いている課題:
- 会社の「5年後、10年後の姿」を描く長期ビジョンの策定
- 成熟市場からの脱却を目指す新規事業領域の特定と参入戦略
- 業界再編に対応するためのM&A・アライアンス戦略
- グローバル市場における競争優位性の確立
総合系コンサルティングファーム
総合系コンサルティングファームは、その名の通り、戦略策定から業務改善、ITシステムの導入、組織改革、アウトソーシングまで、企業の経営課題を包括的に支援するファームです。「One-Stop-Shop」として、クライアントのあらゆるニーズに対応できる体制を整えています。世界四大会計事務所(Big4)を母体とするファームや、IT企業から発展したファームが多く含まれます。
特徴:
- 大規模な組織: 数千人から数万人規模のコンサルタントを擁し、多様な専門性を持つ人材が揃っています。
- 幅広いサービスライン: 戦略、オペレーション、テクノロジー、人事、財務など、部門ごとに専門チームを編成しています。
- 実行支援(ハンズオン): 戦略を立てるだけでなく、その戦略を現場に落とし込み、業務プロセスの変革やシステムの導入までを責任を持って実行するプロジェクトが多いのが特徴です。
- グローバルネットワーク: 世界中に拠点を持ち、グローバル規模のプロジェクトに対応できる体制が整っています。
向いている課題:
- 全社的なDX(デジタルトランスフォーメーション)の構想策定から実行
- M&A後の統合プロセス(PMI: Post Merger Integration)の推進
- サプライチェーン全体の最適化とコスト削減
- 大規模な基幹システムの刷新プロジェクト
IT系コンサルティングファーム
IT系コンサルティングファームは、IT戦略の策定やシステムの導入・活用を通じて、クライアントの経営課題解決や競争力強化を支援することに特化しています。総合系ファームのテクノロジー部門と競合することも多いですが、より技術的な専門性に強みを持つファームがこのカテゴリーに分類されます。
特徴:
- 技術的知見: AI、クラウド、IoT、サイバーセキュリティといった最新技術に関する深い知見を持っています。
- システム導入: ERP(統合基幹業務システム)やCRM(顧客関係管理システム)などの導入プロジェクトにおいて、要件定義から設計、開発、導入後の定着化までを支援します。
- 中立性: 特定のベンダーに依存しない中立的な立場で、クライアントに最適なITソリューションを提案するファームもあれば、自社製品(SAPなど)の導入に強みを持つファームもあります。
向いている課題:
- ITグランドデザイン(中長期的なIT投資計画)の策定
- データ活用による新たなビジネスモデルの創出
- 老朽化したレガシーシステムのモダナイゼーション
- 全社的な情報セキュリティ体制の強化
組織人事系コンサルティングファーム
組織人事系コンサルティングファームは、「人」と「組織」に関する経営課題の解決を専門としています。経営戦略を実現するために、どのような組織構造や人事制度が必要かを設計し、その導入と定着を支援します。
特徴:
- 専門領域: 人事戦略、リーダーシップ開発、人材育成、タレントマネジメント、人事評価・報酬制度の設計、組織風土改革、チェンジマネジメントなどを扱います。
- 定性的・定量的アプローチ: 従業員サーベイなどの定量的なデータ分析と、組織心理学や行動科学といった定性的な知見を組み合わせてソリューションを導き出します。
- グローバル標準: 外資系ファームが多く、グローバルで標準化された人事制度の設計や導入に強みを持ちます。
向いている課題:
- 経営ビジョンと連動した新人事制度の構築
- 次世代の経営を担うリーダーの育成プログラム開発
- M&Aや組織再編に伴う組織文化の融合
- 従業員エンゲージメントの向上と離職率の低減
財務アドバイザリーサービス(FAS)系コンサルティングファーム
FAS(Financial Advisory Service)系コンサルティングファームは、M&Aや事業再生、不正調査など、主に財務・会計に関する高度な専門性が求められる領域でアドバイザリーサービスを提供します。多くは会計事務所を母体としており、公認会計士や金融機関出身者が多数在籍しています。
特徴:
- M&A関連サービス: M&A戦略の策定から、取引相手の探索、デューデリジェンス(企業価値評価やリスク調査)、買収価格の算定、契約交渉まで、M&Aのプロセス全体を支援します。
- トランザクションサービス: M&A以外にも、事業再生、企業価値評価(バリュエーション)、PPA(取得原価の配分)、フォレンジック(不正調査)など、専門的なサービスを提供します。
- 高い専門性: 会計、税務、法務に関する深い知識が不可欠であり、非常に専門性の高い領域です。
向いている課題:
- ノンコア事業の売却や、成長事業の買収
- 経営不振に陥った企業の再生計画策定と実行支援
- 社内で発生した不正会計の実態調査と再発防止策の構築
- 新規株式公開(IPO)に向けた資本政策の立案
シンクタンク系コンサルティングファーム
シンクタンク(Think Tank)は、元々「頭脳集団」を意味し、様々な分野の調査・研究を行い、政策提言などを行う組織を指します。証券会社、銀行、大手事業会社などを母体とするシンクタンクが多く、その一部門としてコンサルティングサービスを提供しています。
特徴:
- リサーチ能力: 官公庁向けの調査研究業務を祖業とすることが多く、マクロ経済、産業動向、社会情勢などに関する高いリサーチ能力と情報網が強みです。
- 官公庁プロジェクト: 政府や地方自治体からの委託を受け、社会インフラ、環境・エネルギー、医療・福祉といった公共性の高いテーマに関する調査や政策立案支援を数多く手掛けています。
- 中立的・客観的: 特定の製品やソリューションを持たないため、中立的・客観的な立場からの提言が期待されます。
向いている課題:
- 特定分野における市場の将来動向調査や事業性評価
- 政府の政策動向を踏まえた事業戦略の策定
- PPP/PFI(官民連携事業)への参画検討
- サステナビリティやCSRに関する方針策定
事業再生・ハンズオン支援系コンサルティングファーム
事業再生・ハンズオン支援系コンサルティングファームは、経営不振や資金繰りの悪化に陥った企業の再建を専門としています。単に再生計画を策定するだけでなく、コンサルタントがクライアント企業に常駐あるいは深く関与(ハンズオン)し、現場レベルで改革を主導していくのが大きな特徴です。
特徴:
- 実行力重視: 財務リストラクチャリングはもちろん、事業の選択と集中、コスト削減、営業力強化、業務オペレーションの改善など、泥臭い実行力が求められます。
- 結果へのコミットメント: 企業の存続がかかっているため、短期的に目に見える成果を出すことへのプレッシャーが非常に強いです。
- 経営者視点: コンサルタントがCFO(最高財務責任者)などの役職に就任し、経営の一翼を担うケースもあります。
向いている課題:
- 過剰債務に苦しむ企業の財務改善と金融機関との交渉
- 赤字事業からの撤退と、収益事業へのリソース集中
- 現場の業務プロセスを抜本的に見直し、生産性を向上させたい場合
医療・ヘルスケア系コンサルティングファーム
医療・ヘルスケア系コンサルティングファームは、病院・クリニック、製薬会社、医療機器メーカー、介護事業者など、医療・ヘルスケア分野に特化したサービスを提供します。
特徴:
- 業界特有の知識: 診療報酬制度、薬事法、介護保険制度といった業界特有の複雑な規制や制度に関する深い知識が不可欠です。
- 専門人材: 医師、看護師、薬剤師、MBAホルダーなど、多様なバックグラウンドを持つ専門家が在籍しています。
- 幅広いテーマ: 病院の経営改善、製薬会社の新薬開発・マーケティング戦略、ヘルステック分野の新規事業開発など、扱うテーマは多岐にわたります。
向いている課題:
- 病院の病床稼働率や収益性の改善
- 製薬会社における研究開発パイプラインの評価と戦略策定
- 地域包括ケアシステムの構築支援
- 健康経営の推進や、従業員の健康管理プログラムの導入
国内独立系コンサルティングファーム
国内独立系コンサルティングファームは、外資系コンサルティングファームや事業会社出身者などが日本で独自に設立したファームを指します。特定の創業者の理念や独自の方法論を強みとしていることが多く、外資系や総合系とは一線を画したサービスを提供します。
特徴:
- 独自性: 創業者のバックグラウンドや理念が色濃く反映された、ユニークなコンサルティングスタイルを持つことが多いです。
- 少数精鋭・柔軟性: 比較的小規模な組織が多く、クライアントのニーズに対して柔軟かつスピーディーに対応できる場合があります。
- ハンズオン支援: 大企業の戦略案件から、中堅・ベンチャー企業の経営支援、事業創造まで、幅広いテーマを扱います。
向いている課題:
- 既存の枠にとらわれない、斬新な発想での事業変革
- 経営者と膝詰めで議論しながら、会社の未来を共に創りたい場合
- 大企業だけでなく、中堅・中小企業の経営課題全般
その他専門特化型コンサルティングファーム
上記以外にも、非常にニッチで専門的な領域に特化した「ブティックファーム」が無数に存在します。
例:
- SCM(サプライチェーンマネジメント)特化型: 製造・物流プロセスの最適化に強み。
- リスクマネジメント特化型: 全社的なリスク管理体制の構築や、地政学リスクの分析などを支援。
- サステナビリティ・ESG特化型: 環境・社会課題への対応戦略や、情報開示を支援。
- ブランド戦略特化型: 企業のブランディングやマーケティング戦略に特化。
これらのファームは、特定の課題に対して極めて深い知見と実績を持っており、課題が明確に特定できている場合には、非常に強力なパートナーとなり得ます。
【種類別】コンサルティング会社一覧
ここでは、前章で解説した種類別に、代表的なコンサルティング会社とその特徴を簡潔に紹介します。各社の詳細な情報や最新の動向については、それぞれの公式サイトをご参照ください。
種類 | 主なコンサルティング会社 |
---|---|
戦略系 | マッキンゼー・アンド・カンパニー, ボストン・コンサルティング・グループ (BCG), ベイン・アンド・カンパニー, A.T. カーニー, ローランド・ベルガー, アーサー・ディ・リトル |
総合系 | アクセンチュア, デロイト トーマツ コンサルティング, PwCコンサルティング, EYストラテジー・アンド・コンサルティング, KPMGコンサルティング, アビームコンサルティング, ベイカレント・コンサルティング, IBMコンサルティング事業本部, シグマクシス |
IT系 | フューチャーアーキテクト, ガートナージャパン, SAPジャパン, スカイライトコンサルティング |
組織人事系 | マーサー・ジャパン, ウィリス・タワーズワトソン, コーン・フェリー, リンクアンドモチベーション |
FAS系 | PwCアドバイザリー, デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー, EYトランザクション・アドバイザリー・サービス, KPMG FAS, GCA |
シンクタンク系 | 野村総合研究所, 三菱総合研究所, NTTデータ経営研究所, 大和総研, みずほリサーチ&テクノロジーズ |
国内独立系 | 経営共創基盤, ドリームインキュベータ, コーポレイトディレクション |
戦略系コンサルティングファーム
マッキンゼー・アンド・カンパニー
世界最高峰の戦略コンサルティングファームとして広く認知されています。「One Firm」ポリシーを掲げ、世界中のオフィスが一体となってクライアントに価値を提供します。あらゆる業界のトップ企業や政府機関をクライアントに持ち、極めて高い問題解決能力と分析力で知られています。(参照:マッキンゼー・アンド・カンパニー公式サイト)
ボストン・コンサルティング・グループ (BCG)
「PPM(プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント)」など、数多くの経営コンセプトを創出してきたことで有名です。創造的でオーダーメイドな戦略提言に強みを持ち、クライアントとの協業を重視するカルチャーが特徴です。(参照:ボストン・コンサルティング・グループ公式サイト)
ベイン・アンド・カンパニー
「結果主義」を徹底しており、クライアント企業の株価と連動したフィー体系を導入するなど、具体的な成果へのコミットメントが非常に強いファームです。特にPEファンドとの繋がりが深く、M&Aや企業価値向上に関する案件を数多く手掛けています。(参照:ベイン・アンド・カンパニー公式サイト)
A.T. カーニー
「Tangible Results(目に見える成果)」を標榜し、戦略策定だけでなく、オペレーションやサプライチェーン改革といった実行領域にも強みを持つ戦略ファームです。製造業や消費財業界を中心に豊富な実績があります。(参照:A.T. カーニー公式サイト)
ローランド・ベルガー
ドイツ・ミュンヘン発の欧州系戦略コンサルティングファーム。自動車業界をはじめとする製造業に強固な基盤を持ち、欧州市場に関する深い知見を活かしたコンサルティングを提供しています。(参照:ローランド・ベルガー公式サイト)
アーサー・ディ・リトル
世界で最初に設立されたコンサルティングファームとして知られています。技術経営(MOT: Management of Technology)をコンセプトに掲げ、テクノロジーと経営の融合領域に強みを持ちます。(参照:アーサー・ディ・リトル公式サイト)
総合系コンサルティングファーム
アクセンチュア
世界最大級の総合コンサルティングファームであり、「ストラテジー & コンサルティング」「テクノロジー」「オペレーションズ」「ソング」の4領域でサービスを展開。特にデジタル、クラウド、セキュリティ領域における圧倒的な実行力と規模を誇ります。(参照:アクセンチュア株式会社公式サイト)
デロイト トーマツ コンサルティング (DTC)
Big4の一角、デロイト トーマツ グループに属します。インダストリー(業界)とファンクション(機能)のマトリクス組織が特徴で、幅広い業界の課題に対し、戦略から実行まで一貫したサービスを提供します。(参照:デロイト トーマツ コンサルティング合同会社公式サイト)
PwCコンサルティング
Big4の一角、PwCグローバルネットワークのメンバーファーム。「Strategy through Execution(戦略から実行まで)」を掲げ、クライアントが信頼を構築し、持続的な成長を遂げるための変革を支援します。(参照:PwCコンサルティング合同会社公式サイト)
EYストラテジー・アンド・コンサルティング (EYSC)
Big4の一角、EYのメンバーファーム。「Building a better working world(より良い社会の構築を目指して)」というパーパスの下、企業の長期的価値(Long-term value)の創造を支援することに注力しています。(参照:EYストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社公式サイト)
KPMGコンサルティング
Big4の一角、KPMGのメンバーファーム。「マネジメントコンサルティング」「リスクコンサルティング」「ディールアドバイザリー」の3分野を軸に、ビジネストランスフォーメーションを支援します。(参照:KPMGコンサルティング株式会社公式サイト)
アビームコンサルティング
NECグループから独立した、日本発・アジア発のグローバルコンサルティングファーム。日本の企業文化や商習慣への深い理解を強みとし、特にSAP導入をはじめとするIT関連のコンサルティングで高い実績を誇ります。(参照:アビームコンサルティング株式会社公式サイト)
ベイカレント・コンサルティング
日本発の独立系総合コンサルティングファーム。特定の業界やソリューションに縛られない「ワンプール制」を採用し、多様なバックグラウンドを持つコンサルタントが企業のDXや新規事業創出などを支援します。(参照:株式会社ベイカレント・コンサルティング公式サイト)
IBMコンサルティング事業本部
IBMのビジネスコンサルティング部門。IBMが持つAI「Watson」やクラウドなどの先進技術と、業界知見を融合させ、企業のデジタルトランスフォーメーションを支援します。(参照:日本アイ・ビー・エム株式会社公式サイト)
シグマクシス
三菱商事とRHJインターナショナル(旧リップルウッド)のジョイントベンチャーとして設立。コンサルティングに加え、事業投資や事業運営、アライアンスなども手掛けるユニークなビジネスモデルが特徴です。(参照:株式会社シグマクシス・ホールディングス公式サイト)
IT系コンサルティングファーム
フューチャーアーキテクト
ITを武器とした課題解決を掲げるITコンサルティングファーム。戦略から設計、実装までを一気通貫で手掛け、顧客のビジネスに直接的な価値をもたらすことを重視しています。(参照:フューチャーアーキテクト株式会社公式サイト)
ガートナージャパン
IT分野に特化したリサーチ&アドバイザリー企業。世界中のCIOやITリーダーに対し、客観的なインサイトやツール、ベンダー評価などを提供し、テクノロジー関連の意思決定を支援します。(参照:ガートナージャパン公式サイト)
SAPジャパン
ドイツに本社を置く世界的なソフトウェア企業SAPの日本法人。自社製品であるERPパッケージ「SAP S/4HANA」の導入を中心に、企業の基幹業務プロセスの改革を支援するコンサルティングを提供しています。(参照:SAPジャパン株式会社公式サイト)
スカイライトコンサルティング
「顧客の成功を共に創る」を理念に掲げるIT系コンサルティングファーム。ビジネスとITを繋ぎ、新規事業の立ち上げや業務改革、IT導入プロジェクトのマネジメント(PMO)などを得意としています。(参照:スカイライト コンサルティング株式会社公式サイト)
組織人事系コンサルティングファーム
マーサー・ジャパン
世界最大級の組織・人事マネジメントコンサルティングファーム。人事制度設計、グローバル人事、年金・退職金制度、M&Aにおける人事デューデリジェンスなど、幅広いサービスを提供しています。(参照:マーサー・ジャパン株式会社公式サイト)
ウィリス・タワーズワトソン
組織・人事、福利厚生、リスクマネジメント、保険などの分野でサービスを提供するグローバル企業。データとインサイトに基づいた人事戦略の策定に強みを持ちます。(参照:ウィリス・タワーズワトソン公式サイト)
コーン・フェリー
リーダーシップ開発や人材サーチ(エグゼクティブサーチ)の分野で世界的に高い評価を得ているファーム。人材のアセスメント(評価)や育成に関する独自のメソドロジーを持っています。(参照:コーン・フェリー・ジャパン株式会社公式サイト)
リンクアンドモチベーション
「モチベーションエンジニアリング」という独自の基幹技術を用いて、従業員エンゲージメントを軸とした組織変革を支援する日本企業。組織診断ツールやコンサルティング、研修などを提供しています。(参照:株式会社リンクアンドモチベーション公式サイト)
財務アドバイザリーサービス(FAS)系コンサルティングファーム
PwCアドバイザリー
PwC Japanグループに属し、M&A、事業再生・再編、インフラ関連のPPP/PFIなど、ディール(取引)に関するアドバイザリーを専門としています。(参照:PwCアドバイザリー合同会社公式サイト)
デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー (DTFA)
デロイト トーマツ グループの一員として、M&Aトランザクションやクライシスマネジメント(危機管理)に関する高度な専門サービスを提供します。(参照:デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社公式サイト)
EYトランザクション・アドバイザリー・サービス (EYTAS)
EYのメンバーファームで、現在はEYストラテジー・アンド・コンサルティングに統合されていますが、M&A、事業再生、トランザクションといったFAS領域のサービスを継続して提供しています。(参照:EYストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社公式サイト)
KPMG FAS
KPMGジャパンのメンバーファームとして、M&A、事業再生、不正調査(フォレンジック)などのサービスを提供。企業の価値向上に繋がるあらゆる局面を支援します。(参照:株式会社KPMG FAS公式サイト)
GCA
M&Aアドバイザリーに特化した独立系のブティックファーム。2021年に米国のフーリハン・ローキーに買収され、グローバルなネットワークをさらに強化しています。(参照:フーリハン・ローキー株式会社公式サイト)
シンクタンク系コンサルティングファーム
野村総合研究所 (NRI)
日本最大手のシンクタンク。「コンサルティング」と「ITソリューション」を両輪とし、未来予測や政策提言から、システムの設計・開発・運用までを一貫して手掛けます。(参照:株式会社野村総合研究所公式サイト)
三菱総合研究所 (MRI)
三菱グループを母体とするシンクタンク。官公庁向けの政策研究や、エネルギー、環境、ヘルスケアといった社会課題解決型のコンサルティングに強みを持ちます。(参照:株式会社三菱総合研究所公式サイト)
NTTデータ経営研究所
NTTデータグループのシンクタンク兼コンサルティングファーム。情報社会に関する深い知見を活かし、デジタル戦略や社会システムの構想・設計などを手掛けています。(参照:株式会社NTTデータ経営研究所公式サイト)
大和総研
大和証券グループのシンクタンク。「リサーチ」「コンサルティング」「システム」の3機能を持ち、経済調査や政策提言、企業の経営戦略支援などを行っています。(参照:株式会社大和総研公式サイト)
みずほリサーチ&テクノロジーズ
みずほフィナンシャルグループの中核企業として、リサーチ、コンサルティング、ITの機能を融合。金融分野はもちろん、環境・エネルギー、社会保障など幅広い分野をカバーしています。(参照:みずほリサーチ&テクノロジーズ株式会社公式サイト)
国内独立系コンサルティングファーム
経営共創基盤 (IGPI)
元産業再生機構のメンバーが中心となって設立。「長期的・持続的な企業価値・事業価値の向上」をミッションに掲げ、ハンズオンでの経営支援や事業創造に強みを持ちます。(参照:株式会社経営共創基盤公式サイト)
ドリームインキュベータ (DI)
「社会を変える 事業を創る。」をミッションとし、大企業向けの戦略コンサルティングと、ベンチャー企業への投資・育成を両輪で手掛けるユニークなファームです。(参照:株式会社ドリームインキュベータ公式サイト)
コーポレイトディレクション (CDI)
日本初の独立系戦略コンサルティングファーム。日本企業の現実に即した、実行可能で結果に繋がる戦略の策定を重視しています。(参照:株式会社コーポレイトディレクション公式サイト)
コンサルティング会社 売上高ランキングTOP10
コンサルティング会社の規模や市場での影響力を測る指標の一つとして、売上高が挙げられます。ここでは、公表されている情報や信頼性の高い調査レポートを基に、日本国内におけるコンサルティング業界の売上高ランキングTOP10を紹介します。
(注): 各社の会計年度や事業セグメントの区分が異なるため、このランキングはあくまで目安として捉えてください。特に外資系ファームは日本法人の正確な売上高を公表していない場合が多く、業界レポート等による推定値が含まれます。
① アクセンチュア
世界トップクラスの売上規模と成長率を誇る、業界のリーディングカンパニーです。コンサルティング領域だけでなく、システムインテグレーションやアウトソーシングまで含めた売上高は圧倒的です。特に企業のDX需要を強力に取り込み、クラウド、AI、セキュリティといった成長領域で高いプレゼンスを示しています。グローバル全体での2023年度の売上高は641億ドルに達しており、その規模の大きさがうかがえます。(参照:アクセンチュア 2023年 年次報告書)
② デロイト トーマツ コンサルティング
Big4の中でも最大級の規模を誇ります。デロイト トーマツ グループとして、監査、税務、法務、アドバイザリーといった専門家集団と連携し、企業のあらゆる経営課題にワンストップで対応できる総合力が強みです。グローバルでのデロイトの2023年度の総収入は649億ドルであり、その中核をコンサルティングおよびアドバイザリー事業が担っています。(参照:デロイト 2023 グローバル年次報告書)
③ PwCコンサルティング
PwCもまた、Big4の一角として世界的なネットワークとブランド力を有します。PwC Japanグループとして、監査法人や税理士法人と緊密に連携。M&Aなどのディール関連や、サイバーセキュリティ、サステナビリティといった領域で強みを発揮しています。グローバルでのPwCの2023年度の総収入は531億ドルを記録しています。(参照:PwC Global Annual Review 2023)
④ 野村総合研究所
日系ファームとしてはトップの売上規模を誇ります。主力事業は「コンサルティングサービス」と「ITソリューションサービス」であり、両者を組み合わせたユニークなビジネスモデルを構築しています。金融業界向けのITソリューションに強固な基盤を持つ一方、非金融分野への展開も積極的に進めています。2024年3月期の連結売上高は7,307億円に達しています。(参照:株式会社野村総合研究所 2024年3月期 決算短信)
⑤ アビームコンサルティング
日本発・アジア発のグローバルコンサルティングファームとして、独自の地位を築いています。特にSAPをはじめとするERP導入コンサルティングでは国内トップクラスの実績を誇り、製造業を中心に多くのクライアントを抱えています。日本の企業文化への深い理解をベースにした、きめ細やかなサービスが評価されています。2024年3月期の売上収益は1,348億円でした。(参照:アビームコンサルティング株式会社 会社情報)
⑥ EYストラテジー・アンド・コンサルティング
Big4の一角、EYのコンサルティング部門です。「Building a better working world(より良い社会の構築)」というパーパスの下、企業の長期的価値創造を支援。特に、戦略、テクノロジー、人事、サプライチェーンなどの領域でサービスを強化しています。グローバルでのEYの2023年度の総収入は494億ドルでした。(参照:EY reports global revenue of US$49.4 billion)
⑦ KPMGコンサルティング
Big4のKPMGも、コンサルティング事業を急速に拡大させています。強みであるリスクコンサルティングに加え、近年は経営戦略やDX、M&A関連のサービスを強化し、総合ファームとしての体制を固めています。グローバルでのKPMGの2023年度の総収入は364億ドルとなっています。(参照:KPMG reports global revenues of $36 billion for FY23)
⑧ 三菱総合研究所
日本を代表するシンクタンクの一つ。官公庁向けの調査研究で培った知見を活かし、民間企業に対しても質の高いコンサルティングを提供しています。エネルギー、環境、ヘルスケア、社会インフラといった公共性の高い分野に強みを持っています。2023年9月期の連結売上高は1,192億円です。(参照:株式会社三菱総合研究所 2023年9月期 決算短信)
⑨ ベイカレント・コンサルティング
独立系ファームとして急成長を遂げている企業です。特定のインダストリーやソリューションに偏らない「ワンプール制」が特徴で、DX戦略の策定から実行支援までを一気通貫で手掛ける能力が高く評価されています。2024年2月期の売上高は1,123億円と、高い成長を継続しています。(参照:株式会社ベイカレント・コンサルティング 2024年2月期 決算短信)
⑩ NTTデータ経営研究所
NTTデータグループのコンサルティング部門としての役割を担います。情報通信技術(ICT)に関する深い知見をベースに、企業のIT戦略立案や新規事業開発、官公庁の政策立案などを支援しています。2023年3月期の売上高は231億円です。(参照:株式会社NTTデータ経営研究所 決算公告)
このランキングからは、「Big4+アクセンチュア」という外資系総合ファームの圧倒的な存在感と、それに続く日系の有力ファーム(NRI、アビームなど)の健闘という構図が見て取れます。また、DX需要の拡大を背景に、ITに強みを持つファームが総じて高い成長を遂げていることも、近年の業界トレンドを象徴しています。
コンサルティング会社の選び方
数多くのコンサルティング会社の中から、自社に最適な一社を選ぶことは、プロジェクトの成否を左右する極めて重要なプロセスです。ここでは、コンサルティング会社を選ぶ際に考慮すべき4つの視点を解説します。
解決したい課題や目的で選ぶ
最も重要なのは、自社が「何に困っていて」「何を目指したいのか」という課題と目的を明確にすることです。この出発点が曖昧なままでは、どのファームが適切かを判断できません。
まず、自社の課題がどのレイヤーにあるのかを整理しましょう。
- 経営戦略レベルの課題: 「会社の将来の方向性を決めたい」「どの事業に投資すべきか判断したい」といった全社的な課題であれば、戦略系コンサルティングファームが候補となります。彼らは経営トップの視点に立ち、大局的な分析と提言を得意としています。
- 事業・業務レベルの課題: 「特定の事業の収益性を改善したい」「サプライチェーンの効率を上げたい」「DXを推進したい」といった具体的な課題であれば、総合系コンサルティングファームや、それぞれの専門領域に特化したファーム(IT系、組織人事系など)が適しています。彼らは戦略を実行可能なレベルに落とし込み、現場を巻き込みながら変革を進めるノウハウを持っています。
- 専門的な取引・調査: 「M&Aを実行したい」「不正会計の調査が必要」といった特殊な課題であれば、FAS系コンサルティングファームのような高度な専門知識を持つファームが不可欠です。
このように、自社の課題の性質と、各ファームの得意領域を的確にマッチングさせることが、選び方の第一歩です。
得意な業界や業種で選ぶ
同じ「営業改革」というテーマでも、製造業と金融業、小売業では、そのアプローチや成功の鍵は全く異なります。業界特有のビジネスモデル、商習慣、法規制、競争環境などを深く理解していなければ、実効性のある提案はできません。
そのため、コンサルティング会社が自社の属する業界(インダストリー)で豊富な実績を持っているかを確認することは非常に重要です。
見極め方:
- 公式サイトの実績を確認: 多くのファームは公式サイトで「インダストリー別サービス」として、得意とする業界や過去のプロジェクト事例(具体的な企業名は伏せられていることが多い)を紹介しています。
- 担当コンサルタントの経歴: 提案の際にアサインされる予定のコンサルタントが、同業界のプロジェクト経験者であるかを確認しましょう。
- 専門チームの有無: 大手のファームでは、業界別に専門チームを編成しています。そうした体制があるかどうかも、その業界へのコミットメントを測る指標になります。
自社のビジネスをゼロから説明しなくても、「業界の常識」を共有できるパートナーを選ぶことで、議論はよりスムーズかつ深くなります。
会社の規模で選ぶ
コンサルティング会社の規模も、選択における重要な要素です。それぞれにメリット・デメリットがあります。
大手ファームのメリット | 大手ファームのデメリット | |
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特徴 | ・豊富なリソースと人材 ・グローバルネットワーク ・確立されたメソドロジー ・高いブランド力と信頼性 |
・コンサルティングフィーが高額になる傾向 ・意思決定プロセスが複雑な場合がある ・若手コンサルタントが担当になる可能性 |
向いているプロジェクト | ・グローバル規模のプロジェクト ・複数の専門領域が絡む複雑なプロジェクト ・大規模なシステム導入 |
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中小・ブティックファームのメリット | 中小・ブティックファームのデメリット | |
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特徴 | ・特定領域での非常に高い専門性 ・柔軟でスピーディーな対応 ・シニアクラスのコンサルタントが直接担当 ・比較的コストを抑えられる場合がある |
・対応できる領域や規模が限定的 ・グローバル対応が難しい場合がある ・リソースが限られる |
向いているプロジェクト | ・課題が明確に特定されている専門的なプロジェクト ・スピード感が求められるプロジェクト ・経営者と密なコミュニケーションを求める場合 |
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自社のプロジェクトの規模、予算、そして求める専門性の深さを天秤にかけ、大手とブティックのどちらがよりフィットするかを検討しましょう。
会社のカルチャーや担当者との相性で選ぶ
コンサルティングプロジェクトは、単なる業務委託ではなく、クライアントとコンサルタントが一体となって進める「共同作業」です。そのため、論理的な正しさだけでなく、人間的な相性や信頼関係が最終的な成果を大きく左右します。
- ファームのカルチャー: ファームにはそれぞれ独自のカルチャーがあります。例えば、徹底的にデータとロジックを重視するファーム、クライアントとの協調性を重んじるファーム、創造性や発想力を大切にするファームなど様々です。自社の企業文化と大きくかけ離れていると、コミュニケーションに齟齬が生じやすくなります。
- 担当コンサルタントとの相性: 最終的にプロジェクトを動かすのは、会社という組織ではなく、目の前にいる「個人」です。提案内容が優れていることはもちろんですが、担当者との面談を通じて、以下の点を見極めることが重要です。
- こちらの話を真摯に聞き、意図を正確に理解してくれるか。
- 専門用語を振りかざすのではなく、分かりやすい言葉で説明してくれるか。
- プロジェクトに対する熱意や当事者意識を感じられるか。
- 率直な意見交換ができる関係性を築けそうか。
複数のファームから提案を受ける際には、提案書の内容だけでなく、プレゼンテーションや質疑応答の場で「この人たちと一緒に仕事がしたいか」という視点を持つことを忘れないでください。
コンサルティング会社に依頼するメリット・デメリット
コンサルティング会社の活用は、企業にとって多くのメリットをもたらす可能性がある一方で、注意すべきデメリットも存在します。両者を正しく理解し、費用対効果を最大化するための準備をすることが重要です。
3つのメリット
① 専門知識やノウハウを活用できる
コンサルティング会社に依頼する最大のメリットは、自社に不足している高度な専門知識や豊富な経験、客観的な知見を迅速に獲得できる点にあります。
例えば、DXを推進したいと考えても、社内にAIやデータサイエンスの専門家がいなければ、何から手をつければ良いか分かりません。また、海外市場への進出を計画しても、現地の法規制や商習慣に関する知見がなければ、大きなリスクを伴います。
コンサルティング会社は、多様な業界で類似の課題を解決してきた経験から、成功の定石や陥りがちな失敗パターンを熟知しています。また、独自の調査やグローバルネットワークを通じて、最新の市場動向やテクノロジーに関する情報を常にアップデートしています。これらの無形の資産を活用することで、企業は手探りで進む時間を大幅に短縮し、より確度の高い意思決定を下すことが可能になります。
② 客観的な視点で分析・提案してもらえる
企業内部では、長年の慣習や成功体験が、時として変革の足かせになることがあります。また、部門間の力関係や個人の感情が絡み合い、合理的な判断が下しにくい状況も少なくありません。
ここに第三者であるコンサルタントが入ることで、社内の「常識」や「しがらみ」にとらわれない、完全に客観的な視点からの分析が期待できます。コンサルタントは、データや事実に基づいて現状を冷静に評価し、時には耳の痛い指摘も行います。
「なぜこの業務プロセスは必要なのか」「本当にこの事業は将来性があるのか」といった根本的な問いを投げかけることで、組織の課題の本質を浮き彫りにします。そして、内部の人間では言い出しにくいような大胆な改革案や、既成概念を打ち破る新たな選択肢を提示してくれることも、大きなメリットと言えるでしょう。
③ 社員の負担を軽減しコア業務に集中できる
経営課題の解決には、膨大な量の情報収集、データ分析、資料作成、関係者との調整といった付帯業務が発生します。これらを自社の社員だけで行おうとすると、本来の業務が圧迫され、組織全体の生産性が低下しかねません。
コンサルティング会社にプロジェクトを依頼することで、これらの分析や資料作成といった専門的かつ労働集約的なタスクをアウトソースできます。これにより、自社の社員は、顧客対応や製品開発、日々のオペレーションといった、自社の競争力の源泉であるコア業務に集中できます。
これは単なる「作業の肩代わり」ではありません。コンサルタントが作成する質の高い分析レポートや戦略資料は、社内の議論を活性化させ、意思決定のスピードを速める触媒としても機能します。限られた経営リソースを最も価値の高い活動に集中させるという意味で、コンサルティングの活用は有効な手段です。
2つのデメリット
① 依頼コストが高額になる
コンサルティングサービスの利用には、高額な費用(コンサルティングフィー)が発生することが最大のデメリットであり、導入をためらう最も大きな理由でしょう。
フィーは、プロジェクトの期間、投入されるコンサルタントの人数と役職(パートナー、マネージャー、コンサルタントなど)、ファームのブランド力などによって大きく変動します。一般的に、戦略系ファームのトップクラスのコンサルタントであれば、月額数百万円以上のフィーが発生することも珍しくありません。
そのため、依頼する側は「支払うコストに見合うだけの価値(リターン)が得られるのか」を常に厳しく評価する必要があります。プロジェクトの目的と期待される成果を明確にし、費用対効果(ROI)を慎重に見極めなければなりません。安易な依頼は、大きな金銭的負担だけが残る結果になりかねません。
② 社内にノウハウが蓄積されにくい
コンサルタントにプロジェクトを「丸投げ」してしまうと、もう一つの大きなデメリットが生じます。それは、プロジェクトが終了した途端、改革が停滞し、社内に知見やスキルが残らないという問題です。
優秀なコンサルタントが素晴らしい戦略を策定しても、それを実行し、継続的に改善していくのはクライアント企業の社員自身です。コンサルタントが去った後に「どうすればいいか分からない」という状態では、高額な費用を払った意味がありません。
この問題を避けるためには、クライアント企業側が主体的にプロジェクトに関与する姿勢が不可欠です。自社の社員をプロジェクトチームのメンバーとして参加させ、コンサルタントの分析手法や問題解決のプロセスを間近で学び、積極的に知識を吸収する(ナレッジトランスファー)ことが重要です。コンサルタントを「答えをくれる先生」ではなく、「一緒に課題を解決するパートナー」と位置づけ、ノウハウを自社の資産として定着させる努力が求められます。
コンサルティング会社に依頼する際の注意点
コンサルティング会社への依頼を成功させ、投資効果を最大化するためには、事前の準備と依頼後の関わり方が極めて重要です。ここでは、特に注意すべき3つのポイントを解説します。
依頼する目的やゴールを明確にする
コンサルティングプロジェクトの成否は、依頼前の段階で8割決まると言っても過言ではありません。その核心となるのが、「目的とゴールの明確化」です。
なぜコンサルタントの力が必要なのか、このプロジェクトを通じて何を達成したいのか。これが曖昧なまま「何か良い提案をしてほしい」といった漠然とした依頼をしてしまうと、コンサルティング会社も的確な提案ができず、プロジェクトは的外れな方向に進んでしまいます。
依頼前には、必ず社内で徹底的に議論し、「何を(What)」「なぜ(Why)」「どのように(How)」「いつまでに(When)」「どのレベルまで(How much)」を具体的に言語化しましょう。例えば、以下のように目標を設定することが考えられます。
- 悪い例: 「売上を上げたい」
- 良い例: 「主力製品Aについて、新規顧客層である20代女性へのアプローチ戦略を構築し、半年後までにテストマーケティングを開始できる状態にする。その結果、来期の売上を前年比10%増加させることを目指す」
このように、具体的(Specific)、測定可能(Measurable)、達成可能(Achievable)、関連性がある(Relevant)、期限が明確(Time-bound)な「SMART」なゴールを設定することで、コンサルティング会社との間で認識のズレがなくなり、プロジェクトの進行管理も容易になります。
複数の会社を比較検討する
1社だけに声をかけて、その提案内容だけで決めてしまうのは避けるべきです。必ず複数のコンサルティング会社(少なくとも3社程度)に声をかけ、提案を比較検討する「コンペティション(コンペ)」を実施しましょう。
その際、各社に公平な条件で提案してもらうために、RFP(Request for Proposal:提案依頼書)を作成することが有効です。RFPには、前項で明確にしたプロジェクトの背景、目的、ゴール、期待する成果物、予算、スケジュールなどを記載します。
各社からの提案を比較する際には、以下のポイントを総合的に評価します。
- 提案内容の質: 課題の本質を的確に捉えているか。提案に独自性や深い洞察はあるか。
- 実現可能性: 絵に描いた餅ではなく、自社の実情に合った実行可能なプランになっているか。
- チーム体制: どのような経験やスキルを持つコンサルタントがアサインされるのか。
- 費用対効果: 提示された見積もりは、提案内容に見合った妥当なものか。
- 過去の実績: 同業界・同テーマでの実績は十分か。
コンペを通じて、各社の強みやアプローチの違いが明確になり、自社にとって最適なパートナーを見極めることができます。
担当者との相性を確認する
最終的に契約書を交わすのは会社同士ですが、実際にプロジェクトを推進するのは「人」です。どんなにファームの評判が良く、提案書が素晴らしくても、現場で協働する担当コンサルタントとの相性が悪ければ、プロジェクトは円滑に進みません。
提案のプレゼンテーションや質疑応答の場は、担当者の能力や人柄を見極める絶好の機会です。
- コミュニケーション能力: 難解な専門用語を避け、こちらの意図を汲み取りながら分かりやすく話してくれるか。
- コミットメント: プロジェクトに対する熱意や当事者意識が感じられるか。「評論家」ではなく「パートナー」としての姿勢があるか。
- 信頼感: この人になら、自社の機密情報や内部の課題を安心して打ち明けられるか。
プロジェクト期間中は、毎週のように顔を合わせ、時には激しい議論を交わすことになります。ストレスなく、建設的なコミュニケーションが取れる相手かどうかを、契約前にしっかりと見極めることが、プロジェクトの成功確率を大きく高めます。また、プロジェクト開始後のコミュニケーションルール(定例会議の頻度、報告形式、意思決定プロセスなど)を事前にすり合わせておくことも、後のトラブルを防ぐ上で非常に重要です。
まとめ
本記事では、コンサルティング会社の基本的な役割から、戦略系、総合系、IT系、FAS系といった多岐にわたる種類、そして具体的な企業の選び方や依頼する際の注意点まで、幅広く解説してきました。
コンサルティング会社は、専門知識や客観的な視点、そして実行力を提供することで、企業が自力だけでは乗り越えられない壁を突破し、成長を加速させるための強力な触媒となり得ます。グローバル化やデジタル化の波が押し寄せ、ビジネスの不確実性が増す現代において、その価値はますます高まっています。
しかし、その力を最大限に引き出すためには、依頼する企業側の姿勢が何よりも重要です。自社が直面している課題の本質を深く見つめ、プロジェクトの目的とゴールを明確に定めること。そして、数あるファームの中から自社の課題やカルチャーに最もフィットする一社を慎重に選び抜き、プロジェクトが始まった後は「丸投げ」にせず、主体的に関与してノウハウを吸収し尽くすこと。この一連のプロセスを徹底することが、コンサルティング活用の成功の鍵を握ります。
この記事で紹介したコンサルティング会社の種類、選び方、メリット・デメリット、注意点などの情報が、皆様にとって最適なパートナーを見つけ、ビジネスを新たなステージへと導くための一助となれば幸いです。